第五十三話
4
「おはよー」
「おはー!」
「いえええぇぇぇい!!」
学校に着いて教室に入るといつもの教室であった。とりあえず記憶にないクラスメイトとかはいない。あと、男子は何に嵌まったのかすごく叫んでる。喉壊すからほどほどにね。
「おはようございます」
「皆おはよう」
「「「おはようございます」」」
「おっすー!」
女子からの反応が悪化したー!ここは漫画の中のお嬢様校か!?
クラスのほとんどの女子に揃って返事を返されてこの先の学校生活に恐怖する。このまま行くと私か麗子ちゃんとどっちかが学級委員になってしま・・・麗子ちゃんが他の人と触れあうならその方がいいか。もしくは二人で保険委員辺りに収まりたい。
「いつもこんな挨拶だったっけ?」
「私はいつも早く来るから分からないわ。」
「そっか・・・。ん?」
麗子ちゃんが常識改変する前の記憶を持っていることを確認したあと、自分の席であるはずの場所に違う子が座ってるのを見つけた。荷物だけ置かせて貰おうかなと思ったら机に付いてる名札からして違う。
常識改変によって、私は麗子ちゃんと一緒にいるのが普通となっている。つまり・・・やっぱり。
「私の席が変わってるのね・・・」
「・・・そう?最初からそうでしょ?」
「うん、そうだったね。」
名前順などを無視して麗子ちゃんの隣にくっつけられた私の席に着く。あ、そういえば今日は姫ちゃんと登校できなかった。まだ来ていないんだろうか?
「あ、いた!姫ちゃーん。おはよう」
「お、おはよう。ひめ、少しおトイレ・・・」
「え?」
私に話し掛けられた姫ちゃんは、私に返事をした後に気まずそうに教室を出ていった。・・・これも改変の影響かな。あと、一人称が「わたし」ではなく「姫」か。このクラスで一番変わったのは姫ちゃんかな。
姫ちゃんの変化を見た私は再三決意を固めた。今日の学校の後、屋敷にあるであろう魔本を浄化し、ここ最近遊べなかった姫ちゃんと麗子ちゃんとキャッチボールをしよう。
「皆さんおはようございまーす!」
『おはよーございまーす!!』
では、暇な暇な授業の時間だ。
「ここで、兎さんは亀さんに勝負を挑んでますが━━」
国語の授業中。教科書に書いてある作品はこの世界の変な童話の文字部分だけを抜き出したものだ。レベルとしては国語の問題なのか道徳の問題なのかと思うところはあるが、これくらいの方が子供も話を聞きやすいんだろうな。暇なのには変わりないけど。
「暇ね」
「麗子ちゃんも?」
「ええ。これくらいのお話は4歳の時に習ったから」
「すごいね。麗子ちゃんはそんな頃からお勉強してたんだね。」
「え、楓ちゃんはしてなかったの?」
「私は・・・」
私が4歳の時には・・・宝くじ当てて、本読んで、遊んで、寝て、隠れて本読んで・・・普通の子供だな!
「私は、絵本読んだり桜達と遊んだり、隠れて本読んだりしてた。」
「隠れて・・・?」
「パパの本だったから」
パパの本は、18歳本は無いが12歳15歳本(に値するもの)くらいなら書棚にあった。だからパパの本を読みたいときはパパかママに頼んで適当なものを取ってもらう約束なのだが、読む本が少なくなってきてからは約束を破って普通に読んでた。
「へぇ・・・。だからこの前の本も読めたのね」
「この前?えっと、女性論とやらだっけ?」
「あの本、佐々木が楓ちゃんなら読めるだろうからって渡してくれたのよ。私はよくわからなかったわ」
「え。」
あの執事長、私を試していたってこと?それとももう見抜かれてる?・・・あの父親から娘を任されているなら普通と言えば普通か。
「あの二人とも。」
「「はい?」」
「もうちょっと授業に集中してね?」
「わかりました」
「はい・・・」
先生に注意されてしまったので話すのをやめて黒板を見る。黒板見ただけだと良く分かんなかったので教科書を読んだ。
小学校の授業は全ての教科を一人の先生が教える。だからこの後の社会やら生活でもあんまり喋られない。まぁいつも通り聞くだけ聞いて手遊びでもしようかなと思ったら麗子ちゃんが手を重ねて来た。
何かなと思って隣を見てみると、麗子ちゃんは少しだけ満足そうな顔をしていた。あと数年したら男子が前のめりになって女子が噂しそう。そして授業の間はほぼずっと手を重ねたまま板書したりして無事終わった。私右利きだからわざわざ左手を麗子ちゃんに差し出して機嫌を取っている現状を見れば、私も立派な百合系なのか・・・?
『いただきます!』
「カレー美味しいね」
「これがカレーなの?」
「あれ、麗子ちゃんカレー食べたことないの?」
給食の時間になって机を動かしたが、まさかの私と麗子ちゃんの二人組班。もはや先生ぐるみのイジメに見えてくる。麗子ちゃんが不満じゃないから良いけどさ。
「昔一度だけ食べたことあるけれど、ご飯じゃなかったわ。」
「あ、じゃあ小麦粉の方だったんだね。それならカリーって呼ぶべきなのかな?」
「何か違うの?」
「分かんない」
スパイスの数だとか、どちらの国民向けの味かで変わるとか聞いたことあるけどどっちでもいいから詳しくは知らない。
「・・・美味しいわね」
「カレーは最強の料理だからね。」
「そうなの?」
「一部には、カレー粉があればサバイバルが快適になるとか言ってる人もいるとかいないとか。」
「へぇ・・・。今度シェフに頼んでみましょう」
「麗子ちゃんの家の料理は超一級だからこのカレーとどれだけ違うか楽しみだね」
カレーは少しおかわりした。
さて、これで給食が終わった。この後は帰りの会をやって帰宅となる。麗子ちゃんの家に行って魔本を見つけてからが仕事になるだろうな。