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蒐集癖な彼・女  作者: 知り合い
第1章・小学生
53/69

第五十話

4

おやつに出たのはごく普通のショートケーキであった。まあもちろん味は超一級品だけど。このケーキを市販で買おうと思ったらいくらかかるんでしょうね。

そのあと、甘くない紅茶で口を整えている時に気になっている事を聞いてみた。


「麗子ちゃん」

「なに?」

「今日は何をして遊ぶの?」

「そうね。読書・・・は前回やったし、他に・・・」

「他に?」

「・・・無い・・・。」

「よろしければ外で運動はいかがですか?陽も弱くなってくる時間帯になると思うので運動するにはちょうど良いと思いますが。」

「それにしましょう。何が出来るかしら?」

「一通りの器具は揃っています。お薦めとしましてはバドミントンなどは軽く楽しめるかと。」

「ではそれにしましょう。楓ちゃんもそれでいい?」

「うん。いいよ。」


やっぱり麗子ちゃんはあまり友達と遊ぶという事を知らないのか。それもこれから色んな友達を作ることで色んな遊びを知っていくべきかな。・・・ゲームとかに嵌まらせていいかは後で検討しよう。お金がある分下手したら神になる可能性があるし。

メイドさんに案内されて、屋敷の裏側に用意されている芝生ゾーンに来た。ここなんのために存在しているのだろうか?


「この芝生って何であるの・・・?」

「真の豊かさとは自然と共存することだという先々代の意向によって設置されてから除去する必要性が無いという理由でそのままになっているそうです。」

「流石世界トップクラスのお金持ち・・・!」

「さて、お嬢様と楓様。バドミントンというスポーツはご存じですか?」

「知らないわ」

「一応知ってます。やったことはないですけど」

「では僭越ながら私がご説明致します。ただ、細かいルールは試合の時でも無ければ使いませんので簡単に。やることはただ一つ、この羽と呼ばれる球をこのラケットを用いて打ち続けるのみでございます。」

「それだけ?そんなことが面白いの?」

「この球の形状を見れば予想できるでしょうが形が特殊です。なので、想像と違う放物線を描いたり、打つ力が足りなかったりすることがあるのです。そしてこのルールですと、自然と落とした側が負けということになりますので、白熱するかと。」

「勝ち負け・・・。そうですわね。東条院家の者として簡単に負けることは許されませんものね。」

「では、軽く練習をしてみましょうか。」


私はやった経験があるにはあるけど最後にやったのが体感年数で約十数年前だってことと体が違うから実質初見と言っても構わないだろう。

麗子ちゃんも初見だから、かなりぐだくだになるかと思われる。ラリー続かないとあまり面白くなかった記憶があるんだよねー。


「ふん!ふん!意外と振りづらいわね」

「日常生活ではあまりしない動きですから。」

「ほっ!うーん」

「どうかされましたか?非常に綺麗なフォームだと思いますが。」

「いえ、実際にやるとやっぱり違うなーって。」


なんだか凄く違和感がする。・・・体格かなぁ?少し短めとはいえ、私の腕よりは長いラケットだし。ある程度力込めてきっちり振らないと届かなさそうだな。


「それでは一度ラリーをやってみましょう。お嬢様方はまだお体が小さいので、しっかりと振り切らないと届かないかも知れません。」

「・・・これはどうやって始めるの?」

「・・・失礼しました。説明を忘れてました」


メイドさんから、上に投げて打つか下に構えて打つかの二択を選んで打ち始めるという説明がされた。その中で、どっちの方が打ちやすいかは人によるから自分で決めるべきとも言っていた。


「じゃあ下からやってみるわ。ふっ!・・・」


綺麗に空振りをした。本人は空振りした事を少し恥ずかしそうにしていたが気を取り直して今度は上に上げて打つようだ。


「こ、今度こそ!えい!」

「お上手でございます」


今度はしっかりとラケットの真ん中に当たった羽は、こちら側にぽーんと飛んで来た。ラリーが続くように・・・えい!


「あ!」

「お気になさらず!良くあることでございます!」


私が打った羽は当たりどころがフレーム部分だったようでカツンと言って直ぐに落ちた。ぐぬぬ、分かっていてもやはり少し恥ずかしい!


「今度は私から!ふっ、やぁ!」

「良い球です、しっかり見極めて振ってください!」

「こ、ここ!」

「流石です!」

「はぁっ!」

「やぁっ!」


お互いに一回ずつミスしてからはちょっとコツを掴んだようで、羽とラケットの距離感を間違えずに振ってラリーを続けることができた。ただ、やはり一回一回打つのにプロにも負けないくらい体全体を使っているので、お互いにどんどん疲れていって、最後には二人ともへとへとになって自然と終わる・・・はずだった。


「ま、だ!」

「えぃっ!」

「負け、ません!」


麗子ちゃんがめっちゃ負けず嫌いなのだ。そして私もなんか負けたくないのだ。ただ、少し体の限界を超えそうな段階になりそうだったので、私はラケットを放して倒れた。倒れた私の額に羽が当たる。


「ぃ、て、」

「か、勝ちま、した・・・わ」

「お嬢様!すぐに酸素缶と補給液とタオルをお二人に!」

「「「はっ!」」」


どうやら麗子ちゃんも自重を支えることが出来ず倒れたようだ。私たちが本気でラリーしてる間に割り込めなかったメイドさん達が大急ぎで私をバスタオルで包み、口元に酸素缶を持ってくる。

あぁ、ちょっと、呼吸が楽・・・。


「楓様失礼します。」

「御風呂の準備が出来ました。」

「御風呂の前に少し体を冷やさねばなりません。幸い熱中症は無いようなので、着替え場に行き寝かしながら、仰いで補給液を飲んで頂きます。」

「かしこまりました。」


メイドさん達の迅速な対応のおかげもあって私はすぐに体調が元に戻った。ただ、芝生に倒れたのもあって背中に少し葉っぱが付いているし、汗も凄くて全身べったべたである。このままお風呂に入りたい。


「楓様、体調戻りました。」

「お嬢様もほとんど戻ったようです。ただ、まだ少し体温が高いようなのでもう少し下げてから湯浴みにしましょう。」

「わかりました。」


麗子ちゃんも無事で良かった。流石に、バドミントンした結果体調不良になったからこの先バドミントン禁止とか馬鹿すぎる。

さて、私自身は私の事を引き際を知ってる大人~とか思ってたけどそうでもないことが判明した。やっぱり勝ちたいという欲望をコントロールするには前世の時間が短かったようだ。


「しかし、楓様もお嬢様も凄いですね。6歳であれだけ出来るのでしたら、かなりの運動センスをお持ちなのでしょう」

「あれは私も麗子ちゃんもただ負けたくないからっていえ気持ちで続いただけだと思います・・・」

「スポーツというのはそういうものでございます。そして、勝つ者はその心で負けずに押しきった者なのです。ですからご自分の限界に近いところまで力を出しきったお二方は凄い才能をお持ちなのだと思います。」

「・・・ありがとうございます。」


・・・面と向かって言われるとちょっと恥ずかしい。そしてそんな私の反応を見たメイドさんがクスッと笑ったことで尚恥ずかしい。


「お嬢様の準備が整いました。これからお風呂に入ります。」

「わかりました。楓様。お嬢様の体調が戻ったようなので、お風呂に参りましょう」

「あの、私着替えとかなくて・・・」

「ご安心下さい。お風呂から出る頃には洗濯が終わっていますから。」


あ、そうですか。では失礼しまーす。

まさかお風呂まで入ることになるとは思っていなかったよ。でもせっかくだし、どんなお風呂か拝見しようじゃないか!


やっと50になりました。負債は4つ抱えております。

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