第四十八話
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「・・・ぅん・・・ん・・・?」
ぁれ、私、何で寝てい・・・?あぁ、そうだ。麗子ちゃんの家に行く間に眠くなって眠ったんだった。
目を覚ました私は柔らかくて良い匂いのベッドから起き上がろうとしたら何かによって体を固められている事に気づいた。
「ぇ、」
「あぁ、楓・・・。暖かい、気持ちいい、はぁ・・・!」
「えっと、麗子ちゃん?」
「あら、起きたのね楓ちゃん。」
普通に挨拶してないで退いてください。
私は寝ている間に麗子ちゃんの抱き枕になっていたようだ。ただ、当の麗子ちゃんは私を抱きながらこの胸元に顔を埋めて頬擦りしたりしてる。まさかただの変態みたいなヤベー奴に成り下がるとは。
私がそんなことを思っているとベッド脇に置いてあった鈴を鳴らした。
「いかがなさいましたか。」
「楓ちゃんが起きたわ。準備を」
「かしこまりました。」
メイドさんが入ってきて麗子ちゃんが一言だけ告げると、すぐに出ていった。
「とりあえず起きない?」
「もう少しこのままでいたいの。少しでも楓ちゃんの温もりが欲しいから・・・。」
「いやいや、温もりならさっきのメイドさんやお父さんお母さんから貰えるでしょ!」
「・・・貰えないわ。」
「え?」
「楓ちゃんに言ってなかったわね」
なんだかいきなり麗子ちゃんの顔に大きな影が付いたような気がした。
「私は入学式が終わってから一度もお父様とお母様に会っていないの。」
「え、なんで・・・?」
「それが東条院家の決まりだからよ。小学校に入学したら卒業するまでこの別宅で暮らさなきゃいけないの。私が次に会えるのは成績表を見せるときだけ・・・。」
「そんなルールが・・・。」
いくら決まりだからと言って麗子ちゃんくらいの小さい子が親から離されて生きなきゃいけないなんて・・・。
「でも、メイドさんとかなら多少甘えても・・・」
「ダメよ。私は、使用人たちを信頼することはあっても、甘えてはならないの。それが、人の上に立つものだってお父様がおっしゃっていたわ。だから私は甘えないの。」
「それは・・・」
それは人として歪む要因になるのではないか?幼少期のトラウマなど、悪い影響っていうのは基本的に精神病の元になりやすい。いったい何を考えているんだこの家は。
「寂しくないの?」
「すごく寂しいわ。でも、そうならないために友人を作れと言われたの。そしてあなたという友人を作れたわ。だから楓ちゃんがいれば寂しくないのよ」
これは・・・ちょっとした依存になってるな?私何もしてないのに。解消させた方がいいんだろう・・・けど、両親と別れて1週間ちょっとでここまで温もりを求めるようになったのを考えると私が離れた結果性根が歪む可能性が高いし・・・。とりあえず友達という名目で依存の範囲を限定すればどうにかなるか?
「お嬢様、お持ちしました。」
「!!入って!」
私がまた悩んでいると、麗子ちゃんの許可を得たメイドさんが、いやメイドさん達が入ってきた。衣装を持って。
ここで麗子ちゃんのファッションショーでもするの?
「楓ちゃん、どうかしら?」
「え?えっと、きっと似合う、よ?」
「これを着るのは私じゃないわよ?」
「じゃあ誰、まさか」
「そう!これは楓ちゃんのためのものよ!」
まさかの私のために(たぶん)作らせた物だった!誕生日なんて遥か先だし、何なら言ってないんだけど何で私に服なんかを!?
「私の誕生日会に楓ちゃんにも来て欲しいの」
「えっと、それとこれにどんな繋がりが?」
「佐々木が、今のままだとドレスコードの問題で楓ちゃんが参加出来ないだろうと言っていたのよ。普通の家庭には負担が大きすぎると」
なるほど。パーティーなどになってドレス(本物)を着るのが普通そうな場所なら私の持ち服じゃ絶対合わないだろう。仮衣装でもいくらかかるのか想像したくない。
「だから、私から楓ちゃんにプレゼント!このドレスで私の誕生日会に来て欲しいの!」
「・・・うん。参加できるなら私も参加するよ」
「では、こちらにお着替え頂きます。苦しい場所がございましたらお申し付けください。」
そう言うとメイドさんたちは私を囲んで、各方向から私をスッポンポンにして着飾るという作業に入った。
私は着せ替えお人形です。
四
(仮)
八