第三十四話
負債2
「はい、皆さんこちらをちゅうもーく!」
お、やっと時間か。
前の扉から先生が入ってきて教卓に立った。
「これから入学式が始まります。なのでまず皆さんはこちらの扉に並んでお花を付けてもらって下さい!」
「ここにならんでくださーい!」
そうか、付け花か。祭典には欠かせないものだったな。男だった頃には花なんて付ける必要あるー?とか友達と喋っていたが、この体に対して花というのは結構似合うだろう。
「私達も並ぼうか。」
「うん」
そういえば制服とかだと胸ポケットに差してた気がするがこの服にはどう付けるんだ?ポケットなんてないけど・・・。
「はい。このお花は触りすぎると壊れちゃいますから、あんまりさわらないで下さいね。」
「はーい。」
あぁ・・・。ピン止めか。そういえば確かに小学校の頃は胸元にピン差して止めてた。あれ子供の力だと地味に付けづらかったんだよねぁ。あと刺さった時に痛かった。
「はい。じゃあ胸元失礼するね。」
「あ、はい。」
どうでもいいことを考えていたら私の番が来ていた。
・・・私の後ろから視線を感じる。幻の圧力を感じる。ていうか私にこんな視線を送ってくるのってあの子だけだよね、東条院さんだっけ?
私本当に貴女に対して何もしてないんだから勘弁してください。
「なんか後ろの子があなたの事すごい見てるわよ?お友達?」
「み、みたいな感じです。はい。付けてくだ、れてありがとうございます!」
「はい、お利口さんね。」
姫ちゃんは終わっ・・・てない!そして未だに私を見ている東条院!何故見る。こうなったら見返ししてやろうか。
じー・・・・・
「・・・・・・・・・」
「えっと、付けてもいいかな?」
「勝手にして」
「は、はい。」
あいつ、先輩に対してタメ口だぞ!そしてそれに素直に従う先輩もどうかと思うけど、まるで従者を扱うお姫様のような・・・はっ。明らかに異質な雰囲気。良く見ると他の子とはクオリティの違う正装。そして東条院という凄そうな名前。
この子は超金持ちのお嬢さんで確定だ!よし、関わらないが大吉だな!!私は必要最低限なお金は確保しているから、無駄にお金持ちと関わるのは災厄の元になるって古代から言われてるから。
私はバッ!と急いで振り向いて名札を付けてもらった姫ちゃんと手を繋いで廊下に出た。非日常は好きでも面倒は嫌い、だから東条院さんが私と関わるのは何かのイベントの時にすれ違う時だけだ!
「・・・ねぇ。」
「はい。ドウシタノ、東条院サン?」
「楓ちゃんどうしたの?」
「私も貴女と一緒に行くわ」
「ほんと!?よろしくね!私、姫って言うの!」
「そう。よろしくね、楓。」
「・・・はい。」
私は、今この瞬間から首元に剣を添えられているような気分になった。
頭のなかで以下のような想像をしていたからだ。
①東条院さんは金持ちお嬢様
②人との接し方がお嬢様っぽい
③カースト最上位間違いなし
④気にくわないと思われたら女子グループから仲間外れ確定!
正直、私だけならカーストからポイ捨てされても構わないが、普通の女の子である姫ちゃんがポイ捨てされると絶対に病んでしまう。そうじゃなくても姫ちゃんとあまり遊べなくなるだろう。女子の通信網は年齢関係なく恐るべきものだとママから教わった。
正直人の事をテンプレート扱いとかしたくないけど、仕方ないのだ。こんなあからさまに大金持ちで、上からで、圧があるような幼女は普通ではないのだから普通ではないなりの扱い方をしなければ爆発して死んでしまう。だからとりあえず私の中の東条院さんは「お金持ち、高飛車、強気」なキャラとして登録して対策していくとする。違う点が出てくればその度に変更していけば良いだろう。
「あなた、誕生日はいつなの?」
「えっと・・・」
「とーじょーいんさん、さっきから楓ちゃんにきいてばっかりだね。」
「知りたいからよ。」
がんばれ、私。
気づけば5万字を越えていた。100話くらいまで続くといいなぁ。