第三十三話
負債3
桜井お姉さんと別れて姫ちゃんと一緒に教室に入ると、案の定数人単位のグループがいくつか出来ていた。
その中に同じ保育園の子はいるかなと探してみたが残念ながら居なかった。私達以外にもあと3人くらいはいたはずだけど違う小学校なのかまだ来てないだけなのか・・・?
「楓ちゃん、どうする?」
「うーん、こっちで待ってようか。」
とりあえず最初は静かにしておこうと思い、廊下側の壁際で静かに待つことにした。
変に目立って変な男子とか変な女子に絡まれたくないからね。いつもよりお粧ししてるから汚したくないし。
「ここにいる皆と同じクラスになるのかな?」
「ならない人もいると思うよ?」
今日の私は水色のワンピース(?)みたいなものの上に白いカーディガン的な物を着ている(ママはぽれろ?とかって言ってた)。自分としては髪は纏めないほうが好きなので何も付けずに背中に流すスタイルだ。ママに香油を付けた櫛ですいてもらったから我ながら中々の大和撫子スタイルではないかと思っている。やっぱり黒髪はシンプルに背中に流すのが最高だよ。
「ちょっと暇だねー」
「たぶんあともう少ししたら先生がくるんじゃない?」
・・・うん?何気なく周りを見てみると一人で待っている子がいる。ここにいる子のほとんどは保育園上がりやら近所の知り合いたちが固まって来てるから多少の人数差はあれど一人ってあんまり無いと思うんだけど、人見知りな子なのかな?
・・・・・・いや、一人で静かに座ってはいるけど人見知りではないはずだ。なんせまったく怯えがない。人見知りならこんな多人数な空間は最悪な状況で特に子供の頃なら怯えていそうだが、そういうのがまったく見えないどころかたぶんこのクラスの中でも別格の雰囲気を持っている。そのせいで妙な半円が彼女を中心に出来ている。
「姫ちゃん。あの窓際の子、すごいね」
「え?・・・ほんとだね。桜ちゃんを守ってる時の楓ちゃんみたい。」
え。それって桜を守ってるときの私はあんな感じってこと?そこまでの圧力あるかな・・・?威嚇はしてたけども。
「あの子一人ぼっちで寂しそうだからいっしょにいく?」
「え・・・」
どうするべきか。こんな時、小学生低学年女子はどんな風に振る舞う?女性特有の空気読み能力はもう発揮すべきなのか?それとも子供らしくなにも考えずに・・・???
「ねぇねぇ。よかったらいっしょにいない?」
姫チャーン!?せめて私の思考が終わるまでは待ってほしかったぁ!!
「・・・いいえ、結構ですわ。私は今独りでいたいので。」
「そっかぁ・・・。ごめんね。」
あぁ、姫ちゃん。その子は中々に心の壁が厚い子のようだ。帰っておいで!後からでも友達にきっとなれるから!
「駄目だったよ楓ちゃん・・・」
「よしよし。後でまた声を掛ければいいよ、良い子いいこ」
「うん・・・」
いやぁ、やっぱり6歳程度であっても心の壁が厚い女子というのはいるんだね。男子だったら同じ漫画読んでたり同じゲームしてりゃ人類全員友達みたいな感覚なのに。
また太陽を浴びる人形になってるのかなぁとちらっと見たら
「・・・・・・・・・・・」
彼女が私を見ていました。
なんでや。私と姫ちゃんほとんど何もしてへんやろ。何でそないに凝視してくるんや。
私が蛇に睨まれた蛙の気分で相手を見ていると、その女の子は立ち上がってこちらに来た。
「貴女、名前は?」
「・・・それは私の事でいいのかなぁ?」
「ええ。お名前は?」
「私は白川 楓。きみは?」
「私の名前は東条院 麗子。・・・しらかわかえで・・・」
「よろしくね、ってえ?」
自分の名前を言ってから私の名前を呟いたと思ったら元の場所に戻ってまた人形になってしまった。
「・・・変な子?」
「かもねぇ」
やはり小学校という巨大コミュニティになると、変な子や凄そうな子が一人はいるんだなぁ。
・・・目をつけられない様に楽しく過ごそう。
一般的に流行っている(読みやすいと思われる)形にしてみました。行数めっちゃ増える。