第三十話
わたしは しょうきに もどった!
(毎日投稿とは)
ふわんーふわんー
「ぷかー・・・」
「おねーちゃーーん・・・ぅ」
「すごいでろん感」
浮きわを持って流れるプールに入った桜と姫は最初は物珍しさにはしゃいでいたけれど途中から完全に力が抜けて漂流の如く流されていた。つーか、姫の反応が薄いけどもしかして・・・?
「姫ちゃん寝てないよね?」
「ハゥ!うん、寝てないよ!」
これは寝てましたね。間違いない。
「そろそろプールから出ようか、ママ」
「そうね。このままじゃプールの中で寝ちゃいそうね。次は・・・あら滑り台があるわね。あそこに行ってみましょうか」
「はぁい」
「ほら、姫ちゃん。私にくっついて」
「かえでちゃぁん」
ちょっと眠そうな桜と一回寝落ちた姫を連れてジェット何とかって名前の場所に向かった。えーと、ジェット・・・スプラッシュ?滑り台ではじけるのか・・・。
「おわああああああ!!!!??あああぁぁぁぁ・・・!」
今、滑り台を滑った人がつるーんと上に飛んで大きなプールに落ちて行った。なるほど、確かにテンション的にはじけているとしか思えない。ていうかこの勢いだと子供乗ったらダメだろ。これ私達乗れるの?
「えーっと、子供はこっちに並ぶみたいね。並びましょう?」
「うん。」
「・・ん。」
「姫ちゃん頑張れ。」
「んー・・・ぅぅ」
「私にくっついたままだとむしろ眠くなるでしょ!」
少し冷えた体に暖かい子供の体なんてくっつけたら気持ちいいからね!私も少しふわっとした感覚になってるのに、寝ぼけてる姫ちゃんが私にずっとくっついてたらまた落ちちゃうよ。
「えいえいえいえいえい」
ぺしぺしぺしぺしぺし
「ぅ、ぅ、ぅ、ぅ、ぅ痛い・・・。痛いよ、かえでちゃん」
「起きた?」
「楓。もっと優しく起こしてあげなさい」
「起きなさそうだったから。」
「ウォータースプラッシュへようこそ!何名ですか?」
「大人1人に子供3人です。」
「では、成人の方がお子さまを一名抱えて滑って下さい。残りの2人をこちらのスタッフが担当します。」
「じゃあ、桜はママと一緒に滑りましょうね。」
「はーい。」
「楓は姫ちゃんと一緒に滑ってね」
「うん。」
「わかった!」
お姉さんよろしくね。
「ではこちらの二人をよろしくお願いします。」
「はい!お任せください!よろしくね、二人とも!」
まず最初にママと桜が滑る。
「では、いってらっしゃい!」
「きゃああああ!!」
「ままーー!!!!?!?」
・・・。滑り出して少ししたらママと桜の悲鳴が聞こえてきた。
桜の声が迫真すぎるんだけど本当にこれ大丈夫?
「では行きますよ!」
「はい、いってらっしゃーい!」
「よいしょっ」
「・・・」
怯えているのか覚悟を決めたのか分からないが、姫ちゃんは強ばっていた。
そしてその姫ちゃんを抱えている私も怖いです。でも、心は年増だから表に出さないのです。・・・私を抱えてるスタッフさんに気づかれてないよね?
なんて考えていたらもう滑り始めており・・・!!!
「アアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!???」
「ちゃーーーんんんんんんんんん!!!!???」
余りの速度に絶叫しながら滑っていき、最後にポーンと滑り台から放たれた。
「ひぇ・・・」
「~~!!!」
「最後落ちますよー。喋らないでね。」
心
臓
が
浮
く
よ
バシャーンと浮き輪を下敷きにプールに落ちた。
「か、かえでちゃん・・・」
「大丈夫ですか?次の人が来ますからササッと横に行きますよ~。」
「ハイ」
「かえでちゃんだいじょうぶ?」
「ハイ」
これは余裕で高所恐怖症になれるよ。私はならないけど。なってたまるか。絶対に恐怖症は発症しないぞ。大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・。
この後ママと合流したが、固まっていた私を見て遊ぶのはそこまでにして軽く食事をしてから帰ることになった。ごめんね、桜。姫ちゃん。私が不甲斐ないばかりに・・・。
「お姉ちゃん大丈夫?」
「楓ちゃん・・・」
「ウン。私、大丈夫ダカラ。」
「なんかロボットみたい」
「予想外の弱点が見つかったわね・・・。いえ、作ってしまったのかしら。」
こうして、短い夏休みは終わった。