第二十四話
「はーい、皆ー!新しいお友達が来たので紹介しまーす!はい、どうぞ。」
「白川 楓です。おねがいします。」
「さくらです・・。おねがぃ、ます」
「桜ちゃんは緊張してるかなー?楓ちゃんと桜ちゃんは姉妹です!仲良くしてあげてねー!」
「「「「はーい!!」」」」
ブワッ
こ、子供の元気とは恐ろしや。一斉に返事しただけで風圧が顔に━━━!
「ねー!ねー!さくらちゃん!いっしょにあそぼ!」
「かえでちゃん・・・?いっしょにおままごとしよう?」
「えほんよまない?」
「おらー!らいだーきっくー!」
「なんのー!しゅーえんびーむ!!」
園児達は自由だなぁ・・・。
「お、おねえちゃん。こわい・・・!」
おーよしよし。初めての同年代の他人というのは非常に怖かろう。今は私の後ろに隠れているといい。1か月後には輪の中に入れるようにしてあげよう。
「大丈夫だよ、さくら。お姉ちゃんがついているからね。私達は絵本を読ませてもらっていい?」
「え、あうん。」
「うー。さくらちゃんばいばい」
「この亀さんとウサギさんのお話と、どんぐりのお話、どっちがいい?」
亀さんとウサギさん・・・。徒競走的なお話だったかな?どんぐりはなんか想像つくような付かないような感じがするからとりあえず知ってる方にするか。
「じゃあ、亀さんのはなしにする。」
「うん。どっちがよむ?」
「どっち?」
もしかして音読か・・・?
「えっと、じゃあわたしが読む。」
「わかったー」
「あなたのなまえは?」
「なまえ?ひめだよ。」
姫とはまたド直球な名前だな。きっと両親に溺愛されているのだろうなぁ。
「よろしくね、ひめちゃん。」
「うん。かえでちゃん」
「おねえちゃんはやく・・・」
「ああ、うん。えーっと、むかーしむかしあるところに、太ったうさぎとおよげない亀がいました━━━━」
「こうして、うさぎと亀はなかよくなったのでした。めでたしめでたし」
「かえでちゃんすごくじょうず」
「おもしろかった!」
・・・なんだこの話。私知らんぞこれ。
てっきり、徒競走して天狗になって油断して人生油断大敵だ!みたいな話だと思ったら、メタボで走るのが遅いうさぎと泳ぐのが下手くそな亀という種族として致命的な欠陥を抱えた二匹がその欠陥を乗り越えるために切磋琢磨して最終的に無二の親友になるという熱い物語だった。
なんだこれ・・・。
題材としては良いんだろうけど、ちょっと重くない?いや、子供だったら日曜ヒーロー的な考えで、「頑張ればどうにかなるんだ!」ってなるのか・・???
「つぎはー、」
「あ!これがいい!」
「それよりこっちのほうがいい」
「おねえちゃんもこっちのほうがいいもん!」
「かえでちゃんはきっとこっちのほうがすき!」
おっと、二人が喧嘩しちゃいそうだ。
「ああ、どうどうどう。両方読むから二人ともそこまで。なかよくなかよく、ね?」
「うん!」
「たのしみ。」
物語の題材の賛否は置いといて読み上げに徹しますか。私はスピーカー!
「・・・いいなぁ」
「いいなぁ」
「ぼくも・・・」