第十四話
張り切って黒魔導書を開けると、謎の圧力を感じた。
な、なんだこれ・・・!?
「黒魔導書の防衛反応でございます。ただし、そこまで強い力を持つ書ではないため、幻圧のみでございます。」
ぐぐ・・・これで強くないってどういうこと?まるで巌の様な人を目の前にしたときみたいな気分だけど!
「強い書は肉体に攻撃してきます。」
なるほど。たしかに体に被害が無いのなら・・・!命のために根性でぇぇぇ!!
ぐるぐるぐるっと点☆蛇ィ!
「力の低下を確認。引き続き刻んでください」
へびぃぃぃぃ!!
「そろそろ起きたかなぁー?あら?また隣の部屋かしら。かえでー・・・!?かえで!!!」
「う!?」
「人の物に落書きしちゃダメでしょ!」
「ふぇ・・・ふっうっ、」
「あ!つい、」
「ウアアアアァァァァ!!!!」
「あー!ご、ごめんね楓ー。泣き止んで~!よしよし、よしよし」
「楓ちゃんめっちゃ泣いてたけど、どうした?」
「楓ちゃんに何か・・・泣き腫らした目で本を抱えた楓ちゃん?というか何の本?」
「あのね、楓が隆司君の物に悪戯したみたいで・・・。それを叱ったら盛大に泣かれちゃって・・・。楓があんなに泣くなんて産んだ時以来よ・・・」
「え、僕の?・・・あ!?」
「あー、何やらかしたの?」
「隆司君の英語?の本にお爺ちゃんから貰った色鉛筆で落書きしちゃったのよ。幸いにも白い鉛筆だったからほとんどのページに影響は無いんだけど、一部挿し絵とかにね。」
「英語の本?隆司、お前そんなの持ってきてたのか?」
「あ、いや、そのそれは」
「ごめんね隆司君。後で弁償して新しい本送るから本のお名前教えてもらえる?楓ったらこの本を離さないのよ」
「いや、あの。古本屋で適当に買ったものなんで!弁償とか大丈夫!あと、楓ちゃんが気に入ったようなら譲りますよ!僕には難しすぎましたし!はは、は!」
「え、えっと、いいの?私は読めなかったけど結構すごい本なんじゃ・・・?」
「(・・・こりゃ思春期だな?)まあ隆司がこう言ってるし貰ってやってくれ。英語の勉強したけりゃ新しいのを買ってやるさ」
「そう・・・?隆司くんごめんね。楓が何かに拘ったりするところなんて見たことないんだけど離してくれなくて・・・。」
「そういうのはこれから増えるわよ。どんどん自意識が芽生えてくると自分の物を持ちたがるからそこを上手く誘導してあげないと我が儘に育っちゃうし。今回みたいに私達には良く分かんないものを気に入ることもあるのが怖いのよねぇ」
「姉さんの言うとおり母親は楽じゃないのね・・・」
「あはは!そんなこと言ったら世の母親達に怒鳴られるよ、咲!楓ちゃんなんてトップクラスに手間がかからない良い子よ!隆司だったらこの1日の間に最低でも4回は泣いて、寛ぐ暇もないわ!」
「母さん、なんてこというんだ!?」
「ほら、楓。隆司お兄ちゃんにありがとうってお礼しなさい?」
「あ、いあとう」
「ど、どういたしまして。」
「・・・もう、くおま、にゃめ」
「ヘッ!!?え・・・え?」
「くおま?」
<ここでフィィィィィッシュ!このマグロは超大物だぁ!!!>
「おおおぅ!?こりゃ200kg行くんじゃねぇか!?」
「早く重さを見せい!」
こっちが部屋の片隅で真面目にお話している間、テレビ前にはママのお兄さんとお爺ちゃんの釣り好きコンビが新春マグロ釣り対決を見て興奮していた。もうちょいボリューム下げて下さい・・・。