第十話
未来を教えてもらった代償に寝落ちしてから5時間後の夕飯時に目覚めた。
結構代償小さいな。
「情報を受け取っただけなので短時間の昏睡で済みました。こちらからの能動的な検索も加わりますと、最低1日の間目覚めることはございません。」
なにそれ怖い。そりゃ絶対使えないわ。そんな状態になったら絶対謎の入院行きですわ。
「あ!赤ちゃん起きた!咲お姉ちゃーん!赤ちゃん起きたよー!」
「あらほんと?楓~?」
「ままー」
「はぁい、ママでしゅよ~。これからお蕎麦食べるから、お席につきましょうね~」
「ブハッ!いくらなんでも咲の奴、娘に対してデレデレすぎるだろ!こんなの見たことねー!アッハッハハハハハ!!」
「ちょっと兄さん!頭から蕎麦被りたいの!?」
酒飲みおじさんの中のママはいったいどんな姿なのだろうか。ヤンキー的な何かですか?
「・・ん?ねぇ、咲。楓ちゃんって1歳なのよね?」
「そうね。」
「もう歩けるんじゃないの?」
「・・・え?」
「あんた・・・まさかつかまり立ちの練習とかさせずにいたの?体の成長遅くなっちゃうわよ?」
してましたよ。
「だ、だって、健康であれば大丈夫だと思って、あと、歩き出すのはもっと後の方だと思ってて・・・」
「ハァァ。まったく。これから母親になるんだから、もっと自分で調べるか、人生の先達である私達に聞きなさい?何かあってからじゃ遅いのよ?」
「はい・・・。」
「じゃあ、ごはん食べたあとにちょっと練習しましょ。最初は上手くバランスが取れずに転ぶ可能性あるから気をつけるのよ?」
「はい!」
ママに内緒でつかまり立ちだけはやってたから、一応問題無いと思います。流石に事故るのを警戒して、棒を離して立つ事はしなかった。
「何してるの?早く配膳しなさい。」
「はーい!」
一部の男衆を除いて皆で蕎麦を食べた。
え?離乳期の子供が蕎麦を食べるのは危ない?
そうだよ。だから私はママが持参してたものをもにょもにょと食べました。
ただ、どうも珍しいのか周りがこっちを見ながら驚いていた。
「彼女らの目には1歳でありながらほとんど溢さず綺麗に食べる赤ん坊の姿が特殊なものに映ったようです。」
え、スプーン使ってるしこんなもんじゃない?
「一般的にはよだれ掛けに色々と溢すようです。」
そういや私の場合、よだれ掛けとか存在感無いからな・・・。
「前世の記憶から「食事は綺麗に食べなければいけない」という道徳を無意識的に実行しているのでしょう。」
じゃあ、今度からはもっと汚くした方がいいか・・・。
「推測ではありますが、十中八九異常と認識され病院に行く事になるかと思います。」
赤ちゃんと病院は密接だなぁ!!
「~むにゅむにゅ~」
「わぁ・・・、楓ちゃんの食べ方綺麗ねぇ。」
「え?そうなの?」
「本当に綺麗ね。貴女達がこれくらいの頃はそりゃあ、どこに飛ばしてんだい!って感じで」
「ちょっとちょっとちょっと!何年前のお話よ!子供たちの前でやめて!」
「~むにゅ」
「普通だと思っていたけど普通じゃなかったのね・・・。やはり楓は天才で決まりね。」
「・・・そいつ。たぶん大物の器を持っておるぞ」
「ちょっと、なにお父さん。突然中学生みたいな事言い出して?」
「お父さん。楓は孫なんだからそいつはやめてよ。女の子だよ?」
「・・・その子はわしらの先祖と似ておる。きっと、万夫不当の豪傑になるじゃろうな。」
「・・・お父さんこんなんだっけ?」
「じゃなかったと思うけど・・・全部にたぶんとかきっととか付いてるし」
「きっと新しい孫が可愛くてしょうがないのよ。放っておきなさい」
ジャガしすべし