エピローグ 星の光は遠くに、絆は近くに
夜も更けていく中。
きらめく星の下、二人の男が夜空を見上げていた。
一人は、幼さを残した優しげな顔の青年…十乃 巡。
一人は、燻る熾火のような瞳の若者…十逢 頼都、
二人は長く無言のまま、空を見ている。
巡「そろそろ時間ですね」
頼都「だな…やれやれ、これでオフも終了か。儚いもんだ、平和ってのは」
巡「でも、とても楽しい夜でしたよ。色々な人にも会えましたし」
頼都「まあな。お陰で俺は一足早い節分を堪能したよ」
巡「あははは…凄い迫力でしょ、うちの主任」
頼都「まったくだ。あんなのが毎日傍にいたら、生きた心地がしねえ」
巡「でも、いい人なんですよ」
頼都「お前は幸せ者だな」
巡「えっ?」
頼都「聞いたぜ。お前、人と妖怪の共存を目指してるんだって?」
巡「ええ、まあ」
頼都「俺とは逆だな」
巡「そうなんですか?」
頼都「ああ。俺は怪物を狩るのがお仕事だからな。お前みたいに気のいい連中とつるめる御身分でもないのさ」
巡「でも…今夜はつるめたじゃないですか」
頼都「ああ、どっかのお祭り好きのおかげでな。だが、それももう終わる」
巡「…」
頼都「こいつは夢だ。ハロウィンはこの世ならざるものが跳梁跋扈する、特別な夜なのさ。だから、こんな説明もつかない出来事が起きる」
巡「僕と貴方の世界は近い気がしますが…」
頼都「だが、立っている場所が違う。遠いんだよな、お互いが」
巡「…また、会えますかね?」
頼都「さあな、俺に聞かれても分からん」
巡「また、会えるといいなあ」
頼都「まあ、よ」
巡「?」
頼都「一度会えたんだ。また、会えるだろうさ」
巡「その時は、もっと違う世界の皆さんとも…」
頼都「会えるだろ。どいつもこいつもひと癖ふた癖ありそうだが…まあ、面白そうな奴らだったな」
巡「そうですね…」
頼都「さて、と。俺はもう行くぜ。もし、次会ったら初対面かもな」
巡「ですかね。でも、その時も宜しくお願いします」
頼都「おう。じゃあな。頑張れ公務員」
巡「はい!頼都さんもお元気で…!」
背を向けて、歩き出す二人の輪郭が夜霧にかすむ。
ふと、互いに振り返るが、そこには静かな夜の空のみがある。
気まぐれが生んだ一夜限りの共演。
数多の作品が交錯する神秘の夜が、静かに更けていく…
【END】