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足早に死に進む。

昼も過ぎた頃、山に仕掛ける罠の準備に追われていると、空からの来訪者があった。

フサフサのベッドこと、ぬりかべの岩爺だ。


「龍の上人ざま、(わらじ)ざ218人産まれだどお」

「そりゃいっぱい産まれたもんだな。おめでとう岩爺」


いきなりの出産報告に動揺してしまったが、家族が増えることはおめでたいことだ。素直にお祝いをいわせてもらおう。

そして、岩爺は戦準備の手伝いをこころよく引き受けてくれた。

ここから半日の距離にある罠を仕掛ける予定の山も岩爺ならひとっ飛びだ。伸縮自在のその身体で、大量の罠や人員の輸送に大いに役立ってくれた。



そして、ぽつぽつと周辺の妖怪の里から、人獣、妖怪の訪問者が訪れた。

援軍要請の返信を携えた使者、阿波の森にすむ、小鬼、ひとつ目ひとつ足、熊、蛇、カエルなどだ。

三津の里からの要請に大多数の妖怪は難色を示した。たとえ初戦を撃破しても淡路からの追撃があるだろうこと、サトウキビの栽培をやめれば済むことを、なぜ意地を張るのか理解しがたいなどだった。


砂糖の増産、それが俺の願いだ。今後につなげるためにも妖怪の皆さんの協力を仰ぎたいところだ。

今回の交戦は、三津の里の住民だけでも十分に勝算がある。協力要請の目的は阿波の森の住民に、淡路軍など恐れるに足らずという心意気を持ってほしい。そこなのだ。

本来は人間より妖怪の力が強い。淡路の本軍も阿波の森の住民が一丸となれば攻略の道もできるだろう。

そして略奪に怯えることなくサトウキビを栽培してほしい。我欲かもしれないが俺はそう願っている。


俺は、不参加の意志を伝え里に戻る人獣、妖怪の使者をひきとめ、それぞれの名前を聞き出した。

名前のないものには便宜上の名を与えて、レベル3倍、そして千里眼のスキルを付与した。

もちろん全員に劇的な変化があった。白蛇などはレベル200となり人化してまるで神格を得たかのようだった。

俺は妖怪の使者に里へと戻って、仲間に自身の変化を伝え、千里眼で戦局をみてほしい。そう要望した。




こうして戦支度は進んでいったが、合間をみて白玉が俺に飲み物や軽食を持ってきてくれる。

この居心地の良さが、そのうち当たり前になりそうでちょっと怖い気がしている。


「おまえさま、おまえさまのおかげで舌がようすべるようになりましたで」

白玉はたぬきだったころのおかしな間延び口調がなくなったようだ。


「それじゃ、復唱してみて。あかまきがみ、あおまきがみ、きまきがみ」

「あかまきまき、あおまきがき、ぎまきまぎ」


早口言葉につまずく白玉かわええな。

あざとくだまされてるのかもしれないが、巨乳といちゃいちゃするのはなかなか楽しいことだ。

白玉はふわふわの髪を耳の下で小さく結び、ウグイス色に白い花をちらした柄の着物を着て、やっぱりエプロンをつけている。

ノーブラなんだろうユサユサ揺れる胸元が非常に好ましい。


「龍の上人ざま」


俺が白玉相手にきゃっきゃしてると、岩爺がかしこまって膝をついて声をかけてきた。


「なんだ岩爺、なにかあったのか」

「菊理姫様ガ姫川城でお待ちでゴざいまずだあ」



心臓に衝撃がはしった。

これは、待っていたうれしい死刑宣告…!?一刻も早く菊理に会いたいという気持ちと、他の嫁を貰ってばれたらやべぇという気持ち。どちらで心臓が破裂するかわからんな。

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