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めざめたら牢屋でした。

チーレムをめざしてるのに、なぜかうまくいかない。

天狗兄弟じゃなく姉妹を旅に連れて行くべきだった。はげしく後悔しています。

ごつごつした岩の天井、角材の丈夫な格子、ゴザを敷いただけのひんやりした土の床。

そう、めざめると俺は牢屋にいた。


姫川城は岸壁の上にある。その天守閣に至る坂の途中の岩屋の牢に俺と天狗兄弟は収監されていた。

岩屋はかなりの広さがあって、日光の差し込む入口に1階建てと、2階建ての牢を無造作にしつらえてあり、奥にかけてくだるほどに暗い洞穴がひろがり最深部は川へと繋がるようだった。


「御目覚めでござるか、猿渡総司(さわたりそうじ)殿」

岩屋入口の簡易な板の間に吉沢さんがいて、牢番の兵が牢屋の鍵を開けて俺を手招いた。


「木剣が頭上におちるとは災難でござったな。お急ぎの旅の途中、足止めしてしまい申した」

「そちらのぬりかべを呼びますゆえ少々お待ちいただきたい。わたくしどものぬりかべを同行させて国境までお送りいたそう」

俺たちは竜姫に城に招待されたはずなのに、なぜかご入城お断りの雰囲気になっている。


「それは国外退去しろということですか?」

「播磨の入国税は銀1(もんめ)、不法入国の罰金は10倍の銀10匁、5人ですからちょうど1両となります」

「退去します」


「お館様は明日からの祭りの準備でおいそがしいゆえ、御一行が先を急ぎ、宴席を辞退して発たれたと拙者からお伝えしておきましょう」

「了」


話はついた。ぬりかべの家臣のいるこの国で、ぬりかべの飛行能力を使った不法入国はバレバレだったようだ。

天狗の移住先にも不適合なこの国にはとくに用もない。

1両と言えば10万円相当の大金だ。金ももったいないし、とっとと播磨を立ち去ることにしよう。


「総司殿っ!」

俺がいったん牢に戻されると天狗兄弟がしがみついてきた。


「どうにか、罰金の金子を捻出していだだけぬものか」

「かずらの婆さまには反対され退去となり申したが、なにとぞ、総司殿のお言葉添えで播磨滞在の許可を頂きたい」


俺たち一行のもともとの旅費は3両、それにくわえ賭場の胴元の権田に10両の餞別をもらっている。多少の余裕はあるし罰金の1両をだせないことはないが。


「おまえらなんでそんな必死なんだ?この国になにかあんの」


「総司殿っ!くらやみ祭りでござる」

「明日から3日間、月が昼間のうちにおちて闇夜になるのでござる」


播磨の国には結婚制度がない。

女の家に男が一時的に居候したり夜這いをかけるのが普通らしいが、それにあぶれる男女もいる。


女性優位のこの国では女に選ぶ権利があって、モテない男はとことんモテないし、逆に血筋の良い家系、見栄えのいいイケメン、能力の高い男はとりあいなのだそうだ。

そしてマザコンの播磨の男はママンの選ぶ女の家に通う。

イケメンほどママンが厳しく管理して、高額の種付け料を支払うこともめずらしくないようだ。


この女系社会で子供が産めず、働き手を増やせない女は地位が低いらしい。

器量だったり、貧乏で種付け料が出せなかったり、それぞれの問題で男のつかない女はどこかで種をもらう必要がある。

それがこのくらやみ祭り、闇にまぎれて乱交する、通称「種つけ祭り」だ。


「アホか!おまえらの種つけになんで10万も出さなきゃならねぇんだ!死ねっ」


天狗の兄弟は調子にのりすぎだ。やつらの意見は全面無視して、陽の高いうちに摂津国(せっつこく)淡路国(あわじこく)まで移動したい。岩爺とかずら婆さんはどうしてるだろう。ステータスをいじって、ぬりかべとの念話をONにしてみた。


「おっ父~がんばれ」「リイおっぱいおっぎいんか」「八十二郎が酒のんでうどー」「リイ新しいおっ(かあ)になるだ?」「新しいおっ母めちゃくちゃ美人だどー」「おでもリイみてぇ」「天狗のうんこでけぇ」「おっ父~」「ばがあ、うわーん」「チューするだチュー」「おでたちの新しいおっ母」「おっぱい~」


俺は念話を速攻で切った。

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