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嫁が怖いんです。

異世界に来て幼女に翻弄されるなんて、おかしな状況になったもんだ。


俺が菊理姫に名前を教えると、

「よき名じゃ。(そう)と呼んでもかまわぬか?」

などとおっしゃるので俺も調子に乗りまして、

「じゃ俺は、くくり…クーと呼ばせてもらうぜ」

といった自分でも「爆発しろ」と、つっこみたくなる会話をしてしまったんだ。

いずれ離れる相手とはいえ、ひとときの夢を見るのも悪くない。



そして、菊理姫と転移した先には、

「ヴォオオオオオ」

「モゴオオオオオ」

牛頭馬頭がいたという訳だ。


再び転移。

かよわい幼女を連れて、化け物と闘うリスクはおかせない。

今度は麻呂の屋敷の塀の外に出た。

どうも転移は短い距離を移動するスキルのようだ。

菊理姫のいたマヨヒガも屋敷内の部屋の一つなのだろう。


しかし、屋敷から開放された彼女は俺の手を離すと、

なんと「牛頭馬頭、我はここぞ」そう叫んだんだ。これには心底驚いた。

これが世にいうハニートラップか!

幼女であっても俺が女にもてるなんてありえないし、おかしいと思ったわ。

結婚なんちゃらは俺をハメるための罠だったんだな。


牛頭と馬頭は醜悪な雄たけびとよだれをまき散らしながら、軽々と塀を飛び越え俺らの前に立った。


「姫しゃまぁ~よくぞごぶじでぇ~ぇ」

「安堵いたじまじだぶぉお!ごの牛頭、命ぶぁちぢまる想いでしたむおぉぉ」

「馬頭もぉ~ぉ心配しておりましたぁ~ぁ」

顔のいたるとことから汁をだだもれにして牛頭馬頭は菊理姫の足元にひれ伏す。

えぇ!?まさかこいつらは菊理姫の配下なの!?


「そうじゃ、牛頭馬頭は我の家臣じゃ」

聞くところによると、牛頭馬頭の二人は安倍の清明にとらえられた菊理姫を追ってこの屋敷まで来たが、姫を人質に脅され、敵である麻呂に使役されていたということだ。

まだまだ罠の可能性も捨てきれない。といいたいところだが、この牛頭馬頭の汁だくの顔を見れば信じるしかないような。


「牛頭馬頭ともども、この屋敷の主には世話になった。我からの礼じゃ」

「地を這う亡者よ、世に(あだ)なす奸臣(かんしん)を食らいつくすがよい」


一天にわかに掻き曇り、菊理姫の声に呼応して、あたりは暗雲たちこめる。

空気は冷たく、地の底から響く不気味な振動音、ボコボコと何かが地中からはい出す気配を感じる。

屋敷内のあちこちで悲鳴が上がりはじめて…。

ビビリの俺には怖くて中の様子をうかがえません…。

菊理姫…まさかこいつ、アンデット使いか!?


そうだな、少し頭を働かせれば俺にも気づけただろう。

黄泉比良坂は死者の国、牛頭馬頭は地獄の獄卒(ごくそつ)だ。

黄泉比良坂に城を持ち地獄の獄卒を従えるといったらそれは__。


塀を隔てて聞こえる阿鼻叫喚の声に意も介さず、超絶美幼女はにっこり微笑む。

「近くに馴染みの湯宿があるのじゃ、今宵はゆるりと過ごそうぞ」


逃げられないと気づいた瞬間でした。

俺の嫁怖い。

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