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幼女と結婚しました。

転移した部屋の畳の上に俺は膝から崩れ落ちた。

自分が嫌になる。

右も左もわからない異世界にきて、敵認定してるやつの屋敷で犯罪行為を働こうってんだからもっと慎重に動くべきだったんだ。


牛頭の爪が食い込んだ腕と背中から血があふれてきやがる。

そうだな【VIT(バイタリティ)】こいつがないとレベル999でも柔いのかもしれない。

身体強化スキルも必要だった。

手に入れたばかりのユニークスキルはわからないことばかりだ。検証の時間が欲しい。

そのまえにダメージを回復させるスキルを得なくては。


「誰ぞある?」

部屋の中央にある一段高くなった場所の御簾と布で仕切られた小部屋の中から少女の声が聞こえた。

見つかるとやばい。

俺はとっさに透明化して身を隠した。


御簾をあげて姿を見せたのは10歳ぐらいの可愛らしい女の子。

切りそろえた前髪に、頬に落ちる左右の髪を赤い紐で結んで前に垂らしている。

神楽(かぐら)を舞う巫女さんの服をアレンジしたようなふわっとした着物を着て、風もないのに風力3なイメージ。

なんだろうな髪の毛がさらっツヤでいい匂いしそう。

天使の輪どころじゃない。髪全体がきらっきらしてる。人間離れした超絶美少女、いや超絶美幼女だな。

まぁ髪云々の描写が多いのは俺のフェチだからできればスルーしていただけるとありがたいかな。


「そのほう怪我をしておるのか?」

畳にこぼれた俺の血を見とがめて少女がといかける。

「侘しき仮宿に客などめずらしきこと。(われ)が癒して進ぜよう」


サラサラと布を揺らして、少女は姿を隠したままの俺の目の前に立ち、白い手をかざした。

かざされた手から光が広がり俺を包むと、牛頭の爪痕は消えて、いくばくか残っていた動悸は収まり汗も引き、そうだな癒しというより「浄化」された気分だった。


「我の名は菊理姫(くくりひめ)じゃ。そなたの名は何と申す」

怪我を治してもらったのに姿を消したままで、警戒してますオーラ出しまくるのは大人としていかがなものか。

俺はひとめで高貴な人種とわかる目の前の少女に、ちょっとビビりつつも透明化のスキルを解いた。


菊理姫はちょっと小首をかしげて愛らしい唇をひらくと、

「そなた…()いのう」

そういったんだが、()いってのは「きゃー可愛い」みたいなことか?

可もなく不可もなく、観賞用とはいえず実用品にすぎない俺の目鼻をお気に召して頂けたのだろうか。


「面白き相をしておる。そうじゃ、そなたを菊理の婿にしてとらそうぞ」

自己紹介もすまないうちに、なぜだか俺を気に入ったらしい幼女に求婚されてしまいましたよ!

積極的すぎるな菊理姫。

「そなたは菊理の婿じゃ。うれしかろう」

「は、はい」

俺もどうしたことが少女の迫力に圧倒されて「お受けします」的な流れになってしまった。

「では、今日の日よりそなたと菊理は夫婦(めおと)じゃ。末永く、むつまじゅう語り暮らそうぞ」

菊理姫はにっこりとほほ笑む。

異世界生活1日目にして、幼女と結婚してしまったようだが…大丈夫か俺。



菊理姫を見ていると収まったはずの動悸がまた激しくなる。

冷静になれ冷静になれ。

相手は子供だ。結婚の意味も分かってないんだろう。


さて、息を整えて菊理姫に質問タイムだ。

「見渡したところ、この部屋には窓もなく灯りもないのに不思議と明るいよね。菊理姫のいるこの部屋はいったいなんなんだ?」

「ここはマヨヒガじゃ。安倍(あべ)清明(せいめい)の術中に陥り、菊理は捉えられておるのじゃ」

いま安倍の清明と聞こえたな。

あの有名な陰陽師の安倍清明のことか?

並行世界なら日本の歴史上の人物と同じ人物がここにも存在していてもおかしくないのか。


「清明めは我の居ぬまに黄泉比良坂(よもつひらさか)の門を開ける算段なのじゃ」

菊理姫は曲げた人差し指でふるえる唇をおさえてくやしそうな表情をみせる。


「菊理は一刻も早く城へ戻らねばならぬのじゃ」

俺の胸に手を当てて上目づかいの顔を寄せる菊理姫。

近い近い。菊理姫の可愛い顔がめちゃくちゃ近くに来てすんげぇあせるわ。

「我が殿、そなたが頼りじゃ」

幼女のおねだり攻撃にまいったわ。幼くても女の使いどころをよく知っていらっしゃる。

かつてないほど甘酸っぱい気持ちにさせていただいたことだし、ご要望にお応えしましょう。


俺はステータスを表示させた。



 【 名 前  】 猿渡総司

 【 官 位  】 なし

 【 レベル  】 999

 【 パッシブ 】 絶対防御、状態異常無効、自動回復、蘇生

 【 スキル  】 転移、透明化、魅了、スリープ、エアスラッシュ

 【 PT   】 菊理姫

 【 PTスキル】 転移、透明化



ざっくり修正してみたが、この場はこれでいいだろう。

できるかぎり戦闘は避けたいし魅了、スリープを入れてみた。エアスラッシュは保険だな。

修正前のステルスが完全表示されてなかったところをみると、どうやら文字数に制限もあるようだ。

試行錯誤には時間が必要だ。

ちなみに、菊理姫には俺のステータスは見えなかったようだ。


菊理姫の手を取って「行こうか」というと、

「お待ちやれ。ここはマヨヒガ、いづれか品をおとりなされ、良きことがありましょうぞ」

なぜか室内の調度品を持ち帰れとすすめられるが正解はこうだろう。

「姫をいただけたらそれで十分だよ」

うむ。自分ではいててかなり気恥ずかしいセリフだな。

調度品はかさばるからご辞退したい。という意向が伝わればそれでよかったのになんでこうなった。


「我が殿」

顔を真っ赤にして目をうるっとさせ、ぎゅっと手をにぎって返す菊理姫はめちゃくちゃ可愛い。

やばい!相手は幼女。

俺の中の何かが崩壊する前に姫を城へ届け、この手を離さねばッ。

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