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水風船は人をダメにする。

誘惑に打ち勝って俺たちは遊郭からでることができた。


とはいっても、夜はここにお泊りなわけだけどな。

義務を果たし法律に触れなければ、あとの行動は自由と学校のセンセーに教わりました。

ちゅーことで、夜は少々ラッキースケベなことがあろうともゲフンゲフン。


いまの俺たちの義務、それはこの都の偵察だ。

滞在時間も少ないし、ここは3手に別れて情報収集することになった。

俺は空から見て貧困地域に思えた長屋と市場を見て回る。

夏角と雨角は「口入れ屋」という人材斡旋業者に会うという。

かずら婆さんは矢古姐さんとは別の古い知り合いへ、挨拶周りと住民受け入れの打診だ。


もちろん何かあれば、ぬりかべ経由で連絡を取り合うわけだが…。

それとは別に、えと、遊郭の色っぽいお姉さんが案内&連絡係としてついて来ています。


お姉さんとはいっても俺より年下の高校生ぐらいかな。

髪を頭頂で結んでかんざしを挿し、一束を頬に流した頭皮の見えない髪型をしているね。

白人系の少女顔で目が大きく、おっぱいもお尻もむっちりです。

今は着物でかくれてるけど、お茶を運んでくれた時に目に焼き付けたから脳内で再現安定だ。


綾乃(あやの)ちゃん」

裏通りに入ったところで日本髪の町人風なおばちゃんが駆け寄ってきた。


「綾乃ちゃん、あんたなにやってんの!おとうちゃんおかあちゃんに心配かけて!」

おばちゃんは綾乃と呼ぶ遊女の腕を強くつかんで離さない。

「やめてくださいなッ私の身体は売り物なのよ!あざでもついたら矢古姐さんにどやされるじゃないの」

綾乃はおばちゃんを押しのける勢いで腕をふりほどく。


「育ててもらった恩もわすれてッあんたそんな娘だったのかい。家に帰れとはいわないさ、せめておとうちゃんに顔だけでもみせてあげて!そのぐらいしても罰はあたらないよッ」

「綾乃は死んだと思ってちょうだい。もう関係ないから」


綾乃はどうやら困った不良の家出娘のようだな。

「さっ行きましょ」

綾乃はおばさんを無視し、俺と腕をくんでさっさと歩きだす。


気まずい修羅場だ。

しかし、どういう事情があるかは知らないが、家族との訣別は綾乃の選んだ道。

遊女とはいえ、それで生計を立てている女性に俺が説教できるほど偉いはずはない。

それに、俺の修羅場は別のトコからきている。

綾乃お姉さんのおっぱいが腕にあたってるんですけど!

ナニコレ、ぽよんとしてすんごく柔らかい。

感触は夜店のヨーヨー釣りの水風船だ!

やばいね!コレ、人をダメにするクッションだよ!


腕に当たるおっぱいにドキドキしてると、背筋にゾクりと悪寒を感じた。

悪い予感がして、きょろきょろあたりを見渡すが特に不審なものはない。

着いたばかりの都に敵などいないと思うのだが。


__そうこうしてるうちに長屋に着いた。

長屋は一般庶民の住宅で、いわばアパートらしく都全域に点在するとのことだ。

上空からだとわからなかったが長屋は二階建てだった。

裏通りから木戸をくぐって長屋の敷地に入る。


長屋は敷地の出入り口を木戸で閉じているが、都の住人はみな普通に通り抜けしてるようだ。

この長屋は5棟ほどの家がひとつに繋がり、それが12棟あった。

それぞれの玄関周りには花を咲かせた植木が並び、通路にはゴミひとつなく清潔に保たれている。

貧しいと感じたのは共有の通路に、桶や荷車、植木に木材といったものが雑然と並んでいたからだ。

近くでみると、こうした共有通路の使い方も悪くない。

和気あいあいとした暮らしっぷりがみてとれて好感持てるね。


綾乃の話によると、この手の長屋の住人はほとんどが人間とのことだ。

「お力の強い妖怪のみなさんはお屋敷にお住まいですよ」

「弱い妖怪さんは、そのお屋敷にお世話になってることが多いかしら」

どうもこの都では人族より妖怪の立場が上みたいだね。

その立場が下の人族も、庶民がこの長屋暮らしなら都の暮らしは俺が思うよりかなり豊かだ。


天狗は、と綾乃にたずねると、

「天狗はみかけませんね、北の山奥に住むと聞いてます。ときどき渡ってくるようですが」

その天狗の渡ってくる場所は女人禁制の山々で一般人が顔を合わせる機会はないという。

素晴らしくスタンダードな天狗っぷりだ。

これは大角たちが例外と考えたほうがいいのかもしれないな。


「長屋住まいの人間なんて貧乏くさくて最低ですよ」

「鬼族はかっこいいですよね。あの角がたまらないわ」

「貴方様も…お姿を変えてらっしゃるけど、さぞ名のある(あやかし)なんでしょう」


綾乃はすごいグイグイくる。おもにおっぱいでグイグイくる。

俺は気づくと神社の境内の入り口、その暗がりの茂みに誘い込まれていた。

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