ポロリしてました。
お酒とタバコは20歳になってから。
風俗は18歳からOKだったっけ?
異世界では風俗は何歳からセーフ判定なんだろうな。
というわけで俺たちは今、遊郭に来ています。
矢古姐さんの案内で、前庭のある豪華な料亭というか高級旅館っぽい場所に来てみると遊郭でした。
いきなり玄関で半裸の女性に足を洗われてビビったっス。
半裸といっても上半身裸に腰布みたいなラフさのある半裸ではナイっすよ。
透けてる上着を胸元ゆるゆるにして腰飾りで止めたみたいなおしゃれなエロ着物っス。
興奮より先に緊張が来てガチふるえたっス。
あちこちでおっぱいポロリしてるお姉さんがたをガン見できる雨角さんを尊敬したっス。
ふぅ。先にいってくれよな展開だぜ。
俺らの反応を面白がっている矢古姐さんに目を覗きこまれるのもキッツイわ。
矢古姐さんはこの遊郭の中に部屋を5つほど借りてるようだ。
そこで遊女たちと客をもてなすらしいが、テナントビルに店を持つ感覚だろうか。
俺たちが通されたのは、矢古姐さんの借りている部屋のひとつ「青牡丹の間」だ。
青牡丹の間は20畳と10畳の二間続きの座敷で、柱やふすまは黒と紫を基調として、そこに青い牡丹があでやかに描かれている。
天井も同様に、黒と紫そして青で格子の中に牡丹が描かれて、かなり贅沢な造りのお座敷だ。
調度品も同系色、青ガラスのはめ込まれた衝立、青い毛皮の敷物などがあった。
玄関から続く真っ赤な廊下には浮足立ったが、コレも落ち着かないもんだな。
俺は窓を開けて黒い格子越しに風を入れた。
畳に正座する夏角と雨角は鼻息が荒い。
そりゃあそうだ。
身体のラインもろわかりな薄手の着物の可愛いお姉さんが、おっぱいゆさゆさ揺らして俺らの前にお茶を置いたんだからな。
俺は正面から来るおっぱいには目をそらしたが、退場する後ろ姿の尻はじっくり堪能させていただいた。
そんな青い俺らをよそに、かずら婆さんと矢古姐さんの女二人はお茶をすすって雑談を始めている。
「それにしても、かずら姐さん、お背中の翼がお似合いですわねぇ」
矢古姐さんはかずら婆さんを品定めするように眺めまわす。
「背負うモンがあるのもそれなりに楽しいことじゃで」
婆さんは意にも介さず茶受けのまんじゅうをほおばっているところだ。
「かずら姐さん、お聞きになりましてぇ?冥府のお姫様がお戻りになられたそうでしてよ」
この話題に俺の耳もピクリと反応する。
「出雲の国は災難でしたけど、死に戻りのお大臣様方が戦々恐々ですのよ」
「死に戻りとはどういうことですか」
俺は「冥府のお姫様」「死に戻り」という気になりすぎるキーワードに食いついた。
「あら、ご存知ありませんの?死に戻り術のことですわ」
「簡単に説明いたしますと、死者の魂が冥府に引かれるのを抑える術。ですわねぇ」
「でも、術で戻れるのも、黄泉平坂の門が閉じて引きが弱い間だけ」
「門が開いた後も、冥府の呼び声に逆らえる魂魄などございませんしねぇ」
町中で見かけた白骨のアンデットたち。
あれは特殊な術で魂を肉体に縛り付けたものらしかった。
ただし、死んでいるので心臓が動くこともなく肉体は腐ってしまうようだ。
「長い間ご贔屓いただいた旦那様方とお別れとは、胸も懐も痛みますわねぇ」
矢古姐さんのなじみ客にはアンデッドも何人かいたようだ。
金持ちほど生に執着するというし、白骨化しても浮世を楽しんでいたかったんだろう。
「自然の摂理というものは懐が広く温かい。この歳になるとお迎えを楽しみにまつほどじゃがのう」
そういって茶をすするかずら婆さんに、矢古姐さんは一瞬、憎々し気な表情を浮かべた。
俺はこの時、完全に油断していた。
かずら婆さんは茶をすすり、クワッと目を見開いた。
そして、次の瞬間、俺の分のまんじゅうをパクリと口に入れたのだ。
「ババァなにしやがるッ」
俺は逆上しておもわず叫んだ。
何を隠そう俺の大好物ランキング2位は牛カツ、輝く第1位はあんこなのだ。
「あらあら、まだ夕餉までには刻がありますが、口寂しいのでしたら酒席をご用意いたしましょうか」
「それともみなさま賭場へ行かれますか?」
矢古姐さんの「賭場」という言葉を聞いて夏角が身を乗り出した。
女、酒、甘味、かけ事、この都には誘惑が多いようだ。




