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油断大敵

俺はいま、そうとう悪い顔してるに違いないな。

子供のころ「透明人間になれたらなにをするか」そんな妄想をしたことはないか?

そう!俺は透明人間になれる夢のスキルを手に入れたのだ!!

透明人間になってまっさきにやることといったらもちろん「女湯のぞき」だな!男の夢いま叶えたりっ!


ま、夢の計画は置いといて、まずは屋敷から抜け出すことが先決だな。

男の夢はいずれたやすくかなえてみせよう!


さて、屋敷から抜け出すとはいっても、行くあてもなければ先立つものの持ち合わせもないんだ。

予備校に向かうつもりで家を出たところで召喚されちまったから、俺の荷物は参考書の入った肩掛けかばんだけしかない。

昼食代ぐらいはあるものの、この世界で日本円は使えないだろう。

クソ麻呂に一矢報いたい気持ちもあるし、ってことでここは「勇者」の定番、家探し決定だ!



座敷牢を抜けて平安調の長い廊下を忍び足で歩く。

透明化してるとはいえ足音までは消せないようで、気づかれないように慎重にそぉっと超ロングヘアの侍女の横を抜け、渡り廊下まで来た。


屋敷のこの一角は寝殿造(しんでんづくり)というのかな?京都で見学した御所の造りによく似ているように思う。

寝殿造なら広いワンフロアを障子で仕切った大小いくつもの小部屋。

という構造になっているはずだ。

さらに、その呼び名の表すとおりに真ん中あたりにでかい寝室があって、その横に宝物なんかを置く場所があったと記憶している。

俺の目指す場所は当然ながら、そのお宝の部屋だ。


廊下の黒塗りの格子が障子替わりなのか、それが上に吊り上がっていて、その下のすだれも巻き上げられてるから廊下をぐるっとめぐる小部屋の見通しはかなりいい。

角を曲がった廊下の真ん中に庭に降りる階段があって、その階段の下にあいつらがいやがった。

大広間で麻呂のわきに控えていたあの牛頭と馬頭が。


牛頭馬頭はそうだな、アニメとかで見るあのまんまの筋骨隆々の身体に、凶悪な人相の牛の頭と馬の頭がついている。

いまの俺はレベル999。

負ける気は全くしないが勝利のビジョンも全く浮かばない。

ガキの時分は別として喧嘩なんてしたことないしさ。せいぜい口喧嘩だな。

争いごとは極力避けて通りたいタイプなんだ。


牛頭馬頭のいる階段付近を避けて裏の小部屋を通り、お宝ルームを目指すことにする。

部屋のふすまや几帳を壁抜けスキルですり抜けて、「きやっ」やばい、カルタ遊びをしてた着物女に触れてしまった。

きょろきょろしてるけど、透明な俺は着物女の目にはうつらない。

息を殺して壁を抜けると、どうやらここがお目当てのお宝ルームのようだ。


並んだ箱と棚には、ど派手な布に装飾過多な楽器。

ふむ。現金を探すがみあたらないな。

この勾玉は翡翠でできてるのかな?それと水晶玉、このあたりが換金しやすいか。

適当なものつかんでかばんに詰めたんだが、だめだめなことにお宝は透明化せず宙に浮いてんだよ。

持ち物を透明化するには、一度透明化スキルを解除して再び透明化する必要があるってことか。


しょうがねぇなってんで透明化を解除して、なにげにかばんの中をちらっと確認した時、頭上でゴォって空気音を聞いたかと思うと馬頭の拳が俺の髪をかすって壁を粉砕したんだ。


「やばい!透明化だ!」俺はすかさず姿を消した。

でも遅かった。馬頭の2回目のパンチは俺の位置をすでに捕えていたんだ。

腹にすごい衝撃をうけ俺の身体は宙を飛び、柱にたたきつけられる。

さすがにレベル999。痛みはほぼ感じないが、衝撃を受けて全身の血がうねって眼球が飛び出すかのような圧をうけ視界がブレやがる。


相手のレベルも不明な状況で、やみくもな戦いは分が悪い。

牛頭が雄たけびをあげて、宝物の上に落ちた俺の身体をわしづかみにした。


「ライトニングウェブ」俺は必死になってスキルを発動させようとしたが、雷撃はおこらなかった。

そうか!ステータス表示板の【スキル】に表示させてないとスキルは使えないのか!

無制限に使えると思い込んでて油断した。

ちくしょう!なんで俺は攻撃スキルのひとつも用意してなかったんだ。

「転移ッ」間一髪、俺は転移スキルで、俺をかみ砕こうとする牛頭のあごから逃れることができた。

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