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残念な白い魔獣。

俺が異世界ファンタジーの定番で憧れているものがある。

それは、風のように走る白い魔獣の背に乗って冒険の旅に出るというヤツだ。

男の、というか幼き日にいだいた少年のロマンだよな。


その夢かなえようじゃないか!

そして、岩爺のスキルに獣化をいれてみたわけだ。



 【 名 前  】 岩爺

 【 レベル  】 156

 【 パッシブ 】 状態異常無効、物理攻撃無効、魔法攻撃無効

 【 パッシブ 】 自動回復、蘇生、移動速度UP、記憶術、マッピング

 【 種族スキル】 念話、呼び寄せ

 【 スキル  】 伸縮自在、壁抜け、結界、加速

 【 スキル  】 千里眼、地獄耳

 【 スキル  】 獣化



とりあえずこんな感じだ。

字数に制限のある関係上、スキルは漢字多用となった。

これに加え、ぬりかべたちが元々もっていた重量変化のスキルと透明化もある。


さあ岩爺よ、いまこそ伝説の魔獣となり俺を冒険の世界へいざなえ!

「ヴおおおおおお」

岩爺は咆哮し白い光に包まれた。光の中から現れる巨大な獣。

輝く白い毛並みを風になびかせ偉容を誇る堂々とした姿の魔獣だ。



その魔獣を、ひとことで言い表すなら__モフモフなベッド。

うん。ベッドだな。モフモフですんごく寝心地良さそうだ。

長方形なうえに耳も尻尾もないな。

岩爺、目は点目で、耳も点だったっぽいしな。ケモ耳も点だろう。まぁおさっしだ。


「おでもー」「おでもー」「おでもー」

ぬりかベイビーたちも獣化したいというので適当に何人かのスキルに獣化をいれてやる。

まぁ枕だな。すっごくモフモフの枕。


ベィビーたちは枕化してうれしそうにぴょんぴょん跳ねている。

でも、レベルの低い個体は魔力を使いすぎかぐったり気味だった。

元々のレベルが2や最高で4だったせいでx3倍にしてもレベル6~12なんだ。

レベル156の岩爺との力量差があるのは当然かな。

しかたなくベィビーたちのスキルを削り、シンプルに必要最低限とした。


俺は、ぴょんぴょん飛び跳ねる枕とベッドを従えつつ旅支度を整えた。

今回の旅に同行するのは、岩爺たち、大角の長男と次男、それに但馬国で顔の利くという婆さんだ。

俺のいちの子分の天も連れていきたかったが姿を見せないのであきらめた。


旅支度といっても徒歩でもないし、食料と水だけ確保してあとは割とラフな感じで済ませたよ。

一応、野宿に備えての用意もするが、モフモフのベッドに枕、伸縮自在の空気より軽く柔らかいモフモフ布団と寝具に不自由はないしな。


それから岩爺と何度か結界張りの練習をした。

高速飛行でも問題ないのを確認して、いよいよ出発だ。


大角や村人の過剰な歓声に見送られ俺たち一行は天狗の里をあとにした。


「総司殿、なにやらお尻がムズムズしますな」

「空を飛ぶなど奇想天外(きそうてんがい)でござる」

同行した天狗の末裔3名は人生初の空中飛行に緊張が隠せない様子だ。


俺たちが乗っている岩爺の背中は4畳ほどはあるかな。

結界で保護しているので地上に落ちる心配はないし安定していてとても快適だ。

大角の長男と次男は、夏角(かづの)雨角うづのという名前だ。

クロは目がーで△くちだったが、二人とも目もくちもー。

まだ、ぬりかべたちに警戒心をもっているのか脇差に手をかけたままだ。


飛び立って10分ほどで俺たちは岩山の外に出た。

左手に砂漠、正面に山脈、右手に山里が見える。

目的地の但馬国は山里から点在して続く民家の流れの先にある。

1~2時間ほどかかるだろうか?


モフモフベッドの上のモフモフ枕だまりに身を沈めているとなんだか少し眠たくなってきた。

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