座敷牢にぶちこまれた。
座敷牢は時代劇に出てくるようなアレで、4畳ほどの板敷の部屋に頑丈そうな角材の格子がついている。
麻呂さまのお沙汰のあるまでここで待機なんだとさ。
あのろくでもないお貴族さまに俺の生殺与奪をにぎられてるなんて、なけなしのプライドがずたずたで泣きたくなるよ。
やつらにとって高僧でも貴族でもない俺なんて無用の長物でしかなようだし、良くて街中に放り出されるか悪くすると処分という可能性もあるな。
逆にやつらに価値を認められてご利用されちゃっても不愉快でしかないしなあ。
痛しかゆしってやつだな。
さてと、気を取り直して、ここが異世界かどうかを検証してみる。
異世界ならステータスオープンといえばステースが見られるのはお約束だよな。
「ステータスオープン」
【 名 前 】 猿渡総司
【 官 位 】 なし
出た!ステ-タス。
ほんとに出るんだなこれ。四角の半透明のフレームに文字が浮き出ている。
やはりここは異世界なんだと実感がわいてきた。
でも、表示板には名前と官位しか表示されてなくてえらくシンプルなステータスだ。
「レベルとかスキルはないのか」俺がそういうと空白だった場所に新たに文字が浮かび上がった。
【 名 前 】 猿渡総司
【 官 位 】 なし
【 レベル 】 なし
【 スキル 】 なし
おっレベルとスキルが出てきた。でも「なし」ってなんだよ。
レベルは1から始まったりしないのか?
でも、俺は生まれたての赤ちゃんではないし、これまで生きてきて経験を重ねてるのにレベル1はないだろうよ。
俺の妥当なレベルは、そうだな20はあると思いたい。
【 レベル 】 20
なんかいきなりレベル20になったわ。適当すぎるだろ、この異世界。
いや、まさか好きなようにレベル設定できちゃう仕様なのか?レベル1億もいけるのか。
【 レベル 】 999
ふはっ!盛大に吹いたわ。
なんだこれ?さすがに一億の設定は厳しかったとしても、いきなり上限いっぱいのカンストっぽいことになってないか。
チートにもほどがあるな。
こうなってくるとスキルも自由につけられちゃう気がする。
スキルは・・そうだな、今の俺に必要なのは、この窮地を脱するための壁抜けの術か。
いや、それじゃ忍者みたいだな。和風の世界に感化されすぎだ。
脱出用スキルといえば、瞬間移動、いや空間移動、転移。透明化、ステルス、なんてのも使えそうだな。
【 スキル 】 壁抜けの術、瞬間移動、空間移動、転移、透明化、ステ
俺が口にしたスキル全部でましたね!
こんなにあっけなくスキル取得できるとはえらく気前がいいな。
それがホントに使えるのかは疑わしい限りだが。
「透明化」試しに使ってみると、消えたわ。まじかよ。
肉体の感触があるのに透明化してるのはとても奇妙な気分だ。
異世界に召喚されて、特別なスキルがもらえてないのを嘆いていた俺だけど、もしかすると「リアルをゲーム化」これが俺のユニークスキルなのかもしれないな。
俺って小心者でさ、この状況に心臓バクバクして、看守もいないこの座敷牢で人目を警戒して挙動不審になってやがるんだ。
俺が記憶してるゲームスキル。
それを全部使えるとしたら相当ヤバイことになりそうだ。
とくに麻呂のような権力者に知られたら、一生拘束されて軍事利用される悲惨な未来しかみえないわ。
いつだれがくるかわからないしな、はやくここを出て落ち着いて検証できる場所に移動するとしよう。
俺は壁抜けの術を使って座敷牢を抜け出すことにした。




