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偽王

果敢に白髪頭のじーさんに立ち向かう、俺の子分、天(推定5歳児)。そして守られる俺。

緊迫の場面だぜ!


天は、じーさんの威嚇に臆することなく「てやぁ」と駆け出す。

そしてじーさんに剣ならぬ、そのへんで拾った木の棒をたたきつける。

軽く避けるじーさん。

体勢を崩しながらも、じーさんの横っ腹めがけて水平に棒を薙ぐ天。

天の攻撃は当たらない。

が、重心を戻し、今度はしっかり棒を握り、深く踏み込んでじーさんの顔面を狙う。


じーさんは手に持っていた石を親指で素早く飛ばし棒に当てはじきとばす。

木の棒は宙を飛び、天の手から離れる。

しかしさすがに子天狗、すかさず跳躍し空中で棒をつかむとじーさんの頭をめがけて棒をふりおろす。


そんな調子で、じーさんに軽くいなされながらも攻撃の手を休めない天。


天狗の里の住民たちのステータスは、いまは全員の表示がオープンとなって目視できる状態なんだ。

閉じていても有効だが表示されたままのほうが管理が楽なんでそうしている。


じーさんと剣劇を繰り広げてる天のステータスをみていると、レベルがガンガン上がっていく。

さっきまで21だったのが24、そしていま27と、3つずつレベルUPしてるんだ。

敵を倒さずとも、経験がレベルをあげていくようだ。

そして、実際のレベルx3倍ルールはレベルアップ時にも適応されている。

いまの天のレベルは一般の大人天狗のレベルと同等だろうな。

なりは子供でも、それなりに強い。


「偽王」と呼ばれたこのじーさん何者だろう。

ボロを着た浮浪者にしては妙に強いじゃないか。


俺は試しにエアスラッシュをじーさんめがけて打ってみた。

じーさんはこちらを見もせずにエアスラッシュを避け、逆に石つぶてを飛ばしてきた。

当然、リフレクトで跳ね返されるが、返ってきた石をじーさんは居合抜きで真っ二つに切った。

じーさん帯刀してたんだな。


じーさんの動きは俊敏だった。

あっという間に間合いを詰められ一刀両断される俺。だがリフレクト。

じーさんは反射を予想してか、すでに移動し俺の背後に立っていた。


「幻術使いか?」

シブく声を発したじーさんは、さきほどとはまるで雰囲気が変わり、まるで武芸の達人のようだ。

殺気も消えて自然体で俺の肩に手置く。

リフレクトは攻撃を受けなければ発動しないし、物理攻撃無効も同様だ。


肩をつかまれてあせった俺はとっさに転移をつかった。

「転移ッ」崖の上に転移。

しかし、俺の肩をつかんだじーさんを連れての転移だ。


そして、あろうことかじーさんは、俺をつかんだまま身体を横倒しにして崖下にダイブしたんだ。

「転移ッ」俺は河原にふたたび転移した。

だが、空中に転移し、2メートルほどの高さから岩にたたきつけられた。

「ぐぼっ」プロテクトあっても999でも痛てぇぇ!!

一方、じーさんは軽々と着地して無傷だ。くやしいったらないぜ。


ここはヒールと自動回復でしのぐ。

岩場に身体を横たえてぜぃぜぃしている俺を見下ろすじーさん。

「・・・・」


俺は川面に向かって「魅了」を放った。

魅了された魚が俺をめがけピチピチとはねて陸に上がる。


「・・・・」

「・・・・」

じーさんは無言で魚を拾った。


このじーさんは威嚇で投石はしても子供らに当たらないようゆるく投げてたし、天の相手は素手だった。

そんなに悪いヤツには思えない。

いきなりエアフラッシュで喧嘩を売ったのは俺のほうだしな。

魚はその非礼のお詫びだ。

じーさんは俺の詫びを受け取って矛を収めてくれたってことだ。


きのうからのハードワークと徹夜がたたったらしい。

魚を抱えて去っていくぼさぼさの白髪頭を見送りながら、俺の意識は消え、深い眠りにおちていった。

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