老人と毒と。
草むらから現れた妙な老人
「・・・・」
俺
「・・・・」
妙な白髪老人は無言で俺に小袋を差し出した。
受け取って袋を開くとサラサラの白い粉。
指にとってなめるとしょっぱい。これは塩ですね。
塩をくれた、草むらから現れた妙な老人
「・・・・」
これはどうしたものか?
もしかして魚が欲しいのか?
「お塩ありがとうございます。助かりました。お礼に魚をどうぞ」
焼けた串刺しの魚を3本ほど老人に渡す。
老人は受け取り、塩をパラリとかけてハフハフ食べる。
__急に苦しみだした。
口から泡を吹いてごろごろのたうちまわっている。
うわっなんかやばいっ。
俺はステータスを表示させてヒールスキルをかけようとした。
だが老人は、それより先に腰にさげた物入れから丸薬を取り出し、竹筒の水で飲みくだしてヒューゼィしつつ肩肘で白髪頭をささえて半身をおこした。
回復はしたようす。でも、すんごい目で俺をにらんでくる。
いやいやいや、俺に害意はないっすから。
まて、これは魚に毒があったのかも?俺は状態異常無効だから毒効かないしさ。
こんな時はアレだ「鑑定」スキル。
俺は鑑定スキルで魚を観る。
と、「イワナ/塩焼きや唐揚げで食べると美味しい」と出た。
俺、無罪確定と思ったらイワナに刺した枝が「夾竹桃/強い経口毒性をもつ」とあった。
なんかすんごいにらまれてるし。
俺が焼き魚の串に使った枝のせいで死にかけたっぽいし、おわびに魚をとってやることにした。
俺が川に向けて「魅了」を連発すると魚がピョンピョン跳ねて草地に落ちる。
そんで10匹ほどの川魚を老人に渡してやったんだ。
すんごいにらんでた目が点になってたな。
俺もたいがい魚臭くなってたんで、川で水浴びしてサッパリしようかと考えて、ちょっと思いついて「リフレッシュ」を使ってみた。
すんげぇいいな「リフレッシュ」
石鹸不使用で頭皮のカユミも取れてさっぱり。こいつはエコスキルだな。
俺は、川魚を重そうに抱えて立ち去る老人の背中に「リフレッシュ」をかけてみた。
老人はビクッとなって唖然とした表情でこっちを見た。
老人の泥で汚れた服も真っ白、まぁたぶん耳垢なんかもゴッソリ取れてスッキリだろう。
妙な老人との出会いはちょっと愉快だった。
老人が去ってから、俺は川沿いに居心地よさげなクローバーの群生をみつけ、ゴロリ大の字になった。
ステータスを表示させる。
いろいろいじってみて、ステータス板には縦10項目、横は区切りを別にして20文字入ることが分かった。
いままでの場面々々を思い出す。
防御スキルに脱出スキル、できれば使いたくないが広範囲の魔法スキルも必要かもしれない。
幻術、偽装を打ち破るスキルも欲しい。鑑定も常備したいところ。
でもまぁしかし、こうして大地に横たわって空を見あげてると俺の悩みはちっぽけだなと…思えないな。
解決すべき問題が目の前にあるんだ、せいぜい悩むさ。
俺が急に消えて、親父たちも心配してるだろう。
でも1週間、いや10日ぐらいは異世界を楽しんでもいいよな?
できれば菊理姫にもう一度…いやそれはいいか。
ご家来衆がしっかり守ってくれるだろうし、俺のこともすぐに忘れるさ。
そんなことを考えてるとまた腹が減ってきた。
塩もあるし、今度はイワナを美味しく頂こう。
そう思って焚き火を見ると、数匹残っていたイワナがすっかり消えていたんだ。
じーさんも懲りないな。毒があるっていうのに。




