信じるものは魔法を掴む
おばぁちゃん、ミミの家は煉瓦造りでしっかりとした家であった。
門を通り抜け、銀の鍵で玄関の扉を開け、家の中へ一歩踏み出せば、暖かい空気が莉衣葉とミミを包む
スマホをもう一度見た。
圏外ではない。付き合いで入ったグループLINEから大量に私の安否を確認しあっているのが分かる。
どうせ自分は話のネタでしか無いくせに。と内心思う。
やっぱりもう学校は始まっているようだった
「莉衣葉、どうしたの?」
「何でもないよ、おばぁちゃん!」
莉衣葉はグループLINEを見なかったことにしてスマートフォンから顔を上げてミミに向かって笑う。
「……」
ミミは一瞬莉衣葉の顔を見た後朗らかに笑ってこう言った。
「莉衣葉はこの魔法界に住んでみないかい?」
「…いやいやいや無理だよ!」
「…どうしてだい?」
学校では私の好きな古市先生がいるし、まだ中学生になって半年しか経っていないのに。
この白いセーラー服も、何気に気に入っているのに、
突然知らない魔法界に住めなんて自分の祖母とは言えど、気が知れなかった。
(魔法でもなんでもいいから!!!)
帰りたいとそう思ってしまったのが行けなかったのか
「へぇ、莉衣葉は好きな人がいるのかい?」
ミミはニコニコとそう、莉衣葉に言う。
「何で…!」
「顔を見ていたらわかるよ、直ぐ顔を赤くしたじゃないか
可愛いねぇ、莉衣葉は可愛い」
「もう、おばぁちゃん!」
魔法や魔術で人の心までを読むことは出来ない。
人を操るような術はあるが、その術が成功したことは少ない。
だから、ミミは莉衣葉の赤面した顔を見て、好きな人がいると言ったのである。
ミミは感情がよく顔に出るということは人間らしく、かつ魔女に
少し向いていないのかもしれないと思った。
100年ぶりに繋がった人間界と魔法界。
こうなれば、孫にはきちんと言わなければならない。
莉衣葉の祖母、ミミ…ミミ・アレクサンドラ・クラスニキは莉衣葉に言った。
「莉衣葉、あんたは魔法を信じるかい?」
「ま、ほう、…」
「よくわからないけど魔法はあると思う!」
ハリーポッターみたいに、想像の魔法世界のお話を見るのが莉衣葉はとても好きだった。
幼い頃、魔法に憧れた。その時、魔法は既に莉衣葉の側に息づいていたのだ。
「…私は魔法を信じる!魔法を使ってみたい!」
途端、莉衣葉の周りに突如として炎が巻き起こる、決して大きくはない炎だが、その炎は暫くグルグルと莉衣葉の周りを漂った後、花火のようにパァンと爆発し、消えた。
それは魔法の力があることを指し示す、確固たる証拠であった。
「"魔法を掴んだ"ね、莉衣葉」
「"魔法を掴む"??」
「今どきの形式的なやり方じゃなくなんの工程も踏まずに""感覚だけで"魔法を掴む"のはなかなか難しいんだよ」
形式化された魔法のやり方は魔法を展開するに当たって何らかの補助機器を必要とする。
補助機器も無しで工程も踏まずに魔法を発動できるのは体内に魔法を発動する魔法回路があるという事だ。
―即ち、莉衣葉には魔法がある。
「莉衣葉、この散歩に行かないかい?」
「魔法界を案内してあげると言っただろう?」
ミミはそう、莉衣葉に言った
「うん!」
莉衣葉とミミは家を出た
魔法界への一歩と彼女の世界を広げるために