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リズエッタのチート飯  作者: 10期
スローライフと少女
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10 ダンジョン

 



 結局スヴェンの頭痛の原因など分からないまま、私とスヴェンは南の街グルムンドへと向かっている。


 荷台には大量の干し肉とドライフルーツ、前回より大きめの麻袋に入れられた塩と砂糖、数本の酒がつみこんである。

 この全部が売れれば前回など比にならないぐらい稼げるだろう。


「よかったのか?アルノー置いてきて」


「この前アルノーはヒエムス行ったもん。次は私だもん」


 今ここに居るのはスヴェンと私だけだがアルノーも大きな街やダンジョンに行ってみたいと騒ぎたてた。

 魔導書と呼ばれるものを買ってこれたら買ってくる事と、前回は私が留守番だったのだから次は私の番だと言い張れば渋々アルノーは折れ、祖父と一緒にベーコン作りをしてもらっている。

 勿論祖父は祖父で、まだ街に行くには早いのではないかダンジョンは危険だと騒ぐに騒いだが、ご飯を作るのやめようか? の一言で簡単におちてくれた。


 きっと帰る頃にはベーコンは作り終えているだろうけれど、下手したら二人に食べられる可能性も捨て切れない。


「そういえば最初にダンジョンに向かうんだっけ?」


「そうだ。グルムンドよりも近いし行きと帰りで売れば売れ残る量も少ないだろう?」


 確かにその方が売れ残り品を作る可能性も少ないし、スヴェンもスヴェンで色々考えているようだ。


 最初に向かうダンジョンにはザイデシュピネという蜘蛛が住み着いているダンジョンで、その蜘蛛が吐く糸は頑丈で美しく、貴族や騎士、お金に余裕のある冒険者たちの衣類になる代物らしい。

 自分で着る事のできない冒険者でも糸を売るだけでそこそこ良い値段になるようで、ダンジョンには何時も何組かのパーティーがいることが殆どだ。

 しかも上層、下層によって蜘蛛の吐く糸の色や丈夫さも変わり、駆け出し冒険者も上級者冒険者もいる。

 ジャーキーを大量に買われるのも困るが、少量だけということもなくなりそうだ。



 馬車に乗ること一日半。

 スヴェンの着いたぞとの声で目を覚ますとそこは何の変哲もないただの森で、ここがダンジョンなのかと問いかければある一方向をスヴェンは指さした。

 そこにはひと際大きな岩と、そこに集まるように二十人ばかりの人集りが出来ている。


「彼処から中に入るんだ」


 そう言われよく眼を凝らしてみればその大岩には人が通れる程度の穴が空いているのがわかる。

 私の予想してたダンジョンとは違い、地面の下にしかないのが普通のようだ。


 ダンジョンの入り口から少し離れた場所に馬車を止め荷台から荷物を降ろし、販売の準備を二人で始める。とは言ってもちゃんとお釣りがあるかとかドライフルーツをどうやって売るかとか、そんな単純な事だ。


 ちなみにドライフルーツは麻袋が用意できなかった為、購入者が持っている袋に一定量入れる事にした。どうしてもぴったり同じ量にはならないが、そこは勘弁してもらうしかあるまい。


 そろそろ販売を始めようと辺りを見渡すと冒険者達もチラチラとこちらを伺っていて、その中の数人が此方へと向かってきた。


「おいあんた、この前売りにきた奴だよな?」


 無精髭を生やしたおっさんはスヴェンに詰め寄り、その途端何ともいえない臭いが私の鼻腔をかすめた。


 ダンジョンに潜るというくらいだ。数週間は潜ったりするのだろう。その結果身体も髪も汗臭くなるのは仕方がないが、ダンジョンの外にいるならもう少し気を使っても良いのではないか?


「あんたが売ってた干し肉、あるだけ買いたいんだが」


 厳つい顔をした筋肉マンはどうやらうちのジャーキーが欲しいらしいが、前回と違い今回は二百束ある。それをスヴェンが伝えると男は驚き、そんなに買えるわけないだろうと叫んだ。


「じゃあ何束買うんだ?」


「……十束くれ」


 そりゃ前回十束しかなかったし、今回もそのくらいだと思ってても仕方がない。

 男が大銅貨五枚をスヴェンに渡したことを確認し、私はジャーキーを彼に渡す。そこでようやく私の存在に気づいたらしく怪訝な顔をされた。


「あんたの子供か?」


「いや、街に連れてってやってくれって親に頼まれてな」


 ここで私が生産者とバレてもまずいが嘘で親子だと言っても色々まずい。

 後先考えず嘘をつくとしても守れない設定を作るべきではないということなのだろう。


 ありがとよと私達に礼を言い仲間の元に戻る男を周りの人間は確認し、その後わらわらと荷台の周りに集まってくる。

 どうやら男が全部買うという事を知っていて買えないと思っていたのだろう。


 数はあるからと集まる人達を順番に並ばせ、私はその待ち時間にドライフルーツの売り込みをする事にした。

 狙うのはやはり女性。甘いものには目がないはずだ。


「お姉さん。これ、味見です。どうぞ!」


 気に入ったら買って下さいねと笑いかけ、私より大きな手にのせる。彼女達は有難うと私に言い、それを口にした後躊躇わずスヴェンの元へ向かった。


 どこの世界でも女性は甘いものが好きと実証されたわけだが中にはスウィーツ男子という人もいるわけで、勿論匂いのきつい男性諸君へも試食は配る。


 フラフラとドライフルーツの試食を配り歩いていると、一組のパーティーに目が止まった。


 年齢は私より年上の十二、三歳程度の四人のパーティーだ。

 服も装備も他のパーティーよりも変なところに傷や汚れが付いているし、戦闘には慣れていないのだろう。

 そのパーティーにおひとつどうぞと笑いかければ困ったように四人は顔を合わせ、買うことが出来ないから貰えないと少し寂しそうに答えた。


「これは試食。別に買わなくても良いやつだよー?」


 そう言い無理やり少年の口の中に放り投げた。私の行動に驚くも口の中のフルーツを堪能しふにゃりと笑う。それを見た他の三人は狡いぞと騒ぎ立てた。


「良いの持ってくるからそこ動かないでねー!」


 さすがに四人が満足するほどの売り物を試食させるわけにはいかないので私は馬車に一旦戻り、忙しそうに働くスヴェンをよそに荷車の中から一つの瓶と硬い黒パンを取り出す。

 ナイフで黒パンを四当分に切り分け麻袋に放り込み、スプーンと瓶を手に彼らの元へと戻った。


「これね! まだ売るか迷ってるやつ! たべてみて!」


 黒パンを四人に渡し、その上に昨日作った林檎ジャムをのせていく。

 ほのかに香る甘い匂いに四人は顔を綻ばせ、召し上がれという前にあっという間に食べ終えてしまった。


「どう? どう? 美味し?」


 その言葉に一人の少年はウルウルと瞳に涙をため、もう一人は唖然と空を仰ぎ、他の二人はぽかんとした顔で私をみつめる。


「ジャムは価格的に高くなっちゃうかもだけど、瓶を持参してもらうか返してもらえれば少し安くできるかなって思ってるんだけど、どう思う? ……ってスヴェンが言ってた!」


 あたかもスヴェンが聞いてこいって言ってましたよという感じで言葉を続ければ買いたいと元気な声が上がる。

 瓶の大きさで値段かわる? とか、瓶なしだとどのくらいの値段? だとかまだまだ決めかねていた内容を聞かれ、スヴェンにいっておくから今度スヴェンが来た時に聞いてくれと言っておいた。


 辛気くさかった顔がジャム一つでこうも変わるとは、食とは素晴らしい文化だ!


「これ、意見聞かせてくれたお礼にあげる!」


 林檎ジャムが入った瓶を少年に無理矢理渡しニッコリと笑えば、もらって良いのと不安そうに彼らは笑う。だから私は次は中身だけ買ってねとさらに笑い返した。



 その後彼らは私に手を振りながらダンジョンの中へ入っていき、私は私で販売を終えそうなスヴェンの元へと戻り、小声でジャムも売り出そうと販売提案をしたのだ。




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