何とも思ってなかった筈なのに
初めて出逢ったのは、高校の入学式。お互いまだ15歳だったね。
同じクラスで、たまたま私の友人が貴方の友人と仲良くなって。
何時の間にか、友人になってた。
「あれ、君も同じ部?」
「ん」
「そっか、よろしくね」
「ん」
寡黙で、頭が良くて、いつも成績上位の君。
運動はあまり得意じゃないけど、穏やかで優しい人。
仲間うちで二人だけ同じ部活になって、更に仲良くなった。
大事な異性の友人だと、私はずっと思ってた。…あの時までは。
もしかしたらと思ったのは、高三の春。
確信をもってしまったのは、高三の夏。
彼に聞く決心がついたのは、高三の秋。
正直、恋愛感情なんて無かった。
大事な友人だと思ってはいたけれど、恋人として見た事なんて一度も無かった。
それでも。
卑怯だと思ったけど、彼が離れていくのは嫌だった。
高三の秋。
君と二人きり、部室の中。
ずっと気になっていた事を、聞いた。
「ねぇ。思い上がりならごめん、でも、どうしても気になる事があるの」
「ん?」
「君、私の事、好き?」
「……ん」
「君の事、恋愛対象として見た事、今まで一度も無かったんだ、ごめん。でも、もしそれでもよければ、付き合ってみる?」
彼が普段見せない程に驚いた顔で。
「ん」
嬉しそうに、頷いた。
あれから、今年で20年。
ほんっとうにほんっとうに色々あったけど、今も傍にいてくれる君。
子宝には恵まれてないけど、このまま二人でもいいかな、って最近は思い始めてる。
「ねぇ」
「ん?」
「幸せだよ、ありがとう。……愛してる」
「ん、……俺も、愛してる」
何とも思ってなかった相手だった。
本当に、ただの友人だった筈なのに。
今は、こんなに好きで、こんなに愛おしくて。
こんなにも、……幸せ。