表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

プロローグ 因縁

よろしくお願いします。

「アリス! 俺と結婚してくれ!」


 リンは叫ぶと同時に魔刀を振り抜いた。三連の炎の弾が発生し、空気を焦がしながら私に迫る。


「お断りします!」


 私は槍を構え、素早く突きを繰り出した。炎の弾が弾け飛び、じゅわりと槍が纏っていた水の膜が蒸発する。

 相変わらずインチキみたいな魔力量。

 水と炎。

 相性は私の方が有利なのに、彼の火力が強すぎて相殺するのがやっとだった。


 正直リンと戦うのは怖い。体が震える。

 でも絶対に譲れない。

 背後にある森を守るためなら、誰だろうと容赦はしない。


 それが例え、かつて愛した男であっても。


「どうして!? 前世ではあんなにラブラブだっただろ!」


「三百年も昔の話を持ち出さないで下さい! 未練がましいです! いつまで彼氏面するつもりですか?」


「俺は別れたつもりないんだよ! 山田くんと田中さんだって今世で再会して結婚したじゃん! 俺たちも後に続こう!」


「彼らは人間に生まれ変わったからいいんです!」


「人の形してるんだから問題ないだろ!」


「大アリです! それに今の私は、あなたよりも精霊王ラビエス様の方が大切なんですから!」


 私のとどめの言葉にリンは一歩後ずさる。その顔は悲壮感でいっぱいだ。わざとらしい。


「愛しいアリス、どうしてあんな枯れかけのじじいなんかに……」


「ラビエス様を侮辱しないで!」


 私が槍を突き出すと、ふらつきながらも片手で応戦するリン。

 はるか昔、真面目な剣道少年だっただけあって刀さばきは一流だ。力任せに振り回すだけの他の魔人とは全然違う。


「分かった。今日こそお前の目を覚まさせてやる。俺の無限の愛で!」


「気持ち悪いです! 近寄らないで!」


 それから私とリンは水しぶきと火花を飛ばし合い、槍と刀で競り合い、霊力と魔力でせめぎ合った。

 二人の間に入れる者はいない。近づくことすらできない。

 光が尾を引き、空を裂く。

 目にも止まらぬ猛攻と目も当てられぬ罵倒が続く。


 周囲の者たちは精霊も魔族も揃ってため息を吐いた。

 いつものことだ。

 

 飽きることなく続く精霊と魔族の戦争。

 

 これは、その最前線での出来事である。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ