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【討伐者】  作者: 夢暮 求
【-第四部-】
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【プロローグ 01】


 この世界に、平等という言葉は存在しない。人民の人民による人民のための政治。それを唱えた政治家が生きていたとして、民衆にそう訴えたところで、きっと誰も共感などしないのだ。


 生を受けてしまった以上、全ての人間が幸福にはなれはしない。誰かは必ず不幸になる。


 絶対的な地位、優位的な地位、そして下等と侮蔑される地位。上の者は下の者を虐げる。下の者が上の者に歯向かうことは絶対にできない。


 そういう風にできている。


 男は酒を飲む。隣でいつ殴られるかも分からずに、眠りに落ちている少年を前にして、ただひたすら酒を飲む。


 子供に罪は無いなどと愚かなことを口走る者が居る。将来を担う有望な若者を罪に処するのは間違いであるなどと、無知なことを口走る者が居る。


 そんな道徳的な言葉など、この世ではお笑い(ぐさ)である。


 なにせ、その未来ある有望な若者たちが変質の力を持っていなければ、そのほとんどの命は捨て駒となる。

 子供であったならば、使い道が無いと放り出され、あとは乞食(こじき)か盗人の真似事をするだけだ。そうして、有害であると決められて、子供は死んで行く。


 この世界ではそれが常識だ。


 処刑だって行われた。西欧の魔女裁判の再現の如く、少年少女は死刑に処されたこともある。


 今更、道徳など語れる者は誰一人として居ない。


 そして、だからこそ誰も子供を助けない。


 もしも、子供に手を差し伸べるような馬鹿が居たならば、そいつはただネジがぶっ飛んでいるイカれた人間だ。生殺与奪の全てを握られた子供は、一体どのような気持ちでその後の人生を全うするというのだろうか。


 少なくとも、男がこれから酒に酔い潰れて暴れ回り、傷付けるであろう少年に果たして未来を担うだけの力はあるのだろうか。


 男はただただ考える。


 子供は人身売買の対象にもなる。幼ければ幼いほど臓器は澄み切っており、またその体は気色の悪い連中の玩具にされる。そういった子供たちに果たして、有望な未来など存在し得るのだろうか。


 有望な若者が罪を背負うことのどこが悪いというのだ。十字架を背負って歩いたキリストは有望な若者だったのではないのか。


 子供に罪を与えずして、なにが道徳だというのか。少年少女が与えた痛みに該当するだけの苦痛を与えて初めて、まずこの世界の年齢による平等は成されるのではないのか。


 男はフラりと立ち上がり、拳を作り、少年に向かって振り下ろす。

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