enter4>>奇憶
※加筆、修正を加えました
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「なんだ……コレ…」
飛び出していった少女にやっと追い付いたと、きっていた息を、
止めた。
「……ぎィ、ぁ゛ィィッ…」
目に入ってきたのは、[物体]。それは、紛れもなく[物体]と称するのが正しいと思われる[人型の物体]。
紅い塊や肉片で装飾された[物体]は蠢き、僕達に頭部と思しき部位を向けていた。鼻を潰されるような、…とりあえず、腐臭がすごい。
「……コレ…は…」
“それ”は、僕達に手を向ける。[大好き]な[親]に逢えた[喜び]を堪えきれない[子供]のように。逢いたかった、やっと逢えた、という
感動の再会────────……
それは、
それはまるで洋画で観たゾンビのように、そして
嗚呼、“それ“は──────────……
僕は[思い出そう]と記憶を巡らせた。
「…い゛っ……」
[思い出そう]としても、頭痛が邪魔をする。頭痛が酷くなる度、視界に砂嵐が起きる。吐き気が催され、嗚咽で喉が詰まり息が、出来なくなる。
「な………だ…これ…」
天地が逆転する。吐き気が加速する。アクセルを踏んだ体内が胃液を逆流させ、気管と喉が詰まる。
「………お、…れは…」
……………………お、れ?
おれ、って…誰だ…っけ……………
ぼく、…は……
ぼく?………僕って誰………………
僕は、ぼく、だろ……?
え?ああ、……
だって、
俺は────────…………………………………
「……ぁ゛あああッ…!!」
「……─────落ち着いて、大丈夫、大丈夫…」
ひんやりとした掌が僕の両目を押さえ込み、視界の歪みが消える。暗転した視界が不安定になった脳内ごと抱きしめる。ひんやり、ひんやりと冷たい。
「…落ち着いて……[今はまだ ]、………」
少女の澄んだ声。
その声が脳内に、ゆっくりとゆっくりと満ちていく。
「……っは………はぁッ…」
僕は思い出したように息を吸う。新しい酸素は、硫黄臭がした。自分を思い出した。
そうだった…
[思い出しちゃいけない]んだ。
[そういうふうになってる]んだよな。
[俺]は。
横を向いて、少女を見る。
途端、心臓が波打った。全て否定された気がした。
「…………可哀相に」
少女は心配の表情ではなく、悲哀の表情を僕に向けていた。
心が金縛りにあったように、青い絵の具を塗りたくったように、何も考えられなくなった。無を通してきた彼女が、初めて人間らしい所を見せた瞬間だったかもしれない。
全身の毛穴から大量に汗が噴き出すのが分かった。少女は、僕の目を見詰めながら言った。
「………………分からない…」
「え…?」
少女は切なげで、淋しさを感じているようだった。
それは、心配する親のように。
そして、両親の帰りをずっと待つ子供のように……
「でも…知ることは赦されない…………この先、何があっても……赦されることは……、ない…………」
そして、少女はそっと胸に手を置いた。表情が苦しそうに歪む。目は無感情と何かを宿しながら視線をさ迷わせている。
「……私は」
「私は、貴方を何としても、何に代えても護らなければ……ならない。…[最期]、どうなるのかを知っていながら…」
「…………」
僕はぼうっと、彼女を見つめた。その姿は幼い少女そのものだった。
「私は、貴方を護り……貴方の身代わりになる」
…少女の瞳は、少し辛そうに見えた。…僕より少し、幼いその少女は…。 これは、おかしいかもしれない。間違っているのかもしれない。だけど…
………だけど。
「………一緒に、戦おうよ……」
例え、その道が正しくなくとも
「……一人が全てを背負い込む必要はないんじゃないのか……意思が、恐怖心が……君にもない訳じゃないんだろ…?」
決められた道があるなら、
「……………辛いじゃないか……」
僕は、破壊しながら、道なりに進もう。
僕は、『ぼく』を。
「……私…………」
少女の真っ直ぐに僕を見つめる目は、先程まで見えなかった色が見え始めた。涙が滲み始める。
「…僕だって自分を知らない………運命共同体だろ………?なんて……」
「………私も」
少女はじっと僕を見つめながら聞いた。
「…[あなたと]…いたい…」
うっわ、美少女…やっべ、睫毛なっっっっが!肌白い!……く、くちぷるぷる……!
顔が赤くなるのが分かる。
格好付けといて、赤面て乙女か…!
さっきまで考えて口に出していた言葉が、突然恥ずかしくなった。厨ニに成り上がった……
視線をずらし、躊躇ってから答えた。
「い、いやぁさ、個人的情報は非公開にしておくわってことね!ミステリアスな方が、読者受けが良いだろ?…なんてはははっ!!!!」
少女は暫く僕を見つめていた。機械の如く、思い出したようにしか瞬きはしない。
しかし、先程までとは違い何度も繰り返し瞬きをしている。
すると突然、瞬きを止め、
「……あなたは、…[誰なの]?」
「……っ……へ……?」
喉が急速に渇く。冷や汗で体中がべたつく。嫌な感覚が身体を覆う。表情が変わる。眼が泳ぐ。
全身が嘘をついているようだった。
そして、
無表情で無感情でそして無垢な少女は、わからない程少し、目を、見開いた。
error7>>ある日の法螺話
「お母さん。どうしてお父さんは最近お家に帰ってくるのが遅いの?」
いつか、そんな事を母に聞いた事があった。
でも、母は微笑むだけだった。
自分が、話されて分かる程大人じゃなかったから。
それから、二年後。
母が急に弱ってきた。何故かがわからなくて、母に尋ねた。
「……あたしはね、正一さんと結ばれる運命じゃなかったの。なのに、強引に結婚したのよ?馬鹿らしいでしょ…」
母は、自分じゃないどこかを見つめながら呟く。枯れた、絞り出したような声で。
「…それで…貴方ができたのよ………あたしはねぇ…嬉しくて嬉しくて…苦しいけど、痛みに堪えて…堪えて堪えて…貴方を産んだ…でも…出産の時、正一さんは仕事だって…駆け付けてくれなかったの……正一さんはほぼ毎日毎日仕事に明け暮れて…大変なの。あたし達の為だから…」
母は過去を振り返っているように語る。
まるで自分に言い聞かせるように。
「正一さんがね、別の女と一緒にいたのを見ちゃったの…それを問い詰めても、彼は何も言わなかったわ…それから…正一さんは全く帰って来なくなった。…直ぐにわかったの…あの女の所だって…正一さんのことならなんでも分かるわ………でもそれも、あたし達の為なのよねそうなのよね」
母は、そこまで言うと無言で立ち上がり部屋にこもった。
それから自分は、1週間…何も口にできなかった。お腹が空いて空いて仕方ないのに、冷蔵庫には何もないんだ。
アパートだったから、家賃を滞納してると水道さえ通して貰えなかった。
それから1週間経った時、母がこけた頬に涙を流しながら餓死寸前の自分を抱きしめながら、何回も何回も謝って食べ物を与えてくれた。
でも信じられない事に、それが何度も続いたんだ。
母は次第に狂い始めていた。
優しかった母。いつも面白くて、元気で、綺麗だった……母さん。
ある日、母はいなくなった。
いるのは、自分に暴力を奮う、母さんの面をした化け物だけだった。
毎日母さんの帰りを待った。
そんな時に出会ったのがアイツ。
隣に住んでて、優しくて…妹みたいなのに、姉ちゃんみたいな奴。
学校でも、いつもいつも一緒にいた。アイツは熱があっても学校に来た。高熱が出ても、鼻血が止まらなくて貧血になっていても、骨折していても、顔に沢山痣があっても……
そう。アイツだって父親から虐待を受けていたんだ。
だから何も無いように振る舞って、毎日を過ごした。周りとは違う、同じような毎日を過ごした。
もう少しだけ、長く生きる為に。
でもある時から、自分が化け物から受ける暴力は次第に激しくなってきた。
大きな声で、×××××!と叫びながら、何度も何度も殴り掛かる化け物。
そして、9歳のクリスマスイヴ。
自分は朝、どうか母さんが優しかった母さんに戻りますようにと願っていた。
「あらおはよう!今日は土曜日なんだからゆっくり寝ていたらよかったのに…どうしたの?サンタさんは、いい子にしてないと …プレゼントは来ないわよ~?ふふっ」
母だった。優しかった母さんが目の前にいる。母さんが帰ってきた!
サンタさんは自分に、クリスマスプレゼントを用意してくれたんだ!
喜び一杯で両手を広げて、母に駆け寄った。
「お帰り母さん!」
そう叫んで、優しく微笑む母に飛び付いた。
ざくっ。
果物をナイフで切ったような音がした。
料理番組で、料理研究家のおばさんがにこにこ笑いながら果実を切って…
今日のお料理にはこの、グレープフルーツを細かく刻んだものを―……
…嗚呼…温かい。母さんに抱き着いたからか、温かい。
でも、じわじわと、じわじわと、漏らした時みたいに腹部に生暖かい液体が伝わる。
液体は、林檎みたいな赤色だった。
嬉しい嬉しいクリスマスプレゼントは、[苦しみから逃れる唯一の方法]だった。
サンタクロースは、ぼくにプレゼントをくれた。
もう直ぐに動かなくなる幼い9歳の脳でそう、理解した。
enter>>個人date
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追記:更新不可。解析不796twmgj546た0
考察:データがハッキングされた模様。至急、解析せよ。
以上Ⅰ