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目をさました。
うん、確かに目を[冷ま]した。
騙された、と思ったんだ。
break magicにも、ツーさんにも、テントさんにだって。
最初に思ったことはそれ。
んで、次に思ったのが、
[またか]。
よくわからないが、またか、と思った。
何だかんだ流されまくったあげく、騙されてしまったのか。
うん、ちょっと待て僕落ち着け僕。
とりあえず整理!整理しよう、整理。
えーと、何で騙されたと思うか?
はは。聞いて驚くな。
…檻に入れられていた。
明らかにペットショップで見かける、集団で動物たちが収納されている檻だ。
あいにく僕は自宅警備員歴が長いためか細いらしく、すんなりと溶け込んでいる。それに、僕と3日間共に生きたベッド&ベルトも外されている。
でも、狭い!
おかしな体勢に腕がバキッってなったらどーす…(バキッ)、あっ。
ちなみに身長は175あるぜぇい!でかいだろー?(ワイルド)
…筋肉ないけどな!こ、これからつく予定なんだよ!
で。
何で檻なんだ。
また、拘束されてんじゃん。
拘束されまくりだろ、なんでだよ。
Mに間違えられてる、とか?いやいや、確かに自宅警備員と言う名の無職だったけどさ!Mではないよ!?
だって、僕は………僕は
苛めたい側だぁ!……だぁっ!………だぁっ……!…………だぁ…!←エコー
「………なんでやねん。」
自分でツッコミをいれて、自粛。
myワールドが暴走しないように、最近(?)はちゃんと自粛という技能を手にいれた。ぱんぱかぱーん。効果音がないと、寂しいもんだな!ということで自作自演の効果音作成。
「……だから、なんでやねん」
落ち着いて、一呼吸。
落ち着いてから気がついたが、ゲージは新品同様傷一つないのに、ここの空気はなんだか臭い。
どこか分からないが、鳴き声がする。動物園で聞いたような、野性的な雄叫びも聞こえる。
あ、ここ動物園か?僕は実は、天然記念物でしたよ的なあれ?
「はぁ…」
ため息をつくしかなかった。
元々は自分が非現実的な状況に目が眩んでほいほいついていったのが悪い。
ゴキブリほいほいより楽にほいほいされた。
挙げ句の果てにはあれか?人身売買。
このちっちぇえ島国の横の寂れた島に人身売買制度、つまることの奴隷制度とやらがまだ生存したいたなんて。驚き。
まだまだこれからなんだよな、年齢的にはさ。…………なんだか、頭がふわふわしてきたな。
「……零…………zero君?」
声がした。見ると、檻の外には見知らぬおじさん(推定40才)。
「檻の外からすまないね、今外にだすからね」
おじさんは、怖がる様子もなくあっさりと鍵を開けた。
檻をでると、やはり体がバキバキとなる。やっぱり、狭いよあそこ。
謎のおじさんを見る。
疲れきったような表情、白髪混じりの髪で少し推定年齢より更けてみえる。
「私の名前は宇佐見だ、宜しく」
おじさん……基、宇佐見さんに握手を求められた。何が宜しくなのか。
とりあえず、
「……うす」
手を差し出してきたのは宇佐見さんなのに、僕が握手に応じるとびくりと体を震わせた。なんなんだ、失礼な。
しかし。
僕は、度々続く出会いや別れ、はたまた怯えられることに、動じなくなっていたようだ。
この人も、僕をzeroと呼んでいる。
ここは、WHか。つまり、宇佐見さんもWH関係者だろう。
「詳しい説明は追々話すから……」
宇佐見さんが、僕のいた檻の鍵を締めた。
隣の檻の奥に、蠢く何かがいたが薄暗くて見えない。…とくに気にも止めなかった。
立ち上がった宇佐見さんは、とくに構うことなく僕に背を向けている。
囚人服のような繋を着ている宇佐見さんが、学校の屋上とかにありそうな鉄の扉を開く。
「さぁ、付いておいで」
宇佐見さんは、疲れきったような表情で少し微笑んだ。
何も考えられない僕は、何も考えずその後に付いていく。
開いた扉の向こうはやはり薄暗く、長い廊下が続いていた。謎の鳴き声も、聞こえるなぁ。
そう思った瞬間。
「……う゛っ…!」
獣くさい。いつぞやに行ったペットショップより獣くさい。
あまりの獣くささに、吐き気すら覚えた。
「すまないね。少し、くさいだろう」
「…あっ……い、いえ…」
口を抑えつつ、少しじゃなくて大分くさいです、とは言えずに口をつぐんだ。
「……仕方がないんだ」
宇佐見さんが、背中ごしに呟いた。
僕は、何も答えなかった。よくわからなかったから。
……
それから暫く、長い廊下が続いた。
獣くさい。 あまりにも獣くさい。
なんども吐きそうになりながら、壁や天井をみて気を紛らわした。
壁は黒ずみ、古い。蜘蛛の巣すら見受けられる。
天井も天井で、唯一の光の蛍光灯がばちばちとついたり消えたりを繰り返して不気味だった。
……気持ち悪い。何も考えたくない。
「……大丈夫か?」
宇佐見さんに声をかけられ、ふと我に帰った。
いつの間にか広がった明るい空間についていたようだ。天井は高く、ガラス窓になっており、青空が見える。
壁は少し黒ずんでいるが、沢山の開けっ放しになった窓や扉からは草原が見え、開放的な空間だった。
……そして。
「……っ……ひ、人……?」
そう、沢山の人、…………が…………
外に久しぶりにでて、地獄と化した景色を見たときのあの、感覚。
脳が、理解を拒否している。
ここは、だめだ。
わかっちゃいけない。
考えるな考えるな考えるな!
「zero君は、[キメラ]……という言葉を知っているか」
「……き、っ……めら……」
……キメラ、そうだ、キメラ。
知っている。知っている。
知らないわけがない。
少し前、話題になっていたんだ。
インターネットでもテレビでも、海外で行われた[その実験]で話題は持ちきりだった。
だめだ!落ち着け!
考えるな!だめだ!考えるな!
キメラとは、同一個体内に別の遺伝情報を持つ細胞が入り混じっていることだ。
植物では成功、この国でも数々の実験が繰り返されている。
そう、キメラだ。実験だ。
…違う!理解するな!何も考えてはいけない!
キメラ……
そうだ、そうなんだよ。
でも、
「私達は」
目の前の、この、光景、は
「ヒトキメラなんだ。」
間違っている
「私達は、キメラなんだよ」
間違っている
そして、僕は、
「……う゛、ぇ゛ぇぇぇッ」
吐いた。