enter14>>白川夜船
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僕の異能発覚(まだ確定ではないけど)の事件から、何と1ヶ月ほど経っていた。その間、僕はずっと眠っていたらしい。
「ツーお姉さんが来てあげましたよーぅ♪」
「あ、どもーっす」
「きゅーんもー、ツッコミ能力が足りないわね!でもツンな貴女も好、き、よ☆」
うん、無視で。
実は、僕の目か覚めたのが3日前。
目覚める前も目覚めてからも、ぴんぴんしたツーさんが自身の検査終わり毎に僕の病室へ来てくれていたようだ。
そのおかげで(?)、ツーさんのとめどない謎多き発言の回避方法を手に入れた。ツーさんと会話すると寿命が縮まる気がするから、これは大いなる遺産だな。
「zeroちゃん、りんごどーぉぞ!」
強制あーん。ぐさっ。がはごほ。下手くそに剥いたりんごが、いやに酸っぱい。どうせなら、若い女の子にしてほしかった。この人にされると、もう…うん。
だってほら、僕、全身ずっと麻酔をかけられているみたいで、動くことなんか出来ないし。(まぁ、麻酔かけられてなくても動けないんだけど…)
まぁ、許すとしよう。僕は心が寛大だからな。嫌な記憶は即削除だ。
つまるとこ、きゃつは暇なんで良い暇潰しになるという対象っつーことである。……失礼だって?聞こえなきゃいんだよ。
ちなみにトイレも尿意を感じると、いつの間にか出ている。…あ、漏らしてるわけじゃないぞ。チューブね、チューブ。
いやだわ、何てこと言わせるのっ!この子ったらもー、破廉恥な子ねぇ!
……あ゛ー。ツーさんの近所のおばさん的な口調うつった。まだ十代半ばなのに。見た目は男、中身はおばさん。……何か、新手のあだるてぃっくビデオみたいだな。
「あーにしても、いつになったらベッドから離れられるんすかねー」
脳内で一瞬にして多種多様なキャラクターを量産しつつ、僕は首だけツーさんを見た。ツーさんから答えが出土するとは思わんが。
「あー……よく、知らないわね」
一瞬、まじで一瞬だけど目が泳いでた。こんなくそ寒いのに、目は呑気に海水浴か?おい。
「そっすか」
沈黙の間をとるため、取り敢えずの返事をしておく。まぁ、どうでもいいんだけど。ここに来る前も、部屋と合体してたから。警備っつか、部屋と熟年カップルやってたから。
「あ!」
「い、うえお?」
『あ』の次はそれと相場が決まっているので、それなりの反応で返してみた。叩かれた。
「違うわよ!んもぅ、ツンツンしてるんだからぁん」
このおば(以下略)はツンツンの意味を履き違えているらしい。若者の言葉をおば(以下略)が使っても、残念ながら残忍な結果しか産出されんわ。(いん踏んでみた)
「うふふ、今日はぁ、ジェーロちゅんに」
僕は外人演歌歌手か。
「グッド☆ニュースがあるのよーぅ♪」
何故間を開けた。何故☆出した。
「グッド☆ニュースですか」
そのままツーさんの今時☆な台詞を再生してみた。逆再生したら現代に戻れる気がするよ、パトラッシュ…
「ばばばーん!」
「……………………。」
…頭沸きました?
年齢にそぐわない、若い…古い時代の若人の動きをした。ほんの、ほんのちょっとだけ!可愛いとか思ってしまったのは、男性ホルモンと若さがこの人に吸収されているからに違いない。そうだ。そうだと信じよう。
「……んで?」
結局思考回路内を試行錯誤して改造して考えた結果、催促する言葉はこれしか出てこなかった。最近(?)、ツーさんに対する敬意的なものが無くなってきている気がする。敬意も糞もあるか!ばっかもーん!(某国民的お父さん風)
ガンッ ガタガタッ
何故か、僕とベッド(略して僕)が揺れた。地震とかそういう類いの揺れではなく、何か揺らした、みたいな。
「い、っててて…」
聞き覚えのある声。
なるほど、久しぶりだ。と思うのと同時に何か青筋がひくつくようにイラッとした。
「…ってて………ハ、hello~zero~」
某二足歩行白猫のノリで僕の名前を呼ばないでくれ。さっきの揺れはこの人が犯人らしい。頭うった感じだ。それは痛い。
その犯人、というのももちろん
「…ちわ。break magic」
「おや。案外元気にしているんだねぇ、検体くん」
ベッドの下からにゅっと出没した幼女。(え、いつからいたの??)健康人間要注意、break magicである。
「人を検体呼ばわりしないでください。つか、いい加減諦めろ」
「おや、おや、おや。君は健康体だからねぇ。おら、感動の再会に涙の一つでも見せてみんしゃいな」
そっか、1ヶ月経ってんだもんな。
「僕の記憶的には3日ぶりだし。ほぼ初対面気分です。はじめまして、おばあちゃん」
「久方ぶりに会ったおばばにそれはないんじゃないかぃ?」
break magicはケットからナイフ取り出して、臓物ぐりぐりされかねないので要注意。身を引く、……ことは不可能なので取り敢えず頭だけ傾けた。
「いやーね、そんな坊やに今日はこの新薬を…」
「いりません」
「んなら、この新型注射を体験…」
「しません」
「お?んにゃら、こンの媚薬を…」
「いりませ……媚薬!?いらんに決まっとるわ!」
何を言ってんだ、このおばば!
僕の口調が反抗期真っ盛りの金髪だけど優しいヤンキーっぽくなってきちまったよ。ホームドラマ始めっか?あ?
「あら、あたしは欲しいわねぇん」
ツーさん、恍惚した目で僕と紫とピンクのネオンカラーで包装された小瓶を見比べた。怪しい怪しい。えっ。ツーさん何に使うの。ツーさんやだ怖い。
ちなみに。
媚薬という言葉を聞いてエロい発想が頭を過ったのは言うまでもない。
「んで、本題なんだけどねぇ」
「……はあ」
やっと本題に入れるのか。長い。長いよ、前置きが。この人達といると直ぐ年とりそうだ。てか、めんどくさい。
「明日zeroの異能力検査をするらしいから、タイミング的に今日しか見舞いは出来ないかと思ってね」
乾いた笑い声が轟いた。声でけぇよ、おばぁ(以下略)とくに面白いとも思わんかったわ。
「異能力、検査…っすか」
「んにゃ、異能力検査っつってもね、ただの検査さ。気にするこたぁない」
不安を何故か煽るなこの人。色々なことが4日でありすぎて、どんな検査か想像もつかない。てか想像しただけで、胃が痛い。きりきり。
「検査が始まると、私ゃ仕事をせんといかんからねぇ」
珍しく(?)仕事してるぜ発言。実際、記憶上4日間の付き合いだから珍しくなのか、どうなのかよく知らないが。
「そうですか…大変っすね」
表情でだけ心配しておく。表情でだけ。
………………取り敢えず粘土とかこねてそうだな。←本音
「おや、もうこんな時間かいな。おばばは、去るとしよう。あとは若い二人で」
それだけいうとさっさと去りやがった。
語尾に勘違いを誘発する言葉を残していくな。てか若くねぇだろ。…誰に対してかは言わないけど。
「何か言ったぁ?」
「………………すんまっせん」このおばさんは、侮れない。
この人、テレパシー的な能力あるんじゃねーの。……ほんとにありそうだからからかわないでおこう。
「それにしても暇ねぇ、zeroたん何かお話ししてぇ~?」
鼻にかけたような猫なで声でベッドにすりより、僕に誘いかける。「げ、げほっ」突然、女『っぽさ』(←ここ重要)ぶっ混んできたからびっくりしただろーが。
「ぜっ、zeroたんとかやめてください」
声が裏返った。 のどからっからだ。水分が急激に吸いとられてるんだ、この(以下略)
「どーしてぇ?いいじゃないのん、zeroたん」
「…だって子供っぽいし」
うん、確かにこれは本音だな。今度はすんなり言えた。
「そーぉ?じゃ、ダーリンとか」
「嫌です」
この人、年齢サバ読んでんじゃねえの。それか老化だ。病院行きなさい。そして診てもらいなさい、頭の中を。
「ねぇ、ダーリ」
「返事しませんよ」
「ねぇ、ダーリン」
「聞けよ」
だめだわ、この人。末期末期。取り敢えず、末期。脳ミソ改造されたんでねーの。ふはは。と暗黒物質を体内精製しておく。
この人に流されてはいけない。答えんぞ、てかもう突っ込まない。ツッコミ入れたらもう何か、…僕の何かが壊れる気がする。
「ダーリンりんっ、ツンツンしちゃってぇん」
「…」
「遊んでくれないとちゅーしちゃうわぁよん☆」
「……」
「んー……」
「それはやめて!!!!」
「あら。突っ込まないんじゃなかったの?うふふ」
「心を読むな!心をぅうぉぉぉぉ!?」
「あ、のぉ………っ」
身動き取れない僕が年齢詐欺のお姉様(突然の吐き気)に色んな意味で襲われかけていた時、天使の救いが。
あら、どなた?取り敢えず天使です。
「今日から、たっ、担当になりました、て、テントですっ!」
てんと?え、テント?ピクニックのイメージしかないわ。
「あ、えっとよろしくっす」
「ひっ!…ぁあ、ぇと…はぃ…………」
語尾がちっちゃくなった。ツーさんがこんなだと、ちゃんと話さんかいゴルァ的な展開になってたけどこのナースさんは可愛いから許す。あ?贔屓だと?…贔屓でございます。
「………………はぁ」
enter>>WH病院管理date
入院患者名:異能者No.00
性別:男性
担当看護:異能者No.1010
メモ:特になし