enter13>>右往左往
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「……き……ろ、起きろ!zero!」
はっとして、目を開ける。
全身というか、かなり頭が痛い。
…、……ツーさんは………?
break magicは…イチは大丈夫なのか??
「しっかりしろ!私だ、私は大丈夫だ」
僕を揺さ振っていたのは、イチの大きな手だった。
頭がぼうっとして働かない。体が鉛のように重く動かない。
「…異能だ」
イチの興奮を抑えたような声を聞き、虚ろな目を僕はイチの顔に向けた。
イチはまた困ったような表情をしていた。でも、泣いているような笑っているような怒っているような……
「……異能だよ、zero!」
もう一度、大きな声で、イチが言った。
「…ぇ……………?」
イチはよくわからない困った表情のまま、目線を僕から動かした。
その目線を、ゆっくりと追う。何も考えられなかった。
「…花…?」
視界が曇ってよくみえないが、僕らは花畑にいた。頭が超絶痛い。
つまり、……
つまり[シんだ]のか。
ああ、 成る程。
[シぬってこんな感じだっけ。]
「違うんだ!違うんだ、zero!我々は死んでいないんだよ!!zero!」
イチは興奮しまくって、何を言っているかわからなかったが、死んでいないということだけ理解出来たように思う。
「君の異能が……」
僕の、異能……?
「我々を助けたんだ!」
「……へ……?」
頭の痛みが引いていく。
その言葉に、壊れたコンピューター画面が直ったように視界が晴れた。
さぁっと、本当の意味で視界が晴れたのだ。
「……花畑だ…」
周り一面、花、花、花。
場所は恐らく、先程までいた場所の洞窟廊下にでたところだろう。 恐らく、という言葉が付くほど多種多様な花が咲き乱れ、部屋が覆い尽くされている。
頭痛はひたすら続き、脳が麻痺し始めた。
「…っ…ツーさんは!?」
僕がイチの腕を掴んで言うと、イチはまた微妙そうな表情をして顔を逸らした。
「イチ…………ツーさんは…??」
もう一度、ゆっくり聞いた。イチの目があからさまに泳いでいる。
怖くなった。訳のわからない現実から掛け離れた奴等が、
また、目の前の人を……
イチはとっくに、僕の心の[声]を聴いているはずなのに答えない。
全身がわなわなと震える。
「……イチ…?イチ!イチ!!イチってば―――…」
「……君、がコロした」
被せるように、隠すように、そしてぼうっとしたようにイチが呟いた。
イチの目は、先程に比べて虚ろだった。
「…今…何、て……………」
僕の全身の毛穴という毛穴から、冷や汗とか色んな液体が流れ出した。
頬骨の上を、じっとりとした汗が伝って、
落ちた。
…自分の中の何かが、ぴくりと反応した。
僕はその反応を自分の中に、檻に入った虎が目を醒ました、というイメージに捉えた。
「…嘘………で…すよ、ね…?」
声が震えている。喉がつまる。
「………嘘……で…っよね…」
カタカタと顎が音をたてる音と、誰かの荒い呼吸音が聞こえた。
「……嘘……だ………」
ふと自分が口元から涎を流しているのに気付く。
急いでそれを拭き取るが、何度拭いてもだらだらと糸をひいた涎が流れ出す。そこで、荒々しい呼吸も自分のものだと気付いた。
口が言うことを聞かない、体が自分じゃなくなったように言うことを聞かない。
「………ze、ro…」
イチが虚ろな目で、僕に言った。
「xx君、が……………」
「………コロしたんだよ」
名前、また、聞こえなかったな。
そう思った途端、滝のような涎が流れ出す口端が上に吊り上がるのがわかった。
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僕等は、
生まれながらにしてコロされていた。
私達は、
毎日どこかでシんでいた。
俺達は、
いつになったら自由になれるんだろう。
生まれてから、
何も悪いことをしていないのに
嫌われ
疎まれ
避けられ
怯えられ
コロされていた。
もし、
空が青いみたいに、
雲が白いみたいに、
僕等が自由になれたなら
もし、
空の色を大好きな色に染められたら
僕等は、
その時は、
その時には、
きっと
「きっと、ね」
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がっ!と現実に引き戻された。
頭の痛みも、全身の痛みも、逆流したみたいに引き戻された。
どこぞのノベライズ本よりリアリティのない、現実に戻ってきた。
つまり、夢から覚めた。
天才的優等生の僕の、ファンタジーさ溢れる奇妙な夢だったのだ。普段の生活からくる気疲れによる、全くの空想だったのだ。
なぜなら、起きたら病院のベッドにいたのだから。
「…夢、……夢か……」
ベッドから上半身をおこし
「…嫌な夢だった…」
ベッドから上半身を
「絶対…正夢にはしたくない。」
ベッドから
「……あー…」
………おきられなかった。
両手、両足、腰など9ヶ所にベルトのようなものでベッドにくくりつけられている。
ぼうっと、[以前にもこの様なことがあったな]と感じた。
…感じた、より身体が[覚えていた]。
あれは夢、なのか現実なのか。
皆目、検討もつかない。
つか、めんどくさい。てへぺろ。
つまり、なんだかどうでもよくなった。
………。
……………………。
…。
つまり、それだけ暇ということです。
拘束されていないのを良いことに少し痛む頭部を上げ、周りを見回した。
病院(なのか?)、一人部屋、左横茶色い棚、左奥スライドドア、ベッド、布団、金具、白、黒い革の拘束器具、頭痛、吐き気、薬の臭い、無音、窓、天井、窓から見える青白い空、白い壁、殺風景、脇にある小さな机、机の上の、
「………手紙?」
気になったが、拘束されている為に全く動けない。はーい、ざーんねーん。(謎テンション発動)
すると、突然スライドドアが開いた。
「…あ、」
入ってきたのはナースだった。
僕と目が合うと微かに声を発して、突然怯えたような震えた表情でドア横にぶら下げられていたナースコールのボタンを押した。
かたかたと震える全身を、両手で抱えるようにして振り向く。
青ざめた顔面は、涙や鼻水でぐちゃぐちゃになっている。
その表情は、完全なる恐怖の表情だった。
「……大丈夫、すか…?」
ぱさぱさした喉を通った声が、何だか可哀相なナースをびくりとさせた。
心配されるべき体勢の人物に、ナースが心配されるとはなかなか意味不明な話しだからびっくりしたのかな?(泣
ナースは硬直して、口をぱくぱくさせている。
「…ら、いりょうふ、れ、…りゅっ…」
………大丈夫だと言いたいのだろうか。
何を言ってるのか全然わからん。
もしかして、日本人顔の外人かもしれない。それならなかなか残念な日本語だ。関西弁を標準語だと思って話す外人以上に残念だ。
暫くしてスライドドアが開いた。
禿げ………ご、ごほごほ!か、加齢+数学的な脳みその使いすぎにより、髪がログアウトされている50代くらいのお医者様が入ってきた。
手には分厚いファイルと、眼鏡を持っている。
医者は、部屋に入りドアの辺りでゆっくりと眼鏡をかけた。ナース同様、近寄ろうとはしない。
そして、僕の顔をじっと見、
「…気分は……如何かな?」と静かに言った。
まず始めに、この状況について説明して欲しいところだが、医者の抑えたような声が質問の応え以外を求めない感じでめっちゃ怖い…んでとりあえず
「……完璧っす」と、応えた。
すると、医者はほっとしたようにふむと言って開いたファイルに何か書き込んだ。
ナースは、堪えきれなくなったのか口を抑えて乱暴にドアを開き出ていった。
開きっぱなしのスライドドアが、ゆっくりとしまっていく。
その間、バタバタと足音が遠ざかっていった。
スライドドアが閉まると同時に、医者は僕にゆっくりと近づいてくる。
「……あの、」
僕が声をかけると、ぴたっと医者の歩が微妙な距離で止まった。
「…うん、なんだね?」
眼鏡の奥の医者の瞳が、ぎらりと光った。怖くなって、その医者の瞳を見つめつつ首を振る。
するとまた、ふむ。と言って開いたファイルに何か書き込んだ。
「…何を書かれてるんです…か?」
僕の声は嗄れているせいか、自分らしくなかった。
「君についての調査だよ、うん」
医者は、そう言いながらゆっくりと近付いてきている。
その様子を、僕はぼうっと見ていた。
がたん。
椅子が床に擦った音ではっと我に返った。
「…君はここがどこなのか分かるかい?うん」
医者の薬品のような、金属のような臭いが風になびいて匂った。
「……わかりません」
「ここは……home、だよ。うん」
医者の表情は凍りきっていた。全く微笑が動かない。
home、という言葉が厭に耳に残る。頭痛が治まらず、がんがんと打たれるような痛さになってきた。
「…君は、homeに来たんだよ。home、だよ」
二回、二回もhomeと言った。頭が拒絶し始める。
医者は僕の反応はものともせずに、説明し始めた。嫌がる僕の脳に厭に侵入してくる。
<homeは、異能者の[最期]の教育機関である。
能力向上、又は自己守護の為の教育機関は数多く存在する。武器を放棄したこの国では必要のないように思われるが、その能力 故に人を惹き付け、その能力をほ欲する人間が多いのだ。
数多くある異能により教育基準を変える為、その系統に合わせた機関を設置してある。つまり、学校と同じ仕組みだ。
異能者だと判明された者はキャパシティ関係無く、水準分けされた系統に合わせた教育機関へと入らされる。(最初から初級を超える者が現れた場合、例外で飛び級させる。因みに今だそのような者はいないが。)
homeは教育機関ではあるが、異能の覚醒により生活に支障をきたす場合がある為生活の場としても使用できる素晴らしい機関である。>
……素晴らしいって自分で言うか。
「君は今日からhomeに入るんだ、うん」
医者の言葉にデジャヴュを感じた。
聞いた覚えすらないのに。
「…うん。君の為、なんだよ」
医者は能面のような顔面を歪ませて、呟いた。その目には涙が溜まっている。
「……homeは……だ…うん」
その医者の掠れ声は、潰れた蛙みたいな声で全く聞き取れなかった。
「聞きたいことは、何かあるかね?うん」
医者は、ふと顔色を変え再び能面のような変化のない表情になった。
「……ツーさん、どうなったんですか」
僕の問いに、医者の目が一度泳いだ。
「ツーさん、異能者No.02さんは、どうなったんですか」
もう一度、同じことを聞いた。
医者は僕の目を見たまま黙った。
『……君が、コロした』
イチの泣きそうな…よくわからない表情が、頭をよぎった。
僕、が………………
「僕、がコロしたのか」
考えていたことが、口から出ていた。医者は、ため息のような、息の吐き方をした。
何も答えず立ち上がると、ドアまでゆっくりと歩き外に出ていった。
「……僕が」
…………………………コロしたのか。
頭痛はいつの間にか治っていた。
縛られている右腕や、全身が痛かった。
でも、それよりも胸の中が痛かった。
目の奥が、じんと痛くなってきた。
涙が止めどなく溢れ始めた。
どうしてだろう、止まらない。
そうだ、なき続けよう。
僕が、[昔そうしたように]ーーーー…
「zeroちゃん!!!!!」
静まりかえって開かなかったドアが、勢い良く開いた。
「……zeroちゃん!」
その声には聞き覚えがあった。
艶かしくて妖艶。大人びていて、子供っぽい。
ああ……
「つ、……」
「zeroちゃん……!!」
その人は、駆け寄ってきて縛られた僕の頭をぎゅっと抱き締めた。温かかった。
「よかったっ…zeroちゃん…!」
ツーさんだった。本物のツーさんだった。
僕のではない温かい涙が、ボタボタと頬に落ちてきた。驚いて、ツーさんの顔を見る。顔をぐしゃぐしゃにして泣いていた。
「zeroちゃん、ありがとう…ありがとう……!」
久しぶりの涙だった気がする。
嬉しくなって、ツーさんと声をあげて泣いた。
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