enter12>>同工異曲
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テレビに映る殺人犯は馬鹿ばかりだと、誰かが言った。
確かに、私も「誰でもよかった」なんて言う犯行理由なんて、嘘臭いと思う。
僕ならもっと、理由らしい理由を創ることが出来るのに。
例えば…
「今日は空が綺麗だから殺した」
なんて素敵で、なんて嘘偽り無い、空っぽな理由なんだろう!
どんな殺人理由にだって負けるはずない。
そして俺は今日も青い空を仰いだ。
青い青い、どこまでも澄んだ青い空。
太陽が白い光となり、青を色付ける。
でもね。
アタシはね
……赤色が
赤色が、好きなんだ。
だから、
今日あなたを、赤色にします。
おやすみなさい、
大好きな、……人。
「ぐしゃりっ!!」
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僕等は笑っていた。
break magicの部屋に行くと、もくもくとした灰色の煙が溢れ出してきた。
爆発頭のbreak magicとツーさんが部屋から、飛び出してきた。
イチが「またか」と苦笑している。
僕が大丈夫かと問うと、ツーさんは大人らしくおどけてみせた。
「[こんなの心配、いらないわ]」
あれ、おかしいな…
ツーさんの声が二重に聞こえる。
break magicは、噎せながら爆笑している。
イチは、隣で苦笑しながら「ツーも怪我をしたんじゃないか?」と言う。
break magicは、それにつられて苦笑した。ツーさんは笑っている。
あ、頬の切り傷から血が垂れてる。
僕は言った。
「ツーさん…血が、でてる」
break magicがあわてふためき、チューブの薬を手に取り、ツーさんの傷口に塗り付ける。ツーさんは妖艶な感じのまま、zero君も塗るぅ?と言っている。
無視しながら傷口を見ていると、見る見るうちに傷口が消えた。
まるで魔法だなぁ。
消える、傷口。
ああ、
あああぁ………………………………
違う…………違うんだ。
………わかってる。これは、夢だ。
わかっていた。
ただの妄想だ、どうりで何かおかしいと思ったんだ。
目の前の惨状を見てみろ、僕。
瞬間、脳内に音声が戻って来た。
大量の水が一気にこぼれ落ちる音。
誰かの叫び声。
[涙]。
「…なん、で……」
掠れた声は、無惨にも広い空間と擦れる鉄の音にかき消された。
ツーさんの胸部から腹部にかけて、大きく真っ直ぐに一本の赤い線が引かれている。
「ぜ、………ろ…ちゃ……」
しわがれたツーさんの声が、遠くから聴こえた。
「にげ、…ひゅ………な、さ…ひゅぅ……」
空気の洩れる音が、割けた胸から聞こえる。肺がやられているようだ。
早くしないとツーさんは……!
「にニにに、やヤヤんンちゃぁアン!アぁあああぁソぉぼぉおオぉオォ」
ゾンビのように手をぶら下げ、ふらつきながらゆっくりと何体もの機械が近付いてくる。
「……すぅ、…ひゅぅ……ひゅ…」
ツーさんが虫の息になってきた。目も、綴じかけている。
「クキキキキキキッ」
機械達は、一斉におかしな笑い声をあげた。まだ未完成な為に腕や顔の皮がべろりと剥がれる。
再び、機械達が飛び上がり襲い掛かる。
スローモーションに、見始める。
どうしよう、ツーさんが……
ツーさんが……!!
どうしようどうしようどうしよう!!!!!
『お兄ちゃん、一緒に遊ぼ!』
幼い声に振り向くと、まだ6、7さいの少年が小さな子供用のサッカーボールを持ち 僕に屈託のない笑顔で笑いかけている。
「え……?」
呟いた自分の声も、小学生くらいの声になっている。
季節は夏。
蝉が鳴いて、太陽が照り付ける青い綺麗な空に響いている。
燃えるような暑さに、汗が流れ落ちる。
「お兄ちゃん、遊ぼうよ!」
もう一度言った。
少年は僕に対して、[お兄ちゃん]と呼んでいるようだ。
「今日もサッカーしよー!」
ニコニコと楽しそうに、汗に濡れた額を袖で拭く。
「いいよ」
口が勝手に動き、話した。
鬼ごっこのように、ただただ真夏日の中駆け回る。笑い声。
沢山転び、擦りむく。
「お兄ちゃん大丈夫ー?」
少年がパタパタと駆け寄ってくる。
砂埃がはらはらと舞う。
「大丈夫だよー!れー君」
口が、再び勝手に動き話した。
れー君、という名前に聞き覚えはなかった。
「もっかいやろ!」
僕は、紛れも無い[れー君]の元に駆け寄り再びサッカーのまね事をした。楽しかった。笑い声に、近くに住む子供達が集まり始める。
見たこともない、公園。
見たこともない、友達。
見たこともない、記憶。
見たこともない、少年……
…でも
知っている。
僕はこの光景を[知っている]。
enter>>異能者date
名前:異能者No.02
性別:女性
年齢:(自称)39
追記:頑なに自らの年齢公開を拒否。
発覚:(自称)14
追記:同上
入隊:(自称)28
追記:同上
考察:正式な年齢は公開不可。異能者の頑なな拒否により、推定年齢及び自称年齢を公開することとする。
以上。