enter10>>不承不承
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無心になって降りていたせいか、長いと思われた階段はあっさりと下りきってしまった。それにしても寒い。寒いというか、悪寒?あー、立毛筋がー。
「ふぃー、暑いねぇ。いやーババアは暑くてたまらんよ、はははは」
「確かに…地下はひんやりとした印象があったんだが。私の印象は一瞬にして、崩されたよ」
と、2人が額に汗水流しまくっているなか、場違いな僕。
流しまくっているのは、鼻水だ。寒すぎて、鼻水が出ているのにも気がつかなかった。
「…zero、何故そんなに寒そうなんだ?」
イチはそう言うと、break magicに蝋燭の明かりを向けられる。
「さ、寒くない、…すか…ここ、うぅ…」
肌が、アメリカのケーキみたいな色になってきた。
break magicがニヤリと笑う。
「zero、何故寒そうなんだ……?」
「寒すぎだからで、しっ…」
噛んだ。冷たい、つか痛い。
かわいそうな僕を温める、毛布ちゃんが恋しい。もう数日間、遠距離恋愛だ。
「…zero、その子は誰なんだい?」
break magicがやたら驚愕の表情で、僕の後ろを指指した。
振り向く。…溜息。……のちの…
「ぎゃああああああ!!」
…て、え?
「…誰もいないじゃないスか」
というオチ。
おちょくるのは、お蝶夫人の名前だけで充分だ。…ネタ古いか。てか失礼しまつた。てへっ☆ミ
だが、イチはガチで驚いた顔をしている。
「…確かイチは指導兵は初めてだったね。初めて入る者は皆、急激な体温の低下に脳がついて行かなくなるのさ。因みに慣れると暑い。」
イチは、納得し照れながらこめかみを掻いた。
「さ、行くよ。時間がなくなっちまう」
「時間があるんですか?」
この数分で、話し掛けることが簡単にできるようになってきた。
「今のうちに説明しとこうかね。この中に居られるのが一時間が限度なんだよ。まあ詳しい話は、後でするとしようかねぇ…」
意味深な感じでbreak magicは言うと、ゆっくり歩きだす。
一瞬、僕を見てふっと笑った気がしたのはほおっておこう。
廊下は、テレビで観たピラミッド内部、または洞窟のようだった。
表面がぼこぼこしたブロックで壁や床や天井は造られており、苔がそこら中に生えていた。
湿っぽい空気が時折吹く風で乾く。
そしてまた湿る。
繰り返し、風が入れ替わっていた。
どこからか、水が垂れるようなぽたぽたと音が聞こえる。
先程いた、break magicの研究室も薄暗かったが、ここはもっとだ。本気で洞窟にいるっぽい。無気味さMAX、気分悪さMAX。吐き気してきた……
この歩先に、きゅーとなクレオパトラちゃまがカーペットから出て来て「待ってたわ、ちゅっ」とか何とか言って僕を誘ってキャッキャうふふ的な妄想癖全開な展開があるならば、あしどりも軽いもんだが…
多分、僕にあるのは
よーじょな年増座敷わらしちゃまが、薬品ケースからはい出てきて「待ってたよ、ざくりっ☆」とか何とか言って僕を冥土へ誘う…屍への旅路だ。
あー…なんかこう…若い、いや若過ぎて幼児とかマジで無理があるが…、キャピキャピした今時ギャル(?)が出てくるようなフラグは無いのだろうか。
………僕の妄想癖は、いつのまにこんなにも発達してしまったのだろうか!!!
「…なぁにを考えてるんだ、馬鹿者…」
てし、と優しさ溢れるチョップが僕の嗜好を安全地帯へ引き戻してくれた。
「…あ、イチ…」
「zeroの嗜好は特に興味が無いのだが…少し自重してくれ」
イチはこめかみをかきながら、僕の頭をぽんぽんと撫でた。
『行かないで、お父さん……!』
「…へ?」「…え?」
僕とイチの声が重なった。
…今、何か…既視感が…………
どうやらイチにも見えたらしい。
「どうかしたかぃ、2人とも。」
break magicが、不思議そうに振り返り言った。
「……………いや…何でもない」
イチは、素早く僕から手を離してbreak magicの元へ早足で進んでいった。
僕も早く行か、ないと…。
………………
…は大 …へ ん から
私 達 の
…… 何…… な……い … の。 ね?あな
あ オん ………………… な よ
の……こ ロ
……………………か…………………ら… し
あ ん … も
み、 っん な
××ぢまえぇえええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!
「…ろ………ぜ……zero!」
はっと気が付くと、break magicとイチが僕の顔に蝋燭を向け心配げに見ていた。
「…どうしたんだぃ、冷や汗なんてかいて…」
break magicが困った顔をする。
「い、や…何でもないっス…マジで」
何でもないなら冷や汗はかかないだろうね、おかしいね。
…言ってから後悔。後悔先に立たずとはこのことか。
あやすようにイチに肩を叩かれ、顔を前に戻すと木で出来た扉の前にいた。奥もさっき歩いてきた方向も、振り返っても真っ暗で見えない。
「魔法…学校…?」
なんか、第一印象はそれ。
ランプが空中浮遊している。
「さながら、そんなとこさね。これも異能だよ」
なんか自慢げに幼女な胸を反らせた。ないよ、おばあちゃん。
前から、足蹴にしたい衝動にかられる。まあ足蹴にした瞬間、壊れるのはどっちかなっていう。はははは。
「…ここからはzero、一人で行くんだよ。大丈夫かい…?」
珍しい(よく知らんが)真面目な表情に、若干萎縮。
かっすかすのすりごまみたいな声で、大丈夫っすと一言。緊張丸出し、ヘタレ脱却出来ずにbreak magicから蝋燭を受け取る。
「入ったらとりあえず、階段を下りなさいな。そしたら机があるはずだからね」
「は、はい……」
僕の足はもうガクガクだった。
しかしながら、ファンタジー的な要素にドキドキしている自分もいる。
「じゃ、説明するからよく聞きなさいな」
説明を要約するとこうだ。
①入ったら階段下りる
②机にある書類に自分の本名を手書き。
③書類と一緒においてあるはずの鍵を探す。
④鍵を見つけられれば、complete!
「おっ、OKっす」
「んじゃ、説明した通りにやるんだ、いいねzero!はい、いってらっしゃい」
どんっ!と突き飛ばされ、よろけた。
あ、心の準備が……
と思っている間に、足は部屋の中に入ってしまっていた。
「こ、こ、心の準備がぁ……」
しかし、僕の足は止まらず、一歩、また一歩と順調に進む。僕は好奇心の塊だった(笑)…溜息。
階段の十段程度が壁際に沿ってあり、悪ガキとかは階段降りずに「あいきゃんふらい」とかいって捻挫、なんてことになりえない。
捻挫は痛いからやだよねー。
階段を降りきる前に、振り向く。
さっきの本棚みたいに退路が塞がれていく。break magicとイチが、何かしら話し込んでいる。
少し、心細さを感じる。喉が鳴った。…ごくり。からからになった口内で、唾液がログアウトしてしまったようだ。
「……てか、なんなんだよこの状況…」
「zero!大丈夫さ!私らはここにいるからねぇ」
「あ、は、はい!」
声が聞こえた。ちょっと安心。
階段を下りる。
階段は壁に沿って並んでいて、10数段以上あった。アイキャンフライしたい気持ちもわかる。
警戒して下りながら、部屋の様子を見やる。こんな状況だ。何があってもおかしくなさそうだし。
多少の地理がある方が良い。と、僕の好きな小説のキャラクターが言っていたから間違いない。うん。多分。
部屋の中は、やはり洞窟の中のようだ。よくある、ピラミッドの王の部屋的なアレ。階段がこちら側の壁に沿って並んでいて、下りたところ、中央に木でできた質素な机と椅子がある。使い古されているのか、ここから見てもわかる程の傷があるのが分かった。
「うー………つか、まじで一人かよー…」
困惑しながら階段を下りきると、突如ふらつきが足をすくった。
支えるものを探して手を振り回す。
「……ふ、…え?」
暖かい、何かが指先をかすめた。
指先を見つめると、
……これは夢だろうか。
「……あ…………」
あの少女立っていた。
随分と会ってなかった旧友との再会。
…その瞬間以上の懐かしさ。
「なんで……ここに……」
少女は答えない。幻のように、少し透けて見えなくもない。でも、触れられた。本物か……
「…か、体は…大丈夫?」
少女は、ゆっくりと首を傾げる。
言葉を理解できないのか……?一瞬そう感じた。
「あの、……」
「…だ……………大、丈……夫…」
確認するように、少女は呟いた。目は生まれたての赤ちゃんのように不思議そうである。相変わらずからからな僕の喉がごくりと鳴った。
彼女は、ここにいたのか。
「……腕…」
いつのまにか、呟いていた。
少女の腕は、
元通りだった。
「………な、お……した……」
ふわりと、記憶が霞む。あの時、助けてあげられなかったから……!
人間は、途端にした行動を
行動してから気付く。
少女がここにいるということ、僕のここにいる理由ことも理解出来なくても、僕はただ
彼女を抱きしめること以外頭になかった。
enter>>WH管理
場所:館内 東工場棟 一階(地下二階)、研究検査試験室
別名:入隊試験室
責任者:異能者No.222、No.02
利用:異能者及び研究員、入隊入所の試験時のみ。
追記:error
考察:error
※errorが発生しています
※copy dollの管理中枢を停止中