王子様の誤算発生
一の君は資料をみて呆然としました。
この書き手の書き記した通りであれば、呪いは解けて居てもおかしくありません。
この国を守り・愛せるものの口付けでこの王女が目覚めるのであれば、過去、不帰森に立ち入った勇者達の何れかによって、呪いが解かれていておかしくないのです。
森に立ち入った者たちはいずれもこの国を愛し、守るための力を有していたはずなのですから。
そして、家系図を調べ、突如として始まるこの国の王朝の初代王名とこの手紙の署名の主は同じ名前であることに驚きました。
この資料、見つかることを恐れ、まるで隠されるかのように書庫の奥の方にあったのです。
もしかしたら、これは真実であるのかもしれないという考えが浮かびます。
しかしながら『魔女』とは・・・
この国、いえ、この大陸ですでに『魔女』なんてものはすでにおとぎ話の中のみの存在と認識されてるためイマイチ信憑性に欠けます。
しかし、だからこそ一の君は考えます。
『まずこの国とはどこまでを指すのだろう?
死した魔女が呪いを開けた時点の国の規模の事だろうか、それとも我が国のみだろうか?
勇者たちが森に立ち入っていたのは何年前までであろうか?
国を守り、愛せるものと、守る力があり国を愛せる者との違いは何であろうか?王は国全てを見て、守る方策を決める、騎士や兵士はそれぞれ何かを守る力があり目前の者を守ることで国を守る。国を守りとは国全体を守ることのできるということだろうか?』
そして、一の君はあることにも気づきました。
『死の呪いをかけた魔女が二度目の呪いをかける前にも2人の魔女により呪いの上書きがされていた。
もしかしたら、魔女は2人の魔女の呪いに更に起きるための条件付けをしたのか?』
一の君はそれが正解な気がしました。
『しかし、魔女の力が強い物であっても、死に際に魔女2人分の呪いに勝てるような呪いを生み出すなんて、そんな強い呪いがかけられるのだろうか?
ああそうか、魔女は2人の呪いを上書きするつもりが力が足りず、2人の呪いにさらに条件を加えてしまったのだな。
そうすると姫の呪いは“16歳で100年間の眠りにつき、国を愛し、国を守る者の口付けがないと目覚めない”ということだろう。』
一の君は今読んだ話をもとに考察を進めていきます。
そして出た結論は、この書物と自分の考えた結果を王様に報告するということでした。
一の君は一番王様から遠ざかると思っていた難題が、一番王様に近い問題だったようだと思いました。
そして一の君は王様をはじめ難問を出した宰相たちに見つけた資料と考察の結果を解答しました。
しかしながら、それが正しいのかは、判りません。
そこで、王様は、一の君に調べに行くように申し付けました。
王様が、わざわざ不帰森に一の君を行かせ様と思った陰には、仮に森に本当に旧国の王女が眠っていたとしてその者を目覚めさせれば、目覚めさせた者が三国を総べる可能性のある者であると考えたからです。
それに王様の王子様は一の君の他に2人いたのも大きな原因です。
仮に一の君が帰ってこなくても二の君、三の君が戻れば問題無いと思っていました。
王様は更に一の君が王女様を目覚めさせることができた場合には王位を一の君に譲ることにしました。
王子様は、渋々不帰森へ行くこととなってしまいました。
不帰森の謎さえ解ければそれで終了だと思っていたのにまさか確認作業が有ろうとは一の君は思ってもいませんでした。
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