⬛︎⬛︎-01
どこまでも白い景色だけが広がる、不気味さと神々しさを備えたそんな空間に突然1人の男が現れる。
「なんだ…」
こんな謎の空間に突然放り込まれたのに関わらず、彼は冷静そのもの…だがこれには理由がある。
「俺は…俺は何者だ?」
落ち着け、思い出すんだ。
俺の名前は⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎…⬛︎⬛︎生まれの22歳、さっきまで親友の⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎と共に夜の繁華街で遊んでいて…
「駄目だ…思い出せない」
俺がさっきまでしていたことは覚えている、繁華街で親友と遊んでいたはずだ、だがおかしいのだ。
親友と繁華街に居たってことは分かる、でも繁華街ってなんだ!?
さっきまでいた場所なのに、知識として確かに俺の記憶の中にあるのに、それが何か思い出せない…まるで頭の中に靄がかかっているかのようだ。
それに自分の名前も、どこで育ったのか、それすらも思い出せない。
そしてなぜだろうか、この空間は異質な物のはずなのに、見たことも来たこともないはずなのに、心のどこかでここはそういう場所なんだと納得してしまう。
全てにおいて不自然、そんな空間になんの疑問も抱かない、いや抱けない…俺は一体どうなるんだ?
自分のいた場所のことも自分のことも何もかも思い出せないのに、それを心のどこかで納得している自分に吐き気を催していると、突然目の前に何かが現れた。
「またこの感覚だ…」
目の前に何かが現れた、でも俺はそれを見ることができない。
そこに何かが現れたことを認識しているはずなのに認識できない。
そしてそんな心底恐ろしいことが起きていると言うのに心は平静を保っている。
俺はもう、そう言う物なのだと考えることにした。
何故なら考えても無駄だと、何処かで認識している。
俺はそんなこと知る由も無いはずなのに、知っているのだ。
ここはただの人でしか無い俺にどうにかできるような空間では無い、そう悟った時、目の前の何かが喋り始めた。
「落ち着きなさい、人の子よ」
「落ち着いてますよ、自分でも驚くほどにね」
「だが、疑問はあるはずです、私に答えられる範囲なら答えてあげますよ」
声からして女性だろうか…いやこの空間でそんなものに意味はない、恐らくだからこの目の前にいる謎の存在は神…又はそれに通ずる者だろう。
「あなたは神ですか?」
「…えぇそうですよ、貴方がいた世界とは違う世界の女神です」
「俺がいた世界…?」
俺はもう認識できないそれを、この女神とやらは認識しているらしい。
「俺がいた世界について教えてもらうことは?」
「貴方ももう察してるはずですが、この空間に来た時点で貴方のいた世界に関する記憶は全て消えているはずです、そしてそれを思い出すことはできません、これは世界を渡る上でのルールです」
この女神がそう言った瞬間、俺は頭の中の靄が晴れていく、そんな幻想を見た。
「俺がいた世界の記憶は消えた、でも知識は消えてないのでは無いですか?」
「えぇ、その通りです」
さっきから感じていた知っているのに知らないという感覚、それは記憶が消えている影響だったらしい。
そして、知識は消えていない、だから俺は知らないことを知ってるし、どこかで納得できていたのか。
「落ち着きましたか?」
「えぇ…お陰様で」
そして、さっきこの女神がサラッと言っていたのは、世界を渡る上でのルールだったな?
つまりこの時点で俺は世界を渡っている、もしくは世界を渡る直前にいるのでは?
「その通り、記憶が消える前の貴方が承諾したのですよ」
ふむ、ナチュラルに心読んでくるのか。
じゃあ、早速教えて欲しいんだが、俺は何故世界を渡る必要があるんだ?
俺がどんな人間だったかは知らないが、親友と繁華街へ遊びに行くような、そんな普通の人間だったはずだろ?
何をどうしたら神っていう超越存在に関わるようなことが起きるんだよ。
「それは教えることができないのです」
それもルールか?
「えぇ、そうですよ」
どうせ俺の知識にあることを聞いても全部ルールに引っかかりそうだしな、本題に入ってくれて構わないぞ。
「そうですね、ではまず結論から言いますと、貴方は私が管理している世界へ向かってもらいます」
その理由は?
「言えません」
じゃあ俺が向かう世界ってのはどんな世界なんだ?
それなら教えられるはずだろ?
「勿論です、これもまたルールですから」
「まず貴方がこれから向かうことになる世界の名はラティカルア、マナという力の源が存在する世界です」
マナ…魔力、つまりは魔法もあったり?
「貴方の知識にある魔法とは少し違いますね、マナというの…いや、これに関しては説明が難しいので知識として送りますね?」
送る?
俺が首を傾げたその瞬間、頭に直接情報が流れ込んできた。
「………なるほど、これは凄い…」
マナ、それは可能性の塊、俺が行く世界のどこにでもあり、ありとあらゆる生物が使用する力の源泉。
マナはなんでもできる、だがそれを完全に使うには資質と想像力がいるため、生物が使える力はほんの僅かでしかない、そんな物だ。
例えば体に巡らせて身体能力を上げたり、マナを炎に変換、操作すれば魔法のようなことだってできる。
「理解しましたか?」
「ええ、完璧にね」
「話を戻しますが、貴方はその世界、ラティカルアに向かってもらいます」
「はい」
「ラティカルアで何をしても貴方の自由ですし、私達が干渉することはありません」
「つまり、好きにしろってことですね?」
「そうです、しかしラティカルアにはマナを操る危険な生物が多くいます、なので貴方には彼らに対抗できるよう⬛︎⬛︎を授けます」
途中の部分だけ理解できなかった、話していたはずだが俺の頭が情報を受け付けていない。
「あぁ、これは貴方達では認識できない言語ですよね…えーと、人が理解できるように言い換えると…『祝福』ですかね?」
祝福…つまり俺にとって良いことだと?
「勿論です、貴方がラティカルアを生き抜く上でとても重要な物ですよ?」
チートみたいな感じか…正直ワクワクするな。
何があったかは知らないけど、マナとかいう未知の力がある異世界に、神の祝福付きで転移できるなんて!
「あ、転移ではないですね、こちらが用意した人に宿ってもらう形になるので」
「宿る?」
「今の貴方は魂だけの存在ですから、元の体は有りませんよ?」
まじかよ…じゃあ転生ってことか…
「それが1番近いですかね?それに元の体でラティカルアへ行ったとしてもマナ使えませんよ?」
ふーん、それでいつ向かうんだ?ラティカルアへは。
「今すぐですね、この空間も長時間は維持できないので」
女神がそういうと、俺の後ろに何かが現れる。
後ろを振り返ってみると、そこには光り輝く巨大な門があった。
「それを通れば貴方はラティカルアへと向かうことになります、準備が良ければ祝福を捧げるので合図を」
「いつでも平気です」
「では、そうですね、今の貴方は名前が無いので、私から旅立ちを記念し名前と祝福を与えます」
そういや名前無かったな。
「貴方のこれからの名前はアルマスです」
アルマス…良い響きじゃないか、さすが神、最高の名前だぜ!
「アルマス、⬛︎⬛︎⬛︎!これからの貴方の旅路が良きものとなりますように!」
俺は女神の祝福の言葉を背に、門を潜り抜けた……
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男…改めアルマスが門を潜り抜けてしばらくした頃、女神の元へ黒い光が近づき話し始める。
「おい、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎お前またやってんのか?」
「えぇ、だって面白いでしょう?」
女神にさっきまでの穏やかさは無く、今は薄気味悪いオーラが女神を覆っていたり
「それにしても女神って…お前と正反対じゃ無いか」
「正反対?それは違いますね」
「何が違うって?」
「正義の正義はまた違う正義、ですから女神の対の存在である私も
また女神と言えるのですよ」
「くっくっく、ならなぜあんなものを人間に?本物女神はあんな物やらないぞ?」
「私の祝福になにか文句が?」
「いや、あれは⬛︎⬛︎だろ?邪神さんよ」
「いいえ?私なりの⬛︎⬛︎ですよ」




