33話 “師匠”とか“魔導書”とか、そういうのって燃えるよね〜〜
「ねえ、“魔法”を教える人がいないって、ちょっと寂しくない〜〜?」
ナミは雲の上でうつ伏せになり、両足を揺らしながら地上を見下ろしていた。
ギルドごとに魔法が浸透しつつあるなか、人々はまだ模索を続けていた。
「昨日は“風よ来たれ”って言ってたけど、今日は“風よ舞え”って言ってる〜〜。ま、どっちも出たけどね〜〜」
発動はしている。
でも、その精度や安定性はばらついていた。
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「ってことは〜〜、このへんで“教える人”とか“学ぶ場所”があったら、めっちゃ便利じゃない?」
ナミはにやにや笑いながら、空間に新しい観察項目を追加した。
《No.114:知識伝達構造の萌芽/初期教育者の出現》
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その夜。
ある小さな村に、“かつて火を自在に操った”と言われる老女がやってきた。
「私は“語り部の炎”……若い者たちに、火の扱いを伝えに来た」
その姿を見て、子供たちが目を輝かせた。
「教えて! 炎の出し方!」
「呪文って、本当にあるの?」
老女は穏やかにうなずき、杖を地面に突いた。
「まずは言葉を磨け。祈りは“音”ではなく、“願い”から始まる」
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ナミは空で感動に打ち震えていた。
「きた〜〜〜! “師匠ポジション”きた〜〜〜〜!!」
彼女はその場で浮かび上がり、拍手を打ちながら空を舞った。
「しかも、“呪文の型”とか教え始めてるし〜〜〜! 魔導書まだ出してないのに、もう“伝承”が始まっちゃってる〜〜!!」
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翌日。
老女が持っていた一冊のぼろぼろのノートが、子供たちの手によって書き写され始めていた。
そこには、詠唱の言葉と、そのときの“気持ち”がメモされていた。
「火よ……照らせ……」
「怒りのときは燃えすぎる。落ち着いてると、綺麗に灯る」
それは、“最初の魔導書”だった。
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「うわ〜〜、これはもう本格的だよ〜〜」
ナミはその様子を見ながら、静かにひとこと。
「……人間って、なんでこんなに“伝えたがり”で、“受け取りたがり”なんだろうね〜〜」
好奇心とロマンと、ほんの少しの尊敬と不安。
それが、“魔法”を“文化”へと変えていこうとしていた。
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