28話 ランキング制度とか、そろそろどうかな〜〜?
模擬戦の熱気が冷めやらぬまま、各地のギルドたちは新たな関心に火をつけていた。
「焔の枝のエルはやっぱり強いな……」
「いや、黒鉄のガルドの防御技も見事だった」
「なら“順位”をつけたらどうだ? 誰が一番って、知りたくないか?」
最初は冗談だった。
けれど、その冗談はすぐに記録表となり、村の掲示板に貼り出される。
《スキル競技 暫定順位》
1位:エル(焔の枝)
2位:ガルド(黒鉄の灯)
3位:ユリィ(水の輪)
「わ〜〜! やってるやってる〜〜!!」
空の上。
ナミは両手を口元に当てて大はしゃぎだった。
「こういう“順位つけてドキドキするやつ”、ほんと楽しいよね〜〜!」
彼女は空間に記録パネルを広げ、数値データを整理していく。
「成長、評価、競争、誤解、栄光、嫉妬……このへん、ぜ〜〜んぶ絡まってくるとね、物語がグイッと動き出すの〜〜!」
■
数日後。
ギルドごとの“競技会”が定期開催されるようになった。
ランキングは更新され、順位に応じて発言力や依頼の優先度が変化していく。
「この順位、正しいのか?」
「いや、他にも実力者はいる……」
反発や見直しの声も出始めていた。
「でも、見えるからこそ努力できるって話もある」
「俺は次、絶対一位になるぞ!」
人々は“順位”という数字に一喜一憂し、己を省みる鏡として利用し始めていた。
■
ナミは空からその様子を眺めながら、ふわりと寝返りを打った。
「ねぇ……数字って、やっぱり不思議だよね〜〜」
ただの記号。
けれど、それが誰かの人生を変える。
信仰の対象にも、争いの種にもなる。
「数字ひとつで、こんなに世界がぐるぐる動くなんて……ほんと、観察しがいあるわ〜〜」
ナミはにんまりと笑い、空のスクリーンにこんなメモを書き加えた。
《実験観察項目No.081:順位制度導入による社会動態への影響》
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