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25話 はじめての“スキルバトル”、ちょっとこわいけど観察したい!

スキルを手に入れた人々は、いつしかそれを“競い合う”ようになっていった。


「火起こし、今朝は三秒だったぞ」

「いやいや、俺の“熱調整”の方が応用効くって」

「力比べする? 昨日岩割ったんだ」


最初は笑いながらだった。

誰もが自分の成長を見せ合い、讃え合っていた。


けれど、そのうち


「そのスキル、本当に“ナミさま”から授かったのか?」

「お前の“光”は偽物じゃないのか?」


——そんな言葉が飛び交うようになっていた。



空の上。

ナミは少しだけ眉をひそめていた。


「ん〜〜? なんか最近、ちょっとピリピリしてる〜〜?」


観察記録のグラフには、急激に上昇する“競争欲”と“自己顕示欲”の波形が並んでいた。


「これってもしかして、“バトル”のはじまり……?」


ナミは少しだけ考えてから、

「観察チャンス!」とばかりに笑って、地上に視線を向けた。



その日の午後。

村の訓練場で、若者たちが“どちらが強いか”を試すことになった。


互いに火のスキルを持ち、制御の精度と燃焼時間を競う形式だった。


「合図を聞いたら、火を撃て」


そう言って、年長者が手を挙げる。


若者たちは構え、集中する。

手のひらに熱が集まり、空気が震える。


「——始めっ」


瞬間、空気が爆ぜた。


片方の火が暴走した。

もう片方は受け止めきれず、後方の壁に燃え移る。


「うわっ、逃げろ!」


周囲が慌てて水を汲み始め、叫び声が響く。



空の上。

ナミは目を丸くした。


「わっ、ちょ、思ってたより激しい〜〜!」


けれど彼女は逃げなかった。

視線は真剣に、その混乱の中心に向けられていた。


「でも……これ、悪くないかも」


火が鎮まり、人々が無事を確認し合う中で、

一人の少年がぽつりと口にした。


「……でも、あれはすごかった。技術としては、真似できない」


もう一人がうなずいた。

「火を操るって、こんなに複雑だったんだな」


そして、彼らは燃えた壁を見て、こう言った。


「次は“制御”を学ぼう。あれができれば……戦わずに済む」



ナミは空でくるくると回った。


「ふふ〜〜、“学習”っていいな〜〜! 刺激があって、失敗して、でもまた考える! たまらん〜〜!」


記録画面に、こう記した。


《観察項目 No.046:初のスキルバトル/事故発生/認識:制御の必要性》


ナミの好奇心はますます深まり、世界はまたひとつ進化の段階を踏んだ。

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