25話 はじめての“スキルバトル”、ちょっとこわいけど観察したい!
スキルを手に入れた人々は、いつしかそれを“競い合う”ようになっていった。
「火起こし、今朝は三秒だったぞ」
「いやいや、俺の“熱調整”の方が応用効くって」
「力比べする? 昨日岩割ったんだ」
最初は笑いながらだった。
誰もが自分の成長を見せ合い、讃え合っていた。
けれど、そのうち
「そのスキル、本当に“ナミさま”から授かったのか?」
「お前の“光”は偽物じゃないのか?」
——そんな言葉が飛び交うようになっていた。
■
空の上。
ナミは少しだけ眉をひそめていた。
「ん〜〜? なんか最近、ちょっとピリピリしてる〜〜?」
観察記録のグラフには、急激に上昇する“競争欲”と“自己顕示欲”の波形が並んでいた。
「これってもしかして、“バトル”のはじまり……?」
ナミは少しだけ考えてから、
「観察チャンス!」とばかりに笑って、地上に視線を向けた。
■
その日の午後。
村の訓練場で、若者たちが“どちらが強いか”を試すことになった。
互いに火のスキルを持ち、制御の精度と燃焼時間を競う形式だった。
「合図を聞いたら、火を撃て」
そう言って、年長者が手を挙げる。
若者たちは構え、集中する。
手のひらに熱が集まり、空気が震える。
「——始めっ」
瞬間、空気が爆ぜた。
片方の火が暴走した。
もう片方は受け止めきれず、後方の壁に燃え移る。
「うわっ、逃げろ!」
周囲が慌てて水を汲み始め、叫び声が響く。
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空の上。
ナミは目を丸くした。
「わっ、ちょ、思ってたより激しい〜〜!」
けれど彼女は逃げなかった。
視線は真剣に、その混乱の中心に向けられていた。
「でも……これ、悪くないかも」
火が鎮まり、人々が無事を確認し合う中で、
一人の少年がぽつりと口にした。
「……でも、あれはすごかった。技術としては、真似できない」
もう一人がうなずいた。
「火を操るって、こんなに複雑だったんだな」
そして、彼らは燃えた壁を見て、こう言った。
「次は“制御”を学ぼう。あれができれば……戦わずに済む」
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ナミは空でくるくると回った。
「ふふ〜〜、“学習”っていいな〜〜! 刺激があって、失敗して、でもまた考える! たまらん〜〜!」
記録画面に、こう記した。
《観察項目 No.046:初のスキルバトル/事故発生/認識:制御の必要性》
ナミの好奇心はますます深まり、世界はまたひとつ進化の段階を踏んだ。
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