表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/52

24話 神託とスキルツリーと私の実験ノート

村の祈りは、日に日に細かくなっていった。


「ナミさま、どうか今日もこの手に火起こしの祝福を」

「ナミさま、水を運ぶときだけでいいので、腰に優しき風を」

「ナミさま、できれば、昨日の続きの剣さばきを……」


空の上。

ナミは雲を枕に、ごろごろと転がっていた。


「……うふふ〜〜、ねぇこれ、ちょっと“要求”が増えてきてない? 人間って欲張り〜〜!」


でも、それが嬉しかった。


誰かが何かを望み、それに向かって祈る。

祈ることで“意味”が生まれ、意味はやがて“仕組み”になる。


「そろそろ……仕組みとして整理しないと、わたしの観察記録がごちゃごちゃするよ〜〜!」


ナミは両手をぱちんと叩く。


宙に光の線がいくつも伸び、まるで樹の枝のような構造体が空中に浮かび上がる。


「名付けて、“スキルツリー”!」


火を操る者はその枝を伸ばし、やがて“燃焼の制御”へ。

水に親しむ者は“浄化”や“浮力操作”へ。

剣を振る者は“動体視力強化”や“軌道予測”へ。


「ね〜〜〜、こういうの、超ロマンあるよね〜〜!」


ナミはそのツリー構造を眺めながら、ちょこんと枝先に座った。


「でも、どうやって人間に伝える〜〜? さすがにこの構造そのまま見せたら、混乱するよね〜〜」


彼女はしばらく考え込んだ末、指を一本立てた。


「よし、“神託”っぽく小出しにしよ!」



その夜、焚き火の前で瞑想していた若者の夢に、光の階段が現れた。


「……炎を制する者、熱を奪い、形を変える」


意味不明な言葉の羅列。

でもそれを聞いた若者は、翌朝から火を“つかむ”練習を始めた。


そして数日後、本当に“熱を逃がす”技を身につけてしまった。


「神託だ……!」

「ナミさまが“導いて”いる……」



空の上。


ナミは記録ノートを広げて、観察記録を書き込んでいた。


《ケースNo.031:神託型誘導/夢経由/反応:高/学習:良好/感情指数:満足》


「ふふふふ、観察も、干渉も、どっちも楽しすぎる〜〜!」


ナミのノートには、びっしりと“人間観察”の記録が並んでいる。


名前、反応、祈りの内容、環境、感情の起伏、行動結果。


「……うーん、でも、まだ“揺さぶり”が足りないかな〜〜」


ナミは一つのスキルツリーを指で弾いた。


「次は、“戦い”に進化させる枝、試してみよっか?」


無邪気な笑顔とともに、新たな種が生み出された。

感想・評価いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ