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21話 洞窟にて、最初の冒険者が生まれる

その洞窟は、まるで最初から“待っていた”かのようだった。


入り口には自然に崩れた石が積まれていたが、少し掘るとすぐに奥へと続く空間が現れた。


光は届かない。

けれど、かすかに風が通っていた。


「ここに……神がいる」


青年——名をエルという——は、手に持ったたいまつを掲げ、仲間たちと洞窟の奥へと進んでいった。


ナミが撒いた“可能性の種”が、この地下空間に埋められていたことを、彼らは知るよしもない。



空の上。


ナミは、彼らの進行ルートを興味津々で追いかけていた。


「うわ〜〜〜、めっちゃドキドキしてる〜〜! すご〜〜い、やっぱり“知らない”って最高の刺激だよね〜〜!」


洞窟の壁には、微かに光る鉱石。

触れると手が暖かくなる石。

そして、誰かが描いたような古い絵。


「お〜〜、ちゃんと“謎解き感”出てる〜〜! いいぞ〜〜!」


ナミは手元に記録画面を浮かべ、彼らの行動を逐一記録していた。



エルたちは、奥の小部屋にたどり着いた。


そこには、一枚の石板があった。


意味のわからない記号が並んでいたが、彼らはそれを「神の言葉」として、火を灯し、手を合わせた。


すると、天井から砂のような粒子が降り、床に何かが現れた。


それは——


「これは……剣、か?」


刃の形をしていた。

けれど、それは“金属”ではなかった。


黒曜石のような透明感。

魔力のような熱を帯びた、不思議な刀身。


「神の、武具……」


人々は息を呑んだ。



空。


ナミは爆笑していた。


「きゃ〜〜〜! 受け取った〜〜! ちゃんと“神の試練”って思ってる〜〜! わたし、ただ埋めただけなのに〜〜!」


でも、それが面白い。


受け取った意味を、彼ら自身が作っていく。


「これぞ“物語”って感じ〜〜〜♪」



その日を境に、エルは「最初の冒険者」と呼ばれるようになる。


洞窟は“神の試練”の場となり、剣は“加護の象徴”として語られ、

やがて——それがひとつの文化を生み出していくことになる。


もちろん、それすらもナミにとっては、ただの観察対象に過ぎなかった。


「次は……“報酬と危険のバランス”かな〜〜?」


彼女の気まぐれが、またひとつ、世界に物語を与えていく。

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