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20話 やっぱりこの世界、刺激が足りない


「ねぇ、やっぱりさ〜〜……ちょっとマンネリ気味じゃない?」


ナミは雲の切れ間から村々を覗き込みながら、ぷかりと浮かんでいた。 空には星が淡く瞬き、地上には焚き火の光がちらちらと灯っている。


数日前に撒いた癒しの石は、もう“神の贈り物”として定着し、 泉の周囲は“聖域”となり、人々は定期的に祈りを捧げていた。


「反応としては合格なんだけどさ〜〜。なんかこう……もう一段階、ほしいよね〜〜」


ナミの指先に、光の粒が集まっていく。 それは言葉にならないエネルギーの波。


彼女は最近、それを“可能性の種”と呼んでいる。


「この“種”を植えると、なんか起こるかもしれない〜〜ってやつ。わたし的にはかなりお気に入り〜♪」


ナミはくるくると宙で回転しながら、その種を遠くの山岳地帯へ投げた。


「今日は“境界”を揺らしてみようかな〜〜。あっち、まだ未開のままだし〜〜」



山のふもと。


その日、ひとりの若者が夢を見た。 夢の中で、石の扉が開き、輝く階段が地下へと続いていた。


目覚めた彼は、なぜか確信していた。


「山の奥に、神が眠る扉がある……」


翌日、彼は仲間たちとともに山へ向かった。


道なき斜面を進み、岩をどかし、草を焼いて、ついに古びた洞窟の入り口を見つけた。


その洞窟の壁には、過去に使われた形跡のある道具や、何かの絵が刻まれていた。


「神の居場所だ……」


誰かがそう囁いた。


こうして、世界に“最初のダンジョン”が生まれた。



空からその様子を観察していたナミは、口元を緩めた。


「やっぱりね〜〜、ちょっと揺らすだけで、世界ってすぐ面白くなる〜〜!」


彼女は満足げに浮かびながら、記録にこう刻んだ。


《第一異常反応:神域の定義変化、および信仰的探索行動の発生》


「よしよし、いい流れ〜〜。これで“冒険”って概念も育つかな〜〜?」


ナミは両腕を大きく伸ばして宙を滑り、空に向かって足を蹴り出すようにひと回転した。


「ねえねえ、次はさ、“報酬”を仕込んでみよっかな〜〜?」


洞窟の奥に何を置くか。 それは、観察者のさじ加減。


“奇跡”か、“危機”か、“謎”か。


どんなものでも、彼女の好奇心を満たす材料になる。


「やっぱりこの世界、刺激が足りないって思ってたけど、まだまだ遊べそう〜〜♪」


ナミは笑った。


彼女の視線の先で、ひとつの文明が、またひとつ息を吹き返すように動き始めていた。

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