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2話 無限のあそび

「ふわぁ〜……んー! さっきからずっと飛んでる気がするけど、飽きないねー!」



少女はくるくると回転しながら、何もない空間を気ままに漂っていた。

体をひねって浮かび、何もない方向へすーっと滑る。まるで重力のない水の中。



「およ? なんかそこ、モコモコしてない? わー、あったかい! こっちはぴりっとしてるー! おぉー、いいねいいねー!」



何かに触れるたび、彼女は無邪気に反応する。

光が走ればそれを追い、渦が巻けば飛び込んで、何かが爆ぜれば「もういっかい!」と笑って跳ねる。



「これはぷにぷに! こっちはチクチク! うーん、この違いってなんなんだろー?」



少女は首をかしげながらも、笑いが止まらなかった。

ふわふわ、キラキラ、ぴかぴか、モクモク。

この世界には言葉のない何かが、たくさんあった。

でも、彼女はそれらに名前を与えるでもなく、ただ「面白い!」と感じていた。



「どれもこれも意味わかんないけど、楽しいからいっかー!」



何かを理解しようというよりは、ただその現象に触れること、味わうことに夢中だった。

彼女はまだ“知る”という行為そのものを知らなかった。



(ねーねー、これって全部……なんなんだろ?)



その思考も、すぐに遊びに流されていく。

くるり。ぱちん。ぐにゃ。



「おー! 今のすごい音した! わたしのせいかな? だとしたら、もっとやるー!」



遊びながら、少女は世界に小さな痕跡を残していく。

光の粒を引っかいたり、煙のようなもやをつついて崩したり、ふしぎな形の“なにか”をつまんでぐにぐにしたり。

そのどれもが、かすかな変化を生み出していた。


でも、少女はそれに気づかない。

「わたしのせい」とは思っても、それが“影響”だという認識はなかった。



「ん〜〜〜〜〜、これはこれで遊びつくしたかも?」



ときおり、少女は何かを見つけては、また飽きて、次の興味へ移っていった。

その繰り返し。


けれど、あるとき。

彼女はふと立ち止まる。



「……あれ? さっきから、似たような“感じ”が多くなってるような……」



無意識のうちに、彼女が触れたもののいくつかが、同じような振る舞いをしはじめていた。

光が集まり、渦ができ、跳ねる粒子がひとつのまとまりを持ちはじめる。



「え、え、なになに? さっきはこんなんじゃなかったよね? うわー、わたしすごいことしちゃってる?」



驚きと興奮のなかで、彼女はその渦の中に飛び込んだ。

自分が何かを起こしているのかも、という実感。

それは初めての“自覚”だった。



「でも、わたしなにもしてないよ? ほんとだよ?」



けれど、世界は彼女の存在を無視できなくなっていた。


まだ名前もなく、意味もなく、

ただ“楽しい”だけで満たされていた空間が、

少しずつ、彼女の手のあとを覚え始めていた。



「……ふふっ」



少女はまたひとつ、きらきらした何かを見つけて、それに向かって飛び込んでいった。

無限のあそびは、まだまだ終わりそうになかった。



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