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12話 わたしを見てる“その目”が好き

今日もまた、青い星は静かに回っている。

だがその表面では、無数の“しゃべるかたちたち”が騒がしく動いていた。


「今日はどんな目を向けられるのかな〜〜?」


少女──ナミは雲の上から、まるで遊園地の観覧車のてっぺんから見下ろすような気分で人間たちを観察していた。


言葉、行動、集まり、喧嘩、笑い、そして祈り。


どれも同じように見えて、違う。

違うように見えて、同じ。


そして何より、彼らの“目”が違う。


「うーん、今日は怒ってる目が多いかも? 昨日はなんかぽやーっとした目が多かったのに……どういう条件の違い〜〜?」


ナミにとって、人間の“目”はとても面白い情報源だった。


ある者は火の前で涙を浮かべながら、空を見ていた。

ある者は笑いながら目を細め、友人に何かを手渡していた。


どちらの目も、ナミを見ているわけではない。

けれど、なぜかそこに“こちら側”へ届きそうな光があった。


「ねえ、それってもしかして、わたしのこと見えてる……わけないか〜〜。でも、いいの。それでも“見てる”って思ってるその目が、めっちゃおもしろいんだから」


信じるという行為。

そこに根拠はない。

だが、信じている人間たちの目は、なぜか澄んでいた。


「ねぇ、“わたし”を信じるって、どんな気分?」


問いは届かない。

でも、それでも観察はやめられなかった。



その日の夜、ナミはひとつの村で奇妙な儀式を目にした。

広場の中央に光を描き、その周りで複数人が踊る。

音、言葉、動きが同時に展開されていた。


「おおお〜〜、複合的な行動だ! 構造化されてる! なにこれ、ちゃんと設計されてる? 偶然? 記録記録〜〜〜」


そして、その全員が空を見た。

ナミのほうを。


「え、また!? やだ、もう〜〜〜、なんでそんな目で見るのさ……照れる〜〜〜!」


でも、彼女は笑っていた。

嬉しいのではない。

けれど、“観測される観察者”という構造に、純粋な好奇心が刺激されていた。


「ねぇ、もっと見て。もっと意味わかんない行動して。もっと“わたしのこと”想像して!」


その目があれば、彼女はずっと退屈しない。


観察対象でありながら、観察される。

信仰されるのではなく、“想像される存在”として存在する。


「……これが、神ってやつの正体なのかもね〜」


ナミはそのまま宙に泳ぎ、流れる雲のなかに消えていった。

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