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1話【創世】何もなかった場所に、私が生まれた

処女作となりますが、ぜひ楽しんで読んでもらっていったら幸いです


何もなかった。


時間も、空間も、光も闇すらも存在しない。

そこには「無」という概念すらなかった。


しかしその瞬間、“何か”が誕生した。


無の深淵に、熱と力が目覚めた。

それは言葉にすれば「点」だが、実際には点ですらない。

それは重力も、時間も、存在すら飲み込む、純粋な可能性の塊だった。


プランク時間——0.0000000000000000000000000000000000000000001秒。

そのとき、宇宙は産声を上げた。


一瞬の閃光。

目も、耳も、感覚すら存在しない世界に、“膨張”が走る。

それは爆発ではない。

空間そのものが、内側から破裂するように広がった。


膨張の波は、光より速く世界を満たす。

まだ星も、銀河も、元素も存在しない。

ただ、混沌とエネルギーだけが渦巻いていた。


そのカオスの中で、粒子が生まれ、結び合い、姿を得ていく。


クォークが手を取り合い、陽子や中性子が踊り出す。

熱は光をはじき返し、宇宙は濃密な霧で満ちていた。

けれどその霧の中に、微かにゆらめく不均一な鼓動があった。


それが、後に銀河となり、星となり、

そしてこれを読んでいるあなたをも作ることになる。


——すべては、無の中のささやかな揺らぎから始まったのだ。



---


この世の終わりとも思える爆発音が耳に入る。それが少女の最初の感覚だった。



「んっ…ふわぁ〜…んー?」



突然のとてつもない音によって眠りを妨げられた少女は欠伸をかきながら重い瞳をゆっくり開けた。


その少女は生まれたばかりではあるが、瞳には確かな知性を感じさせ、10代前半ほどの体躯をしていてる。髪は真っ黒な宇宙空間とは対照的な真っ白な髪を肩あたりまでなびかせていた。



「ここは…ってうわあ〜!すごーい!」



視界一面に広がった光景はまさしくカオスであった。無は裂け、光が奔り、空間が拡がる。エネルギーの奔流が世界を満たし、熱と光が渦を巻いていた。その光景は無秩序で歪んでいたが、どこか美しいとも感じ、目を奪われた。


「すごーい!すごーい!ここは一体なんなの!というか“私”は一体何なのかしらー?」


数分、もしくは数十分かもしれないが、一通り周りの光景を見渡したあと、ふと自分の存在に疑問を感じた。

私はついさっき気がついたら”ここ“に存在していたのだ。それ以前の記憶ももちろんない。だが、「生まれたい」そう願ったことを微かに記憶にある気がしなくもなくもない。


「ふふっ」


口元を手で軽く抑えながら笑みをこぼす。ついさっき生まれたばかりの赤ん坊同然の自分が哲学的問いを立ててることを冷静に考えたら、その可笑しさに思わず笑ってしまったのだ。



「ま。そんなことはどうでもいいわ。それより気になるところが周りにはたくさんあるもの!あっちにはキラキラしたものが!あっちにはメラメラ燃えているものが!心が躍るわ~」


好奇心の旺盛な少女は気が赴くままに宙をかけていった。


これが宇宙の祖であり、生命の祖である少女のはじまりである。



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