第57章 治癒術
天明は既に地面にへたり込んでいた。
今、彼は身体の全ての部分が酷く痛むことに気づいた。どうやら自分の体力も完全に限界を超えていたらしい。
混元真気は枯渇している。
渾円樁法の勁力も消え去っている。
硬気功の護体も失効している。
彼は少し瞑想して、自分の身体の状況を確認しようと思った。
今後も極道と戦い続けるなら、自分の限界を把握することは非常に重要だ。
天明は目を閉じ、残存するわずかな混元真気を巡らせ始めた。
数秒後、彼は丹田に温かい感覚を感じた。
それは混元真気がゆっくりと回復している証だ。
非常に遅いが、確実に回復している。
天明は安堵した。
少なくとも混元真気は完全に消失したわけではなく、一時的に枯渇しただけだ。
しっかり休めば回復できるはずだ。
しかし……
天明は突然、奇妙な波動を感じた。
それは……
神代の方から伝わってくる?
天明は目を開け、神代を見た。
神代は目を閉じて、呼吸を整えているようだった。
彼女の両手はまだ震えており、虎口の傷口からはまだ血が流れている。
しかし……
天明には感じられた。ある種のエネルギーが神代の元に集まっている。
それは……
梵天塔のエネルギーだ!
天明は目を見開いた。
どういうことだ?
梵天塔の報酬は……
自分に与えられるべきではないのか?
なぜ神代に?
天明が驚愕している間に、神代の身体が突然淡い光を放ち始めた。
それは穏やかな、金色の光だった。
光は神代の丹田から発せられ、徐々に全身へと広がっていく。
そして――
神代の手の傷が、癒え始めた。
虎口の裂傷がゆっくりと閉じていき、出血が止まる。
震えていた両手も、徐々に落ち着いていく。
天明は完全に呆然とした。
これは……
治療?
梵天塔の報酬は治療能力?
しかも……
なぜ神代に?
天明が疑問に思っていると、脳裏に突然梵天塔の声が響いた。
【任務完了:神代咲を守護せよ】
【報酬:初級治癒術】
【報酬対象:神代咲】
【理由:神代咲は戦闘中に「一撃必殺」を使用し、身体に巨大な負荷がかかった。治癒能力で自身を保護する必要がある】
天明は呆然とした。
何だって?
報酬が神代に?
「待て……」天明は心の中で叫んだ。「なぜ彼女に報酬が?任務を完了したのは俺だぞ!」
梵天塔は応答しなかった。
しかし天明には分かった。梵天塔の判定はこうなのだ。
神代が戦闘中に負傷したから。
彼女が「一撃必殺」を使ったから。
彼女に治療が必要だから。
だから報酬は彼女に与えられた。
「俺は……」
天明は何を言えばいいか分からなかった。
文句を言いたいが、考えてみれば理屈は通っている。
神代は確かに戦闘中に負傷した。
しかもかなりの重傷だ。
治癒能力があれば、確かに彼女にとってより有用だ。
しかし……
「俺は?」天明は心の中で問うた。「俺も怪我をしたんだぞ!混元真気も枯渇したんだぞ!」
梵天塔は依然として応答しなかった。
天明は溜息をついた。
まあいい。
少なくとも神代の傷は治った。
これも良いことだ。
その時、神代が目を開けた。
「周君……」
彼女は自分の両手を見て、目に驚きの色を浮かべた。
「私の傷……治ってる?」
「ああ」天明は頷いた。「治ったみたいだな」
「どうして?」神代は不思議そうに尋ねた。
「俺にも分からない……」天明は言った。「もしかしたら……剣道の秘技に自己治癒能力があるとか?」
彼はそう説明するしかなかった。
梵天塔の報酬だなんて言えるわけがない。
それはあまりにも奇妙すぎる。
「剣道の秘技に……自己治癒能力?」神代は疑問げに繰り返した。
「たぶんな……」天明は適当に答えた。「とにかく傷が治って良かった」
神代は自分の両手を見つめ、何かを考えているようだった。
「さっき……温かいエネルギーを感じたの……」
「身体の中から湧き出てきて……」
「そして……傷が癒えた……」
彼女は顔を上げて天明を見た。
「これって本当に剣道の秘技なの?」
「そう……だと思う……」天明は心もとなく言った。
神代はしばらく天明を見つめていたが、突然笑った。
「まあいいわ。何であれ、傷が治ったんだから」
「ありがとう、周君」
「もしあなたが助けに来てくれなかったら、私は今頃……」
彼女は言葉を続けなかった。
しかし二人とも分かっていた。
「礼を言われることじゃない」天明は言った。「俺たちは仲間だろう」
「うん」神代は頷いた。
その時、パトカーのサイレンが近づいてきた。
「警察が来たわ」神代が言った。
「ああ、状況を説明しないとな」天明は言った。
二人は顔を見合わせて微笑んだ。
今日は色々なことがあった。
死にかけもした。
しかし最終的には無事だった。
それで十分だ。
天明は立ち上がった。身体はまだ疲れているが、少なくとも動ける。
彼は手を伸ばして神代を引き上げた。
二人は倉庫を出て、警察を迎えた。
今日の戦いは、ようやく終わった。
しかし天明は知っていた。
これは始まりに過ぎない。
龍崎真一は言った。彼らはまた来ると。
しかも次は、もっと多くの人間を連れて。
もっと強くならなければ。
実力を向上させる方法を見つけなければ。
混元真気、渾円樁法、硬気功……
これらだけでは足りない。
もっと強い力が必要だ。
天明は拳を握り締めた。
次は、必ずもっと強くなる。
守りたい全ての人を守れるほど強く。
《現在の状態:功徳700 / 精神12,800 / 財産730,000円(現金) / 借金1,900,000円》
【梵天塔】【現在の階層:1階】【神代咲が報酬を獲得:初級治癒術】
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