第44章 英語の授業
放課後に起こる予定の面会について、天明はそれがどれほど危険なものになるか、まったく知らなかった。
彼にはまだ最後の授業が残っている。
朝、廃部危機のことがあって、生徒会の白鳥に公開処刑されたような気分だった天明は、かなりムカついていた。だから今日は授業を聞くのに異様なほど集中していた。
前世の少林寺の武学に比べれば、日本の高校の授業内容は簡単だと思っている。でも問題は、彼がずっと日本で教育を受けていたわけではないということだ。
彼はアメリカから転校してきたのだ。
日本に転校してきて、まったく復習せずに授業についていこうなんて、それは夢物語に等しい。
だから真面目に授業を聞かなければならない。
さっきまで道場で竹刀を振っていたのに、今は優等生みたいに真面目にノートを取っている自分が、天明にはとても奇妙に感じられた。
休み時間になると、二年B組の転校生が廃部寸前の剣道部に入部したというニュースは二年生全体に広まり、天明がトイレに行くだけでも大量の視線を集めた。
そして、クラスの秀才・山本健太は休み時間になると必ず天明の近くに来て、彼の小グループと大声で話していた。内容は全部「ああ、この前塾の模試を受けたら偏差値70だったよ。でもこの偏差値でも東大は危ないから、ランクを下げるしかないな」みたいな話だ。
そういう類の自慢話ばかり。
天明は何度か竹刀を持って山本健太の顔面に叩き込みたい衝動に駆られた。
でも考え直した。相手が学業で自分を馬鹿にしてくるなら、学業で打ち負かすべきだ。
成績が出たら、天明は山本健太より高い点数の答案用紙を竹刀に巻きつけて、山本健太の頭を思いっきり叩いてやる。
だから天明は我慢した。
今はまだ通話料金を現金化していない。明日の面会がどうなるか分からないけど、しばらくは比較的平和な時間があるはずだ。この機会に日本の学校のペースに慣れておかなければ。剣道部以外の時間は修行と借金返済に使うことになるだろうから、勉強に時間を割く余裕はあまりない。授業中に頑張るしかない。
でも、もし機会があって一手見せられるなら、山本健太の傲慢な態度を叩き潰すのも大歓迎だ。
天明は今ほど早く試験が来ることを期待したことはなかった。
数学か英語なら最高だ。
日本史の試験でもいい。天明は前世、少林寺にいた頃、日本の戦国史の本をたくさん読んでいた。
でも国語の試験だけは勘弁してほしい。
天明の日本語レベルは、日常会話は問題ないけど、古文や現代文の読解はまだ苦手だ。
なんといっても、天明は転校前にアメリカで何年も過ごしていて、日本語が少し錆びついていたのだ。
でも今日は最後の授業しか残っていない。どうやら今日は小テストの成績で山本健太の面子を潰す計画は水の泡になりそうだ。
予鈴が鳴った後、天明は窓の外を見ながら、何度目かも分からないくらい、五人目を見つけた時の光景を想像していた。
日本の部活動の募集は、アメリカのクラブとは全く違う。
日本で部活を存続させるには、生徒会が規定する最低人数——五人を満たさなければならない。一人でも足りなければダメだ。
アメリカでは、顧問の先生が同意すれば、三人でクラブを作れるし、活動しなくても誰も文句を言わない。
アメリカの方がずっと自由だ。校則に違反しなければ、基本的に何をしてもいい。
日本はそうじゃない。ルールが山ほどある。
人数要件を満たすだけでなく、定期的に活動報告を提出し、生徒会の検査を受けなければならない。
活動が不十分だったり、成績が悪かったりしても、廃部になる。
だから理論上、日本の部活の存続は一本道だ。人数が足りなければ、部活は存在できない。
某漫画のように奇跡的に新メンバーを見つけて危機を回避するというのは、不可能ではないが、確率は極めて低い。
そして日本では廃部になった後に部活を再建するのは、本当に至難の業だ。
それに比べて、アメリカのクラブは天国みたいなものだ。
天明は思わず考えた。もし剣道部がアメリカにあったら、こんな面倒なことにはならないのに。
今、桐生家に起きている一連のトラブルは全て借金が原因だけど、天明は自分の努力で解決することを決めた。昨日も道場で訓練したし、結果的に剣道のレベルは確実に上がっている。
だから天明は、剣道部という鍛錬の機会を失いたくない。
過去のことはもう取り返せない。今は現在の状況で最良の結果をどう得るかを考えるべきだ。
通話料金を換金して金を手に入れ、借金の一部を返済し、五人目を見つけて剣道部を守る。これが今の最適解だ。
剣道部が安定したら、天明は修行に専念して実力を上げられる。
この最適解を実現するために、剣道も学業も、両方しっかりやらなければならない。
天明がそんな決意を固めていると、英語教師が教室に入ってきた。
天明は英語教師の手に持っているものを見て、思わず顔がほころんだ。
随堂小テスト!
英語教師は手に持っていた紙の束を置いて、眼鏡を押し上げた。「小テストをします。一時限分の時間です。班長、来て、プリントを配ってください」
班長が立ち上がり、教壇に上がってプリントを受け取り、配り始めた。
天明はもう拳を握りしめていた。
彼がアメリカで通っていたのは、れっきとしたアメリカの中学校だ! 日常生活は英語、同級生や先生とのコミュニケーションも全部英語。
英語は彼がこの数年間、飯を食うための武器だった。単位も卒業証書も全部それにかかっていたのだ。
プリントはすぐに天明の手元に届いた。
彼は素早く目を通して、にやりと笑った。
その時、山本健太が隣の席の生徒にこそこそ話しているのが聞こえた。「転校生、プリント見て笑ってるぞ。一問も分からないから諦めたんじゃないか?」
「そうだろうな。アメリカでの成績も大したことなかったらしいし、じゃなきゃ日本に転校してこないだろ」
「そうだよ。しかも廃部寸前の剣道部なんかに入るし、勉強ができないからスポーツで食っていこうとしてるんだろ」
山本健太が軽蔑的に笑った。「武道で食っていこうなんて夢見てる非秀才は、学業の重要性が全く分かってない。東大は竹刀を振るだけで入れるもんじゃないからな」
天明は彼らを無視して、ペンを取り一気に書き始めた。
時間はあっという間に過ぎ、天明は最後の空欄を埋めて、時計を見上げた。まだ授業終了まで十数分ある。
天明は無意識にプリントを持って提出して教室を出ようとした。アメリカでも中国の前世でも、天明は試験が終わったらすぐ提出して出て行くのが好きだった。なぜなら、彼は妙な性格で、試験が終わって見直しをすると、よく正解を間違いに直してしまうからだ。見直さない方がマシだ。
天明が颯爽と立ち上がってプリントを教卓に叩きつけて出て行こうとした瞬間、彼は気づいた。
ここは日本だ。提前退出はできるけど、そうすると先生や同級生から変な目で見られる。
そこで天明は机に伏せて少し寝ることにした。
机に伏せて間もなく、先生に教材で頭を叩かれた。「周君! 試験に真面目に取り組んでください!」
天明は起き上がって先生を見て、にっこり笑った。「真面目に取り組みました。終わりました」
先生は眉をひそめて天明を睨んだが、天明も堂々と先生の視線に応えた。
先生は疑わしげにプリントを手に取り、第一問から見始めた……
そして、天明は英語教師の表情が疑念から驚愕に変わるのを見た。
くそ、元の持ち主、いったいどれだけ成績が悪かったんだよ。先生をこんなに驚かせるなんて。
英語教師は一分もかからずにプリント全体を見終わった。別に見るのが速いわけではなく、このプリント自体がとても短かったのだ。
天明はアメリカで何度も折りたためるくらい長くて、しかも文字がびっしり詰まった超長いテストに慣れていた。
日本のこのプリントは、たった見開き一枚で、しかも文字がやたらと大きい。
天明が速く解いたから、先生も速く見終わった。
英語教師はプリントを天明の前に戻し、それから天明の右隣の女子生徒のプリントを見た。理論的には、この女子生徒の位置が天明が一番カンニングしやすい場所だ。
しかしその女子生徒はまだ書き終えていない。明らかに天明が彼女の答えをカンニングしたはずがない。
英語教師は再び視線を天明に向け、真剣に尋ねた。「君は……アメリカにいた時、補習を受けていたのか?」
天明が自分は普通にアメリカで学校に通っていただけだと説明しようとすると、先生は勝手に首を振った。「いや、どんな補習でも、君をこのレベルにすることは不可能だ。これは……完全にネイティブレベルだ」
天明は今、この先生が自分が突然見せた英語力をどう見るのか、少し期待していた。
でも明らかに、先生の頭が追いついていないようだ。
「君は……えっと……よくできました」先生が言った。「でもこの満点の答案が君自身が解いたものだと証明するために、今から私が言うことを通訳してもらいたい」
そして先生はペラペラと何かを言った。
天明は眉をひそめた。
山本健太が大声で笑うのが聞こえた。
おそらくこのクラスの秀才は、天明が恥をかくと確信しているのだろう。
天明も困った。
彼の英語は強い。特に会話は、無敵レベルだ。でも問題は、日本人教師の英語の発音があまりにもひどいことだ。
日本人の英語教育は、カタカナで英語の発音を「ローカライズ」し、この方法で英語学習の難易度を下げている。
例えば、「McDonald's」を「マクドナルド」、「coffee」を「コーヒー」と読むように、日本式の発音体系で英語を「日本語化」してしまうのだ。「L」と「R」の区別もなく、「light」も「right」も「ライト」になる。
そして日本の英語教育システムは、このカタカナ英語を半ば標準として扱っているようなものだ。
英語教師のこの一連のジャパニーズイングリッシュ、アメリカで何年も生活した天明の英語力を持ってしても、半分以上が理解できなかった。
唯一聞き取れたのは最後の一文で、何か「タイガー」という単語と「夜」という単語、それに「森」という単語が入っていたような気がした……
山本健太が大声で叫んだ。「先生、彼を困らせないでください。そんなに速く読んだら、僕も聞き取れませんよ……まあ仕方ないですけど。所詮、武道で食っていこうとしてる人ですから。英語なんて彼には難しすぎます。そういう非秀才は、学術の重要性なんて理解できないんですよ」
班長が叱った。「山本! まだ授業中です。騒がないでください!」
天明は班長を見て、それから思った……待てよ!
天明に閃きが来た。
今朝、道場で神代部長が実力を見せて新メンバーを引きつけるって言ってたじゃないか。
実力を見せる?
先生がさっき読んだあの謎の音の組み合わせ、もしかして英詩じゃないか?
タイガー、夜、森?
待てよ……これって……
「タイガー、タイガー、バーニング・ブライト、イン・ザ・フォレスト・オブ・ザ・ナイト(Tyger, tyger, burning bright, In the forests of the night)」
これはウィリアム・ブレイクの『虎』だ! 日本の英語教科書にも載ってる超有名な詩じゃないか!
別に見た目が武道一筋みたいな天明でも、アメリカにいた頃は文学青年っぽく振る舞ったことくらいある。若い頃に詩を暗唱して格好つけなかった人間なんているのか?
天明は前世では武僧だったけど、アメリカに転生してからは環境に溶け込むために、英語の授業で詩をたくさん暗唱していた。ブレイクの『虎』は特に有名で、何度も暗唱させられた。
そこで天明は咳払いをして、標準的なアメリカ英語で先生が先ほど朗読した部分をもう一度朗読した。
実は詩全体を暗唱してカッコつけたかったのだけど、残念ながら、天明はこの詩の最初の四行だけしか完璧に覚えていなかった。
朗読し終わって先生の表情を見ると、先生は完全に呆然としていた。
あれ? どうやら、やりすぎたかな? もう少し控えめにして、先生に面目を保たせてあげるべきか……
天明は心の中でそう思いながら、口を開いたら次の言葉が出た。「先生、その発音、あまり標準的じゃないですね。ブレイクの『虎』だと聞き取るのにすごく苦労しました」




