第39章 代償
天井を見つめながら、天明は眠れなかった。
あの数字が頭の中でぐるぐると回っている。
1300万円。
精神力13,000ポイント。
変換比率1:1000。
「ダメだ……考えるな……」
天明は自分に言い聞かせた。
昨日880ポイント換えただけで、あんなに苦しかった。頭痛が激しくて、記憶まで失った。
もしまた大量に換えたら……
でも……
でも190万円の借金が……
薬材費の15万円が……
生活費が……
「くそっ……」
天明はベッドから起き上がった。
もう一度、梵天塔のインターフェースを開く。
【精神力を財産に変換】
【変換比率:精神力1ポイント = 1,000円】
【現在変換可能な精神力:13,000】
【変換数量を入力:______】
天明の指が震えていた。
「全部は……無理だ……」
13,000ポイント全部換えたら、どうなるか分からない。
昨日の880ポイントですら、あれほど苦しかった。
「少しだけ……少しだけなら……」
天明は心の中で計算し始めた。
薬材費が15万円必要。
通話料金の88万円を換金するには時間がかかるし、手数料も取られる。
今すぐ使えるお金が必要だ。
「150ポイント……いや、それだと足りない……」
「200ポイントなら20万円……薬材費が払えて、少し余る……」
天明は唇を噛んだ。
200ポイント。
880ポイントの約4分の1。
昨日ほど酷くはないはずだ……
多分……
「決めた……」
天明は震える手で数字を入力した。
【200】
【200ポイントの精神力を変換しますか?】
【獲得予定:200,000円】
確認ボタンの前で、天明の指が止まった。
本当にいいのか?
これは正しい選択なのか?
でも他に方法が……
「確認」
天明は目を閉じて、ボタンを押した。
【変換開始】
【精神力消費:200】
【財産増加:200,000円】
【変換完了】
その瞬間——
「うっ!」
天明の頭に激痛が走った。
昨日よりは軽いが、それでも耐え難い痛みだ。
針で刺されるような痛み。
脳の奥から湧き上がってくる不快感。
「がっ……はぁ……はぁ……」
天明は頭を抱えて、ベッドに倒れ込んだ。
痛い。
本当に痛い。
額から冷や汗が滴り落ちる。
歯を食いしばって耐える。
一分……
二分……
三分……
ようやく痛みが和らいできた。
「はぁ……はぁ……」
天明は荒い息をつきながら、震える手で携帯を取った。
画面が霞んで見える。
目を細めて、通知を確認する。
「叮咚!叮咚!叮咚!」
携帯が連続して鳴り始めた。
【docomo】ご利用の回線に¥10,000がチャージされました。現在の残高¥890,000。
【docomo】ご利用の回線に¥10,000がチャージされました。現在の残高¥900,000。
【docomo】ご利用の回線に¥10,000がチャージされました。現在の残高¥910,000。
通知が次々と表示される。
¥920,000...
¥930,000...
¥940,000...
そして最後に——
【docomo】ご利用の回線に¥10,000がチャージされました。現在の残高¥1,080,000。
108万円。
通話料金が……
また増えた……
「ふざけるな……!」
天明は携帯を握りしめた。
昨日は88万円の通話料金。
今日は20万円追加で、合計108万円。
「通話料金なんて……使い切れるわけないだろ……!」
108万円分の通話料金。
普通の高校生が一生かかっても使い切れない。
しかも換金するには手数料がかかる。
周婷が言っていた6割で換金できたとしても……
108万円の6割は64万8千円……
「くそっ……くそっ……!」
天明は頭痛と怒りと絶望で、涙が出そうになった。
精神力を200ポイント失って……
得たのは20万円分の……使えない通話料金……
「俺は……馬鹿だ……」
天明は自分の愚かさに打ちのめされた。
昨日と同じ過ちを繰り返した。
いや、もっと悪い。
昨日は880ポイントで88万円の通話料金。
今日は200ポイントで20万円の通話料金。
合計1080ポイントで108万円の通話料金。
換金できても60万円ちょっと……
「1080ポイントの精神力……60万円……」
天明は自分の頭を抱えた。
何か……何かが失われた気がする。
でも何を失ったのか分からない。
記憶?
感情?
それとも……
「分からない……何も分からない……」
天明は天井を見上げた。
視界が少しぼやけている。
集中力が……落ちている?
【現在のステータス】
【精神:12,800】
【財産:1,080,000円(通話料金)】
精神力が13,000から12,800に減った。
通話料金が88万から108万に増えた。
「これで……薬材が……」
天明は考えようとしたが、頭がうまく働かない。
そうだ、通話料金は換金しないと使えない。
周婷に頼んで、ルートを見つけてもらって……
6割で換金できれば64万8千円……
薬材費の15万円は払えるけど……
「でも……精神力が……」
天明は自分の頭を触った。
確実に何かが失われた。
1080ポイント。
元々13,880ポイントあった精神力が、今は12,800ポイント。
「もう……絶対に使わない……」
天明は震える声で誓った。
「もう二度と……精神力は換えない……」
でも心のどこかで、小さな声が囁いている。
——本当にそうか?
——また困ったら、使いたくなるんじゃないか?
——まだ12,800ポイントも残ってるじゃないか
「うるさい……黙れ……」
天明は頭を振って、その声を追い払おうとした。
でも声は消えない。
窓の外、東京の夜はさらに深まっていった。
狭い部屋の中で、借金だらけの少年は、自分の愚かさに打ちのめされていた。
108万円の通話料金。
失われた1080ポイントの精神力。
そして……消えてしまった、何か大切なもの。
《現在の状態:功徳400 / 精神12,800 / 財産1,080,000円(通話料金) / 借金1,900,000円》




