第21章 大梵真訣
周天明はそっと玄関のドアを押し開け、忍び足でリビングに入った。
あの放火犯が仕返しに来ることも心配していない。どうせ今頃は泥仏が川を渡るように自分のことで精一杯で、警察に追われるので手いっぱいのはずだ。暇などあるわけがない。
それに、あの男は気絶する前に自分の顔をはっきり見てなかったはず......だよね?
周天明は心の中で自分を励ました。
廊下に入ると、周婷が膝を抱えて自分の部屋の前に座っていて、目が赤くなっているのが見えた。
「お兄ちゃん!」周天明が戻ってきたのを見て、周婷はすぐに立ち上がった。「大丈夫?」
「大丈夫」周天明は手を振り、小声でいるよう合図した。「早く寝なさい、お母さんを起こさないで」
周婷は周天明の服の裾を引っ張って部屋についてきた。「お兄ちゃん、さっきどこに行ってたの?あの火事......」
「屋上に様子を見に行っただけだよ」周天明は簡単に言った。
「見に行っただけ?」周婷は首を傾げ、疑わしげに周天明を見つめた。「でもお兄ちゃん、すごく長い間出てたし、それに......」
彼女は突然近づいて、周天明の身体の匂いを嗅いだ。「それにお兄ちゃん、煙の臭いがする」
周天明は内心ドキッとした。
しまった、さっきあの放火犯と対峙した時、確かに炎の熱波で燻されていた。
「屋上は風が強いから、流れてきたんだろう」周天明は説明した。
「本当に?」周婷は明らかにあまり信じていない。「お兄ちゃん、さっき何か危険なことに遭ったんじゃない?」
「いやいや、ただ野次馬しただけだよ」
「じゃあお兄ちゃんの懐に入れてるのは何?」周婷は周天明の膨らんだ胸を指さした。
周天明は反射的に懐の《大梵真訣》を押さえた。「これは......道で拾った本だよ」
「拾った本?」周婷は目をぱちくりさせた。「夜中に、道に本が落ちてるの?」
「多分誰かが落としたんだろう」周天明は強引に言った。
周婷はしばらく周天明を見つめ、最後にため息をついた。「まあいいや、とにかくお兄ちゃんが無事に帰ってきたならいいよ」
「うん、早く寝なさい」
「待って」周婷は突然何かを思い出した。「お兄ちゃん、まさか喧嘩してきたんじゃないよね?ニュースであの火事は放火で、犯人が捕まったって言ってたけど。まさかお兄ちゃんが......」
周天明の顔が一気に暗くなった。「何を言ってるんだ。僕はただの普通の高校生だよ。放火犯を捕まえる能力なんてあるわけないだろ!」
「でもお兄ちゃん、武術を練習してるじゃない?」周婷は真剣に言った。「それに今夜あんなに長く練習したから、きっとすごく強くなったはず。もしかしたら本当に悪い人に勝てるかもしれないよ」
周天明は一瞬言葉に詰まった。
確かに放火犯に勝ったけど、こんなこと認められるわけがない。
「早く寝なさい、明日学校だろ」周天明は少しむきになった。
「はいはい」周婷は立ち上がり、ドアのところで振り返った。「でもお兄ちゃん、もし本当に危険なことがあったら、絶対教えてね。私は何も手伝えないかもしれないけど、少なくとも警察に通報できるから」
そう言って、彼女は舌を出し、ぴょんぴょん跳ねながら自分の部屋に戻った。
周天明はドアを閉め、ドアにもたれかかって長くため息をついた。
何とかごまかせた。
彼は懐から《大梵真訣》を取り出し、この古びた糸綴じの本を丁寧に見つめた。
表紙は黄ばんだ宣紙で、四つの大字は歳月に侵食されたものの、依然として厳然たる仏意を漂わせていた。
周天明は慎重に最初のページをめくった。
扉ページには一行の小さな文字が書かれていた:
「梵とは、清浄の意なり。この訣を修める者、当に心に慈悲を抱き、衆生を普く救うべし。若し心に悪念を存せば、必ず天罰を受けん」
周天明は黙ってこの一節を読み終え、心に複雑な感情が湧き上がった。
前世第五世で、彼は明空法師としてこの功法を修練し、一心に仏に帰依していた。
しかし最後はあの謎の敵の手で死んだ。
今世、前世の記憶を継承しているが、もはや当時のあの敬虔な僧侶ではない。
でも......
少なくともあの慈悲の心は覚えている。
周天明はさらにページをめくり、功法の内容が徐々に目の前に現れた。
《大梵真訣》は九層に分かれ、各層が異なる境地に対応している。
第一層:火種を凝縮。丹田に梵火の種を一粒凝縮する、これがこの功法を修練する基礎だ。
第二層:火の苗を養う。火種を火の苗に育て、火を御して身を護れる。
第三層:火焔を錬る。火の苗が火焔に成長し、敵を制して人を殺せる。
第四層から第九層の内容はさらに深遠で、より高度な境地に関わるが......
待て。
周天明の視線が第一層功法の修練条件で止まった。
【修練要求:養気期以上の境地】
【前提条件:既に内力を凝縮し、任督二脈を開通していること】
【注意:煉体期の修練者が強行してこの功法を修練すれば、軽ければ経脈を損傷、重ければ走火入魔】
......
周天明は呆然とした。
たっぷり十秒間。
そして。
「マジかよ!」
彼は叫びそうになり、慌てて口を押さえた。
これはどういう意味だ?
つまり、今の自分はこの功法を全く修練できないってこと?
周天明は急いで功法の内容をめくり、見れば見るほど顔が暗くなった。
《大梵真訣》は確かに仏門の至高功法の一つだ。
しかしそれは養気期以上の修練者が修練できる上級功法なのだ!
今の自分は?
煉体初期。
内力すら凝縮していない。
任督二脈?
それは何だ?
今の自分は経脈がどこにあるかも感じられない!
周天明は完全に絶望した。
苦労して命がけで、放火犯と戦って、焼け死にそうになった。
結果、奪い取った秘伝書は......
使えない?
何だこの展開は!
まるで苦労して最終ボスを倒したのに、ドロップした装備のレベル要求が満レベルじゃないと装備できないようなものだ!
しかも今自分はレベル1!
これは人を馬鹿にしてるのか!
周天明は泣きたい気持ちで手の中の《大梵真訣》を見た。
前世の記憶では、明空法師としてこの功法を修練していた時、既に養気期の頂点の境地だった。
だからこの前提条件に全く気づかなかった。
今となっては。
宝物を手に入れたのに、使えない。
貧乏人が宝くじに当たったのに、一年後じゃないと換金できないと分かったようなものだ。
いや、この比喩よりもっと悪い。
少なくとも宝くじは一年後に換金できる。
でもこの功法は......
いつ養気期に突破できるか分からない!
周天明は深呼吸して、自分を落ち着かせようとした。
まあいい、少なくとも功徳値は手に入った。
110ポイントの功徳値。
洗髄丹と交換できるし、《吐納訣》とも交換できる。
《大梵真訣》は今すぐ使えないけど、養気期に突破した後は最強の武器になる。
周天明はこう自分を慰めた。
彼は慎重に《大梵真訣》を机の引き出しにしまい、教科書で何冊か上に重ねた。
それから梵天塔システムを開いた。
【梵天塔ショップ】
【現在の功徳値:110】
今の問題は——
まず洗髄丹を買って資質を向上させるか?
それとも先に《吐納訣》を買って内力の凝縮を始めるか?
周天明は考え込んだ。
洗髄丹は身体の不純物を浄化し、修練資質を向上できる。使った後は修練速度が速くなる。
でも《吐納訣》は基礎内功心法で、内力を凝縮し始め、煉体期から養気期に突破できる。
どちらも重要だ。
でも今持っているのは110ポイントの功徳値だけ。
洗髄丹(100ポイント)を買ったら、残り10ポイントで《吐納訣》(50ポイント)は買えない。
《吐納訣》(50ポイント)を買ったら、残り60ポイントで洗髄丹(100ポイント)は買えない。
これは難しい選択だ。
周天明は長く考え、最後にやはり決めた——
まず《吐納訣》を買う。
理由は簡単だ:内功心法がなければ、内力を凝縮できない。内力を凝縮できなければ、永遠に煉体期に留まる。
洗髄丹は資質を向上できるが、今の自分にとって、修練できるかどうかが最も重要だ。
資質がどんなに良くても、修練する功法がなければ無意味だ。
「《吐納訣》と交換」周天明は心の中で念じた。
【《吐納訣》と交換しますか?】
【消費功徳値:50】
【残り功徳値:60】
「確認」
次の瞬間、暖かい流れが周天明の脳裏に流れ込んだ。
無数の文字と図像が脳裏に閃いた。
それは《吐納訣》の完全な修練方法だ。
基礎内功心法に過ぎないが、今の周天明にとっては十分だ。
周天明は床の上であぐらをかき、《吐納訣》の心法に従って修練を始めた。
一呼一吸の間に、天地の霊気が徐々に彼に集まり始めた。
速度は遅く、効果も微弱だが、彼は感じられた——
丹田のところに、かすかな暖かさがゆっくりと形成されつつある。
それは内力の萌芽だ。
周天明は目を開け、口元に微笑みを浮かべた。
《大梵真訣》は今すぐ使えないし、186万円の借金もあるし、叔父の家に住んで人の顔色を見なければならないけど......
少なくとも、修練の道に踏み出した。
少なくとも、強くなる可能性がある。
少なくとも、周婷が自分を心配してくれている。
窓の外、夜はどんどん更けていく。
遠くの火の光は既に消され、街は再び暗闇に沈んだ。
しかし周天明は知っている。この世界は、静かに変化している。
そして彼も、この変化の中で、自分の居場所を見つけるだろう。
《今夜の収穫》
《功徳値:60ポイント(残り)》
《獲得:《大梵真訣》(現在修練不可)》
《交換:《吐納訣》》
《開放:梵天塔第一層修練空間》
そして最も重要な項目——
《今夜最大の収穫:従妹が自分を心配してくれていることを知った》
周天明はここまで考えて、口元に思わず微笑みが浮かんだ。
この見知らぬ世界で、少なくとも自分の帰りを待っている人がいる。
今すぐ使えない《大梵真訣》については......
未来の自分への贈り物だと思っておこう。
「養気期に突破したら」周天明は引き出しの中の秘伝書を見つめた。「必ずお前の真の威力を発揮させる」




