第16章 南条秋奈
立夏先生との長話を終えた後、周天明は少し疲れた体で教室に戻った。
職員室で先生と話しただけだったが、立夏先生のくどくど繰り返す注意の仕方、突然倒れる書類、落ちるペン立て、そして「日本語をしっかり勉強するのよ」「無理しすぎないで」といった言葉の繰り返しが、周天明を精神的に疲れさせた。
しかも、武道学校の入学試験の話題は、彼に自分の将来の道を真剣に考えさせることになった。
午後の最初の授業は日本史で、講師は眼鏡をかけた中年男性だった。
教師は教室に入ると、勝手に教卓の後ろに座り、教科書を開いて適当に説明し始めた。
教室の下で生徒たちが真面目に聞いているか、居眠りしているか、漫画を読んでいるか、こっそり携帯をいじっているかなど、彼は気にしていないようだった。
周天明もこの歴史教師の授業内容に興味はなく、ただ教科書を素早くめくりながら、前世で少林寺で学んだ様々な武学の知識を思い出し、現代社会の状況と組み合わせて考えていた。
「この世界には武道の伝承があるが、ほとんどの流派はすでに競技化、商業化されている。本当に実戦の精髄を残しているのは、おそらく隠世の武道世家だけだろう。」
「神代家は数百年続く剣道の名家として、本当の秘伝を持っているはずだ。神代咲から神代流の精髄を学べれば、前世の武学を融合させるのにも役立つ。」
「それに梵天塔の任務も彼女を指導する必要がある……これは互恵関係だな。」
周天明の脳裏に整理された記憶によれば、桐谷高校は表面上は普通の高校だが、実際には武道を学ぶ者も少なくない。
学校には武道世家の子孫、古流武術の伝承者、さらには出自不明の転校生もいる。
そして甲子年の到来とともに、両界の障壁が弱まり、最近では超常現象が発生する頻度も徐々に増えているようだ。
ここまで考えた時、周天明は思わず窓の外を見て、午後の暖かい日差しを感じた。
「甲子年……両界融合……この世界はこれから平穏ではいられないだろう。」
「そもそも私はなぜこの世界に転生したんだ?」
彼の脳裏には無意識のうちに転生前の光景が蘇り、あの突然の変事を思い出すと、頭に軽いめまいを感じた。
周天明は急いで首を振った。今の彼にとって、こういった大きなことよりも、学校生活、修練の進度、梵天塔の任務……こういった目の前のことの方が注意を向けるべきだ。
修練と任務を思い出し、周天明の意識は梵天塔に沈んだ。
午前中に完了した任務の進度以外に、梵天塔のインターフェースには彼の現在の修為状態も表示されていた。
【宿主】:周天明(明空)
【境界】:煉体初期
【内功】:なし
【武技】:羅漢拳(入門)、基礎歩法
【特殊能力】:前世記憶融合度38%
周天明の心の記憶から見ると、彼の今の実力は同年代の中ではまあまあだが、本当の武道の天才たちと比べると、まだかなりの差がある。
彼は今、まともな内功心法すら習得しておらず、ただ前世の経験を頼りにこの体の筋骨を鍛えているだけだ。
このまま進めば、学校で最下位になることはないだろうが、甲子年の大変局で自分と大切な人を守るには、まだまだ足りない。
そして周天明の心にまた別の疑問が浮かんだ。
「梵天塔の本当の由来は何なのか?なぜ私を選んだのか?」
周天明は繰り返し思い出したが、転生した瞬間、金色の光が眉間に突入し、その後この世界に来たことしか覚えていない。
梵天塔の任務を思い出し、彼の目が微かに動き、任務インターフェースを開いた。
「そうだ、神代咲を指導する任務の進度は15%……まだ努力を続ける必要があるな。」
午後の授業中、周天明は思考を整理しながら、静かに調息して過ごした。これにより、脳裏の武学知識、この世界、そして自分の状況について、ますます深く理解できるようになった。
あっという間に午後4時の放課後になった。
学校の今日の授業はすべて終了したが、桐谷高校のほとんどの生徒にとって、一日の活動はまだ始まったばかりだ。これから各自の部活の訓練に参加したり、塾に行ったりして、夜まで帰れない。
急いで各自の部活に向かう同級生たちとは違い、周天明は今、屋上に一人で座っていた。
転校生の彼はまだどの部活にも入っていないので、放課後は自由な時間がたっぷりある。
簡単に何か食べた後、彼は屋上に来て、体を鍛え続けることにした。
「やってみよう。」
周天明は構えを取り、羅漢拳の基本動作を練習し始めた。
一拳一掌の間に、彼はこの体の力が少しずつ増えているのを感じた。内功心法の補助はないが、前世の武学経験により、より効果的に筋骨を鍛える方法を知っている。
「この体の基礎はあまり良くないが、幸い前世の経験がある。着実に修練すれば、いつか実力を回復できる。」
「でも……やはり遅すぎる。内功心法を手に入れられればいいのだが。」
その時、階段から足音が聞こえてきた。
周天明は動作を止めると、神代咲が少し離れたところに立っているのが見えた。手には竹刀袋を持ち、期待に満ちた目で彼を見ている。
「周くん!」彼女の目が輝いた。「来ました!」
周天明は呆然とした。「剣道部の練習は?」
「部長に休みをもらいました!」神代咲は堂々と言った。「特別訓練をするって言って!」
「……」周天明は言葉を失った。
「それに!」神代咲は続けた。「お昼の時からずっと周くんが言った『小成は眼を用い、大成は刺を用いる』について考えてたんです。新しい悟りを得た気がします!」
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あっという間に夕方になった。
日本の学校は朝の授業開始が遅く、午後の放課後が早い。この伝統は1980年代から始まっている。
生徒たちは部活動に使える時間がたくさんある。
周天明はこの日の午後も屋上で神代咲の修練を指導し続けた。このお嬢様は覚えが遅いが、真剣な態度は評価に値する。
午後の訓練を終えた後、周天明は屋上の手すりの傍に座り、呼吸を整え、体をリラックスさせ始めた。
内功心法はないが、前世の経験により、呼吸で体力を回復する方法を知っている。今日の指導で武学の理解もまた一層深まった。教えることで学ぶ、まさにその通りだ。
「周くん、さっきの歩法の転換がまだよく分からないんですけど……」神代咲が近づいて小声で尋ねた。
「明日また練習しよう。」周天明は顔も上げずに言い、調息に集中し続けた。
彼は心の中でつぶやいた。午後はもう2時間も教えたのに、梵天塔の任務進度は20%にしか上がらなかった。このペースだと、任務完了はまだまだ先だな。
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もう帰りたい。
放課後、校舎裏の路地。周天明の姿が、普段ほとんど人が訪れないこの一角に現れた。
「裏路地……ここだな。」
周天明は憂鬱そうに前方の小道を見た。正直言って来たくなかったが、南条の真剣な目に少し心が動いた。中学の同級生の面子、多少は立ててやるべきだろう。
まず深呼吸をして、決心して路地に入った。
狭い通路を抜けて、周天明は校舎裏の路地の奥に来た。
ここは校舎と塀の間の狭い空間で、普段は生徒が来るような場所ではない。今はほとんどの生徒が帰宅するか部活に行っているので、風の音まで聞こえるほど静かだ。
南条秋奈は路地の奥に立ち、夕日の残光を背にしていた。周天明の足音を聞くと、振り返った。
そして——
「天明!!!」
叫び声とともに、南条秋奈は突然助走をつけて加速し、周天明から3メートルの距離で、突然両膝を地面につけ、「ザッ」という音とともに滑り込んできた!
スカートと地面が擦れる耳障りな音が響き、地面に二本の深い跡が残った。
南条秋奈は正確に周天明の前まで滑り込み、両手を合わせて頭上に掲げ、完璧な土下座の姿勢で地面に伏せた。
「お願いします!!!」
「……」
周天明は完全に呆然とした。
ちょっと待て待て待て。
何が起きた?
さっき何が起こったんだ?
彼は学校で最も有名な美女の一人が、プロ級の滑り込み動作で自分の前に突進してくるのを目の当たりにした。
この展開はおかしすぎるだろう?
彼は脳内で必死にツッコミを入れた。どこの学園ラノベにこんな土下座するヒロインがいるんだよ!このライトノベル、どう考えてもおかしいだろおいおいおい!
いや、これは恋愛ものの展開じゃない!
金髪美女、学校の超人気アイドルが、人気のない裏路地に呼び出して……結果が土下座!?
しかもあの滑り込みの距離と正確さは何なんだ!練習したんだろ!絶対練習したに違いない!
「天明!」地面に伏せた南条秋奈が顔を上げ、恐ろしいほど真剣な目で言った。「お金を貸してください!クレジットカードの請求がまた払えなくて!来月の返済日が迫ってるんです!」




