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すべては布団のままに。 〜殿が寝れば、すべてうまくいく〜  作者: Ki no Sora
第二章『夢告の君主』
9/25

2-4『深読み大名、またも沈む』

 ――愚愚流国・城内。


「布団、だと……?」


 武田深限は、巻物を握りしめながら震えていた。


「“尾張藍国において、布団は戦術・経済・宗教・文化の中心にある”と……!」


 参謀たちはそっと目を伏せた。

  いつもの、深限の“深読みモード”が始まる気配がしたからである。


「殿、さすがに布団は……ただの布団かと……」


「馬鹿者ォォォォ!!」


 机を叩いて立ち上がる深限。語尾に怒鳴るタイプ。


「敵は、我らが“眠る”瞬間を狙っているのだ!!」


「えっ……眠り……ですか?」


「そうだ!布団によって、民を眠らせ、兵を眠らせ……隙を突く戦術!!」


「殿、それただの快眠じゃないでしょうか……」


「よし、命ずる――“睡眠制限令”を発布する!!」


「ちょっ、早い!!」


 ------


 翌日、布告が全国に張り出された。


 > 『睡眠は一日三時間までとする!』 『布団の柔らかさは敵の罠と心得よ!』 『見回りは二時間おき、寝落ち厳禁!』


 結果――


 兵たちの目の下には、たっぷりのクマができた。


 訓練場では、すれ違う兵同士がぶつかる。


「前が……見えぬ……」


「もう寝かせてくれ……枕の夢が……」


「それ、禁句だ!!布団発言禁止だ!!」


 参謀の一人が慌てて駆け寄る。


「殿、このままでは軍の士気が……!」


「黙れ!敵は今頃、布団に包まれて笑っているぞ!」


「……羨ましいだけでは?」


 ------


 それでも、深限の深読みは止まらない。


「そもそも、“布団刀法”とは――“戦わずして眠らせる戦術”……!」


「我らが敵の夢の中で敗北する……そういう可能性もある!!」


「夢で!?我々、夢で負けるの!?」


「よし……対抗せねば……!」


「ま、まさかまた――」


「“夢境対抗部隊”を創設する!」


「出たああああああ!!!」


 ------


 その日の夕刻。


 武田深限の私室には、「絶対に眠らないセット」が持ち込まれていた。


 ・超硬質竹マット(眠気ゼロ)

  ・小石入り枕(悪夢保証)

  ・“起きろ”と叫ぶ目覚まし烏(夜中に三度飛来)


「これで我が精神も冴え渡る……!」


 そのまま三日後――


 > 武田深限、意識混濁で倒れる。


「……夢の中でも……尾張が……ふかふかだった……」


 そうつぶやいて、深限は昏倒した。


 ------


 そして。


 芝田がその報を聞いた時――


「……ふかふか、ですと?それは“殿の理”が、隣国に届いた証……!」


 羽芝は目を閉じて言った。


「……芝田、頼むから、現実を見てくれ……それ、布団じゃなくて、過労……」


 だが芝田はすでに“布団外交”の準備に取りかかっていた。


 ------


 こうして愚愚流国は、

  **“眠らぬ戦略”という悪夢の道**を歩み、

  尾張藍国は、“眠りながら勝つ国”として

  またひとつ、確かな一歩を踏みしめたのであった。


 やわらかい布団の上で。

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