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すべては布団のままに。 〜殿が寝れば、すべてうまくいく〜  作者: Ki no Sora
第二章『夢告の君主』
8/25

2-3『布団で回る尾張経済』

 ――数日後、城下町。


「“殿の夢告にて見えた峡谷”専用の枕、入りましたー!」


「“布団刀法専用・高速飛び起き式布団”も本日入荷ー!」


「“空を裂く構造”!“谷を支えるクッション力”!今なら先人の知恵つき!!」


 羽芝は立ち尽くした。


(……布団、売れすぎてない?)


 通りには新しい店が立ち並び、看板には「神の理の店」「夢の寝具屋」「先人の御布団」といった謎ワードが踊っている。


 芝田が誇らしげに説明する。


「この“布団経済圏”こそ、尾張の未来です!」


「もう布団って言えば何でも許されると思ってない!?」


「ちなみに現在、布団関連の商業税収が前月比600%でございます」


「経済指標で黙らせてくるなあああああ!!」


 ------


 城内・会議室。


「殿、こちらが布団経済報告でございます」


「布団関連産業、取引量が農産物を超えました」


「“神の理ブランド”が他国でも人気となり、“夢枕”が貢物として献上される事例も……」


 羽芝が机に突っ伏した。


「殿……もう、我が国は布団に征服されてます……」


 智長は静かに茶を啜り、ぽつりと呟く。


「眠りの質が、国家の質に直結する。これは……道理だ」


「道理じゃない!それ寝具会社の宣伝文句だから!!」


 ------


 市場の奥。


「夢の中で商品が出てきた」

  「寝てたら“枕が喋った”」

  「“先人の知恵の箱”の幻を見た」


 ……という客の証言をもとに、枕職人たちが新製品を開発していた。


 > 『幻視枕』『夢境導入寝具』『知恵の気配を感じる綿入り』などなど。


 芝田が張り切って広報する。


「“布団とは神の理を敷き詰めたものである”――これが尾張の理念です!」


「聞いたことないわそんな理念!!!」


「殿の寝姿からインスピレーションを得て、我が弟子たちが“神寝式デザイン”を生み出しました!」


「弟子!?芝田にそんなのいたの!?」


「先日、勝手に任命しました。認定制度も作成済みです!」


「なんでも作るなあああ!!」


 ------


 そして夕方。


 智長がひとこと呟いた。


「人はよく眠れば、よく生きる。それだけだ」


 この言葉が、翌日には城下のあちこちで垂れ幕になり、

  翌週には隣国の城下に“輸出”されていた。


 羽芝は震える手で、ふとん屋の看板を見つめた。


 > 『布団で回る尾張経済――すべては眠りの中に。』


(……おかしい。なぜこんなに布団が力を持っているんだ……)


 その夜。


 羽芝は、眠る智長の部屋の前でつぶやいた。


「殿……本当に、寝てるだけで国が回ってますよ……」


 でも、その寝顔は――とても、幸せそうだった。

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